社労士試験・労一「男女雇用機会均等法」!頻出ポイントをわかりやすく解説
更新日:2021年8月3日
男女雇用機会均等法は、女性が能力を十分に発揮できる雇用環境の整備を進めるためのルールが盛り込まれた法令です。
働き方改革の要のひとつに掲げられる「女性活躍」ですが、女性の就労を取り巻く環境下においては、性別による差別的取扱い、妊娠・出産と仕事との両立の難しさ等、課題は根強く残ります。
こうした背景を受け、政府は2030年までに達成すべき数値目標として「指導的地位に占める女性の割合を30%程度に上昇させる」ことを公表し、法整備に取り組んでいることから、男女雇用機会均等法は今後の社労士試験対策上注意が必要なテーマと言えます。
「男女雇用機会均等法」社労士試験出題ポイントをわかりやすく!
社労士試験対策上、男女雇用機会均等法についておさえるべきは、「性別を理由とする差別の禁止」、そして直近の法改正項目です。
後者については、現状、2017年1月に盛り込まれた「マタハラ防止義務」が挙げられますが、新たな改正が生じた際には都度インプットしておく必要があります。
「男女雇用機会均等法」とは?
社労士試験頻出テーマを確認する前に、まずは男女雇用機会均等法について、基本的な理解を深めておきましょう。男女雇用機会均等法には、以下の内容が定められています。
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保に関わる措置の推進
- 募集・採用、配置・昇進等の雇用管理の各段階における性別を理由とする差別の禁止
- 婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」については、2017年1月に、事業主に対して、職場における上司や同僚からの妊娠・出産等に関するハラスメント防止対策の措置を講じることが義務付けられました。
社労士試験頻出「性別を理由とする差別の禁止」
男女雇用機会均等法の社労士試験頻出テーマである「性別を理由とする差別の禁止」については、具体的な項目として以下の3つの観点が重要となります。
「間接的差別」や「女性労働者に係る措置」については、一見すると分かりにくいですが、併せて具体的なケースを確認しておくとスムーズにインプットできると思います。
雇用管理の各段階における性別を理由とする差別の禁止
募集・採用、配置(業務の配分及び権限の付与を含む)・昇進・降格・教育訓練、一定範囲の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由とする差別を禁止
間接的差別の禁止
労働者の性別以外の事由を要件とする措置のうち、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがあるものとして、厚生労働省令で定める措置について、合理的な理由がない場合、これを講ずることを禁止
※例えば、「募集又は採用にあたり、身長や体重の要件を課す」等
女性労働者に係る措置に関する特例
性別による差別的取扱いを原則として禁止する一方、雇用の場で男女労働者間に事実上生じている格差を解消することを目的として行う、女性のみを対象とした取扱いや女性を優遇する取扱いは違法でない旨を規定
※例えば、「女性労働者が占める割合が男性労働者の4割以下の雇用管理区分や役職の募集・採用にあたり、採用基準を満たす者の中から女性を優先的に採用する」等
2017年改正「マタハラ防止義務」は要確認
2017年1月1日施行の改正男女雇用機会均等法では、職場における妊娠・出産等に関する言動に起因する問題に適切に対応すべく、事業主に対して雇用管理上の措置を講じるべき旨を義務付けました。
「雇用管理上の措置」については、指針として以下5項目が挙げられています。
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ちなみに、同じく2017年1月1日施行の改正育児・介護休業法では、育児休業及び介護休業等について同様の措置を講ずるべき旨が、事業主に義務付けられています。
参考:厚生労働省「妊娠・出産等に関するハラスメントの防止措置の内容について」
男女雇用機会均等法を具体的な事例で考えさせる出題多数
さて、ここまで、社労士試験対策上おさえるべき男女雇用機会均等法のポイントをご紹介しました。これらを効率良く記憶するために、さらには社労士試験で得点につなげるためには、それぞれについて具体事例も併せて確認しておく必要があります。
社労士試験での実際の出題を見ると分かる通り、男女雇用機会均等法の出題では、ケースごとに法に違反するか否かを判断させる出題が多くみられます。よって、社労士試験対策上、実例を元に、法律や指針の内容を噛み砕いて理解しておくことが肝心です。
「男女雇用機会均等法」社労士試験出題実績
男女雇用機会均等法は、社労士試験頻出とまでは言えないものの、労一分野においては定期的に狙われるテーマであるため、基本的内容や改正項目の理解を欠かすことができません。
ここからは、社労士試験における男女雇用機会均等法関連の出題を確認しましょう。
性別を理由とする差別の禁止(平成13年労一)
以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。
「一定の役職に昇進するための試験の合格基準として、男性の適性を考えた基準及び女性の適性を考えた基準の双方を用意することは、たとえ男女双方のそれぞれの適性を適切に生かす上で効果的な工夫であったとしても、男女雇用機会均等法に違反する。」
回答:〇
一定の役職に昇進するための試験の合格基準について、男女の別で異なるものとすることは、男女雇用機会均等法に違反します。
ただし、当該役職における女性が占める割合が男性の4割以下の場合、採用基準を満たす者の中から女性を優先的に採用することは、「女性労働者に係る措置に関する特例」として認められます。
マタハラ防止措置(平成20年労一)
以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。
「事業主は、男女雇用機会均等法第12条の規定により、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならないとされ、男女雇用機会均等法第13条の規定により、当該保健指導又は当該健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならないとされている。」
回答:〇
設問の通りです。本問に付随し、今後は、2017年改正事項として盛り込まれたマタハラ防止義務についても問われる可能性があります。
まとめ
- 社労士試験・労一の出題範囲である男女雇用機会均等法は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保の推進を目的に、事業主等が指針に則った措置を講じるべき旨を定めた法律です
- 社労士試験対策上、男女雇用機会均等法について特に注意すべきは「性別を理由とする差別の禁止」、そして直近の法改正項目です
- 「性別を理由とする差別の禁止」として、「雇用管理の各段階における性別を理由とする差別の禁止」「間接的差別の禁止」「女性労働者に係る措置に関する特例」の3つの観点をおさえましょう
- 2017年1月改正の要である「マタハラ防止義務」について、事業主が講じるべき雇用管理上の措置として、「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応」「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」「前各項と併せて講ずべき措置」の5項目を理解します
- 社労士試験における男女雇用機会均等法の出題では、具体事例について問うものが多く見受けられます
小野賢一(おの けんいち)
「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
●フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師