社労士の受験資格に認められる「実務経験」は?証明書や免除科目も解説!
更新日:2019年3月20日
社労士試験の受験資格には大きく分けて3つ、「学歴」「国家試験合格」そして「実務経験」があります。このうち、「実務経験」の受験資格については受験案内を一読しただけでは分かりにくく、受験生自身が資格を満たしていると考えていても、出願時に資格として認められない等のトラブルを散見します。
このページでは社労士試験の受験資格である「実務経験」について、その要件や必要となる証明書に触れながら解説します。併せて、所定の実務経験で適用される「科目免除」についても触れておきましょう。
社労士試験の受験資格として認められる「実務経験」
社労士試験の受験資格となる実務経験には、大きく分けて5種類あります。社労士試験の受験案内において受験資格コード08~13(ただし受験資格コード10を除く)に記載される各要件を満たす受験生に適用されます。
受験資格として認められる実務経験は、ざっくり解説すると「労働・社会保険関連の事務手続き等(特別な判断を要しない単純事務は除く)に従事した期間が通算3年以上であること」です。さっそく、それぞれの要件を確認しましょう。
参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「社会保険労務士試験の受験資格」
健康保険組合、労働保険事務組合等の役員又は従業員
受験資格コード08
労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の役員(非常勤の者を除く。)又は従業者として同法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
[解説]
具体的には、健康保険組合や労働保険事務組合等で常勤役員を務めていた、もしくは従業員として勤務していたケースで、実際に関連業務に通算3年以上従事していた方が対象となります。
公務員等
受験資格コード09
-
国又は地方公共団体の公務員として行政事務に従事した期間及び特定独立行政法人、
特定地方独立行政法人又は日本郵政公社の役員又は職員として行政事務に相当する事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
※日本郵政公社の役員又は職員として従事した期間と民営化後(平成19年10月 1日
以降)の従事期間の通算はできません
-
全国健康保険協会、日本年金機構の役員(非常勤の者を除く。) 又は従業者として社会
保険諸法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
※社会保険庁の職員として行政事務に従事した期聞を含む
[解説]
労働局、市役所、区役所、町役場等、民営化前の日本郵政公社に役員又は従業員として勤務していた、もしくは自衛官としての勤務経験があり、労働・社会保険関連業務に通算3年以上従事していた方が対象となります。
社会保険労務士事務所、弁護士事務所等の補助者
受験資格コード11
社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人又は弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人の業務の補助の事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
[解説]
社会保険労務士法人もしくは社会保険労務士事務所、又は弁護士法人もしくは弁護士事務所に補助者として勤務し、労働・社会保険関連業務に通算3年以上従事していた方が対象となります。
この場合、「税理士事務所」での実務経験は認められません。現状、税理士は労働・社会保険関連の事務代行や提出代行を行えないことになっているためです。
労働組合の専従役員、又は法人等の労務担当役員
受験資格コード12
労働組合の役員として労働組合の業務に専ら従事(いわゆる「専従」という。)した期間が通算して3年以上になる者又は会社その他の法人(法人でない社団又は財団を含み、労働組合を除く。以下「法人等」という。)の役員として労務を担当した期間が通算して3年以上になる者
[解説]
ここで難しいのが「専従役員」というキーワードです。「専従役員」とは、企業との雇用関係を継続させたまま(つまり、労働者でありながら)その職務には従事せず、専ら組合業務を行う者を指します。
労働組合などの組合では、通常、従業員から役員が選出され、従業員の籍を保持したまま在籍専従役員として組合業務を行います。
また、会社その他の法人の役員であっても、労務担当として通算3年以上実務に従事した方は、その実務経験が社労士試験の受験資格として認められます。
その他、法人等の従業者
受験資格コード13
労働組合の職員又は法人等若しくは事業を営む個人の従業者として労働社会保険諸法令に関する事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
[解説]
一般企業の人事労務担当者などが該当し、比較的幅広く、実務従事者が受験資格コード13の適用対象となります。
ただし、単純事務については実務経験に認められない旨が明記されていることから、出願時に提出する実務経験証明書に具体的な業務内容を記載する必要があります。
社労士試験における「実務経験」を証明する際の証明書とは?
