社労士の独立は難しい?理想的な独立の年齢や女性の独立、独立後の年収など解説

意外と難しい社労士の独立!その実態を探る

「いつかは社労士になって独立するぞ!」と明確な目標を持って試験に臨む受験生であっても、いざ現実に独立を考えるとなればどうしても不安はついて回るもの。

たとえ「社労士」の肩書があったとしても独立して上手くいくものなのか、生活できるだけの収入を得られるのか等、懸念される要素は多岐に渡ります。とりわけ、「カネなし、コネなし、経験なし」での独立であればなおのこと、独立を夢見つつも及び腰になりがちです。

結論から言えば、社労士の独立は「工夫やアイディア、そして覚悟をもって、まず一歩踏み出すこと」が重要です。

本ページでご紹介する社労士独立の典型的な失敗例と成功のポイントを参考に、ご自身なりの社労士独立に思いを巡らせてみましょう。

目次

意外と難しい社労士の独立!その実態を探る

社労士の独立は、他業種と比較しても幅広く様々な人に門戸が開かれています。しかしながら、独立し、ご自身でビジネスとして社労士業を成立させる上では、明確なビジョンや戦略の元に仕事に取り組んでいかなければなりません。

実際、「社労士資格を取得できたから何となく独立」で独立3年以内に廃業に追い込まれるケースは珍しくありません。

ここでは、以下3つの社労士独立の失敗事例を参考に、

  • 独立後に必要なこと
  • 気を付けるべきこと

を具体的に考えてみましょう。

社労士独立失敗その1.「資格さえあれば何とかなる」の幻想

現状、「とりあえず資格さえ取得出来れば何とかなる!」と、社労士の独立を安易に考えている方は、厳しい言い方をすれば独立失敗予備軍です。もちろん、資格は自営業者にとって付加価値となりますが、社労士の看板を掲げれば無条件に仕事が舞い込んでくるわけではありません。

たとえ社労士の肩書がついたとしても、独立してビジネスを展開するなら、自営業者としての自覚をもって幅広い視野を持ち、あらゆる営業努力を重ねる必要があります。社労士として独立を目標にされている方は、こうした自営業者としての覚悟を持ち、不屈の努力をし続けられるでしょうか?

ぼんやりと「社労士資格で独立したい」と考えるだけでなく、どんな社労士になりたいか、社労士としてどんなことをしたいかを検討しなければなりません。

社労士独立失敗その2.安易な価格競争への参入

社労士業においては既に業界一律の報酬設定が撤廃され、個々が自由に報酬額を決めることができますが、集客のために「安さ」のみを売りにする社労士は、業界で長く生き残ることはできません。

確かに、顧客からしてみれば社労士報酬は安く抑えられるに越したことはありませんが、社労士側にとってみればいかに多く受注できるかが勝負となってしまうため、仕事の質の低下につながる恐れがあります。

まともな仕事を提供できなければ、仕事の受注が難しくなるだけでなく、場合によっては賠償責任まで生じる可能性があります。そうなれば、社労士としての道は必然的に閉ざされていくでしょう。

社労士独立失敗その3.とにかく実行力がない

基本的に、社労士になる人には事務方出身者が多いせいか、せっかく高い実務能力、豊富な知識を有していても、いざ独立となると一向に仕事を獲得できないケースは珍しくありません。

有能な社労士であるにもかかわらずなぜ仕事が来ないのか、その理由は実に簡単で「知られていないから」です。

社労士として独立したからには、まず自分が社労士であることを幅広く世間に周知していかなければ何も始まりません。さらに、社労士としての強みやアピールポイントを積極的に発信して、顧客に注目してもらわなければなりません。

独立社労士の中には、フットワーク軽く営業活動に踏み出せない方が多いですが、この点をどうクリアするかが社労士独立の成功の可否に大いに影響します。頭で考えることはもちろん大切ですが、併せて実行力を高める工夫にも目を向けましょう。

社労士の独立、こうすれば難しくない! 心にとめておくべき5つのポイント

社労士の独立、こうすれば難しくない!

さて、これまで独立社労士の失敗事例ばかりに注目してきましたが、もちろん、個々のアイディアや努力次第で独立を成功させることもできます。

ついあれこれ難しく考えすぎてしまい、「もう歳だから」「女だから」「実務経験がないから」と、社労士としての独立を夢見つつも実現に踏み出せない有資格者も少なくありませんが、自分に言い訳をするのはもうやめましょう。

現役の実務家の中には、高齢でも、女性でも、そして異業種からの転身でも、社労士として第一線で活躍している方はたくさんいます。

ここでは、社労士の独立開業を目指すにあたり、心にとめておくべきポイントを5つご紹介します。

【ポイント1】社労士独立は年齢に関わらず、いつでもできる

独立開業を志す方にとって、「社労士の独立に最適な年齢」は特に関心の高いテーマだと思います。この点、「若い方が良い」「いいや、年齢を重ねてからの方が・・・」など個々に持論はあるでしょうが、結論から言えば「社労士の独立に年齢は関係ない」と考えるのが妥当です。

20代で独立する場合、柔軟でフットワークが軽い、若い時から経験を積むことができるといったメリットはありますが、一方で経営者からすると「頼りなさ」「経験不足」がネックとなります。

一方で、年を重ねてからの独立であれば、前述の若手独立ならではのメリットは薄れますが、豊富な知識や経験を活かした深みのある仕事を提供できる可能性が高くなります。

独立のメリット、デメリットは各年代において想定されますが、思い立ったタイミングがご自身にとっての独立適齢期です。また、いつの段階で独立したとしても、年齢層に応じた強みを活かすことに目を向けられるのが理想であると言えます。

【ポイント2】社労士の独立で女性が活躍するには?

