かつての社労士試験頻出「厚生年金基金」。今後の出題の可能性や対策は?

更新日:2021年3月15日

「試験対策は最新の教材で取り組む」ことは、社労士合格を目指す上ではもはや常識と言っても過言ではありません。なぜかと言えば、時代と共に社労士試験に出題されるテーマが少しずつ変化しているからです。

社労士試験は法律の試験ですから、法改正とそれに伴う制度の改廃に応じて出題傾向が変わったり、同じ設問でも年度によって違った答えになったりということが起こります。

このページで解説する「厚生年金基金」はまさにその典型で、以前は頻出だったものの現在ではめっきり姿を消したテーマのひとつに数えられます。

目次

かつての社労士試験の定番テーマ「厚生年金基金」をわかりやすく

厚生年金基金

過去問を少しさかのぼって解いていると、「厚生年金基金」に関わる出題を見かけることがあります。最近社労士試験対策を開始した受験生にとってはなじみのないキーワードでしょうが、何年か社労士試験に挑戦し続けている受験生であればかつては重点的に対策をした方もいらっしゃるかもしれませんね。

ここでは改めて、社労士試験の出題テーマ「厚生年金基金」を解説しましょう。

企業年金として創設された厚生年金基金

厚生年金基金は、厚生年金保険法に基づき企業が設立し、国の監督の元、企業年金制度を運用する組織のことです。

基金が国に代わって厚生年金保険料の一部を収受・記録、年金資産の管理・運用、年金額の裁定、支払いの業務を行い、老齢厚生年金の給付を代行すると共に基金独自給付の上乗せする仕組みを採用しています。

基金の創設には、下記の3種類があります。

単独設立型(ひとつの企業が単独で設立)
連合設立型(グループ内の複数の企業が共同で設立)
総合設立型(同業等、一定のルールの元に複数の企業が共同で設立)

厚生年金基金制度は2014年4月に実質廃止

厚生年金基金制度は1966年に成立しましたが、2014年には実質廃止となっています。その背景にはバブル崩壊や資産の運用悪化等があり、結果として各基金では代行部分の積立不足、これに伴う厚生年金基金の代行割れが生じ、一時は社会問題となりました。

こうした事態を受け、2014年4月以後は厚生年金基金の新設は認めないこととし、2019年4月までの5年間の時限措置として他の企業年金制度への移行を促進、さらに2019年4月以降は健全基金以外の基金に解散命令が発動されています。

社労士試験対策上、厚生年金基金にどう対応する?

試験対策

厚生年金基金が実質廃止となっていることを受け、社労士試験における厚生年金基金関連の出題についてはどのように考えるべきでしょうか?出題頻度は低くなったとはいえ、まったく対策をしないで社労士試験に臨むというのも不安です。

厚生年金基金に関わる効果的な対策を考えてみましょう。

出題の可能性はゼロではないが、ざっくりと概要を把握しておく

繰り返しになりますが、社労士試験ではかつて厚生年金基金に関わる細かな出題がありました。しかしながら、2014年に厚生年金基金制度が実質的になくなったことから、今後、厚生年金基金関連の出題はそう多く見込めません。

ただし、社労士試験対策上はもちろん、社労士の実務上も、厚生年金基金の知識を全く習得していないとなると問題があります。そのため、たとえ出題頻度が低いとしても、最低限、厚生年金基金に関わる概要を理解しておく必要があります。

「解散命令」や「存続基金の経過措置」についておさえる

今後、社労士試験で厚生年金基金関連の出題があるとすれば、狙われるキーワードは「経過措置(自主解散型基金、清算型基金)」「解散命令」でしょう。ただし、すでに経過措置期間である2019年4月を経過した今日においては、これらの観点からの出題の可能性は低いと言えます。

さかのぼって社労士試験の過去問に取り組む際には、厚生年金基金制度の背景等も踏まえて設問にあたるようにする必要がありそうです。

まとめ

  • 厚生年金基金はかつて社労士試験の頻出テーマでしたが、2014年に実質的に制度が廃止されてからは試験問題からもめっきり姿を消しています
  • 厚生年金基金とは企業年金制度のひとつで、公的年金に基金の独自給付を上乗せすることで従業員の生活保障の充実を図ります
  • 厚生年金基金が廃止に至った背景には「バブル崩壊」や「資産の運用悪化」等の要因があり、各基金では代行部分の積立不足、これに伴う厚生年金基金の代行割れが生じ、問題となりました
  • 現在では出題頻度の低い厚生年金基金ですが、基本的な制度概要については把握しておくと安心です
  • 厚生年金基金について、出題される可能性があるとすれば「経過措置(自主解散型基金、清算型基金)」「解散命令」のキーワードに関連する内容でしょう
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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