社労士試験の受験資格となる「実務経験」の確認のために、出願時に実務経験証明書の提出が求められます。証明書にはフォーマットがあり、様式は社会保険労務士試験オフィシャルサイトからダウンロードできます。
実務経験証明書には下記の内容を明記し、証明者欄に記入・押印します。
✓ 受験者の氏名、生年月日
✓ 雇用形態(正社員、派遣社員、役員、期間契約社員・嘱託社員、パート・アルバイトの別)
✓ 勤務形態(常勤、非常勤の別)
✓ 所属部署名、従事した事務内容、従事した期間
社労士試験出願時に必要な実務経験証明書の記入例
社会保険労務士試験オフィシャルサイトでは、受験資格コード別に、実務経験証明書の具体的な記入例が閲覧できます。該当する組織・団体、役職例ごと、従事した事務内容をどのように記載すれば良いのかが細かく紹介されています。
実務経験証明書は、実務経験が社労士試験の受験資格として認められるかどうかを判断するための唯一の資料となります。社労士受験生で実務経験証明書を提出する必要のある方は、証明書発行のご担当者様に、様式と併せて記入例もお渡しするのが得策です。
実務経験の証明書には「具体的内容の記載」が必須
社労士試験の受験資格に認められる実務経験については、「実際に労働・社会保険関連業務に従事したかどうか」で判断されます。よって、実務経験証明書には極力具体的な内容を記載し、従事した業務が分かりやすいようにしておく必要があります。
社会保険労務士試験オフィシャルサイトには、電話交換手、自動車運転手、用務員等の労務、タイプ、浄書、複写等、特別な判断を要しない単純な事務は受験資格の要件から除かれる旨が明記されていますので、くれぐれもご注意ください。
社労士の実務経験で「科目免除」がある?
社労士試験には、受験資格となる実務経験の他、「科目免除」として認められる実務経験があります。科目免除を受ける場合は出願時に併せて申請する形となりますが、この際の添付資料として、受験資格の証明用とは別に科目免除申請用の実務経験証明書の提出が必要になります。科目免除の決定の決定は、一度受ければ社労士試験合格まで生涯有効となります。
科目免除の対象となる実務経験は、各科目で細かく定められています。詳細は、下記の一覧よりご確認いただけます。ご自身の実務経験が科目免除の対象になるかどうかは、事前に試験センターの確認を受けることができます。
参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「試験科目の一部免除資格者一覧 」
社労士の実務経験、パートの場合
企業の人事労務担当として、もしくは社労士事務所の補助者として、パートタイムで働いてきた方の場合、労働時間や従事した業務内容によって、実務経験が社労士試験の受験資格として認められるかどうかが異なります。
例えば、正社員同様フルタイムで働いているのであれば問題ありませんが、週の労働時間が正社員と比較してかなり短い場合、要件を満たすことが難しい場合があります。また、単純な事務作業であれば受験資格となりません。
一方、労働・社会保険関連の手続きを一任されていた場合には、実務経験で社労士試験を受験できます。
科目免除の場合同様、実務経験による受験資格の有無についても、事前に試験センターの確認を受けることができます。不安な方は事前に確認しておくと安心です。
社労士試験の受験に必要な実務経験について、求められる要件や証明書など、概要を理解できたでしょうか?実際にご自身の実務経験が受験資格として認められるのかどうかの判断については、試験センターに事前確認をしておくのがお勧めです。
科目免除の対象についても同様に、免除対象に該当する可能性がある場合には、出願に先立ち確認を済ませておきましょう。
小野賢一(おの けんいち)
「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
●フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師