社労士試験合格者の男女比は例年概ね7:3であり、社労士業界も他士業の例に漏れず、男性比率の高さが伺えます。こうした状況下での女性の独立開業について、「女だから自信がない」と捉えるか、もしくは「女だから差別化しやすい」と考えるかは、皆さん次第です。

幸い、社労士業は力仕事ではありませんから、必ずしも男性としての身体能力が求められる仕事ではありません。正確かつ迅速、丁寧、そして顧客の心に寄り添う仕事を提供できれば、性別を問わず誰にでも活躍できる世界です。

また、昨今では働き方改革の一環として、企業における女性の活躍が推進され、これに伴い女性目線での人事制度構築、労務管理への需要が高まっている関係から、むしろ女性社労士が重宝される例もあります。

ただし、女性の働き方はどうしても結婚や妊娠・出産、育児といったライフイベントに左右されがちですから、この点をいかにクリアするかが女性社労士の独立開業における課題と言えそうです。

【ポイント3】社労士の独立後も一定の年収確保を目指すなら「プロ意識を持つ」

社労士として独立し、安定した年収を得るためには、専門家としての自覚をもって仕事に向き合う姿勢が大切です。一人独立の場合、つい「仕事をもらえるなら多少報酬が低くとも引き受けよう」となりがちですが、常に安価な仕事ばかりをこなしていれば社労士独立後の年収減の直接的な要因となります。

もちろん、安価な案件の先に大きなビジネス展開を見込むことができる、相手のビジネスが軌道に乗れば適正な報酬額で継続的な付き合いができそうだと思えるなら問題ありません。

一方で、常に「安さ」を売りにするようであれば、収入確保が困難となることに加え、専門家としての格を自ら下げることにもなりかねません。

もっとも、プロ意識を持って社労士業に従事する上では、常に情報を最新版にアップデートする、継続的にスキルアップを目指す姿勢は不可欠です。「社労士だから」という理由だけで独立後も無条件に一定の年収を確保できると考えるのではなく、プロとしてあり続けるための努力を欠かさないよう心がけましょう。

【ポイント4】社労士は「いきなり独立」でもOK

独立社労士として第一線で活躍する実務家の中には、意外にも「実務経験はなかったが、いきなり独立した」という方も珍しくありません。支部長クラスにも異業種からの転身が多いことから、社労士の「いきなり独立」は可能性としては大いにあり得るものと考えて良いでしょう。

しかしながら、実務未経験、人脈なしの状態から独立し、社労士業を軌道に乗せるためには、当然のことながら、相応の努力が求められます。

知識や経験に劣る分、個々の工夫やアイディア、差別化につながるスキルがモノをいうことは言うまでもありませんから、いかにしてご自身の強みを社労士業に活かすかを独立以前にじっくり検討する必要があります。

また、たとえ実務未経験からの社労士独立だとしても、顧客の前では常に一人前の社労士として振る舞うべきです。

「未経験で・・・」「独立したばかりで・・・」等の言い訳は、顧客にとって不安要素にしかなりませんので、安易に口にするのは避けた方が無難です。

【ポイント5】社労士の独立は副業として成立するか

昨今、企業における副業解禁が進んでいることを受け、社労士有資格者の中にも「独立開業したいが、いきなり専業になるのは厳しいので、まずは副業として社労士業を始めたい」と考える方が少なくない様です。

社労士の独立は副業として成立するのか、この問いについて結論から言えば「方法次第」のひと言に尽きます。「そもそも会社員が社労士として開業登録できるのか」という懸念があるでしょうが、開業登録自体は問題なく行えます。

支障が出るとすれば「業務対応」ですが、電子申請を活用すれば大半の手続き業務は24時間いつでもできますし、会社の休日であれば労務コンサルに無理なく対応することも可能です。

副業である以上、「いつでも顧客対応ができる」といった環境を作るのは難しいでしょうが、そのあたりもやはり工夫次第です。

一点注意すべきは、「所属先企業の副業規定」です。社会的な風潮を受け、ひと昔前と比較すると副業容認企業はぐんと数を増しましたが、それでも未だ「副業禁止」の姿勢を変えない会社は少なくありません。

また、基本的には副業容認であっても、本業と同業種での副業を禁じるケースは多いので、現状、勤め先で社労士の関連業務に従事している場合には注意が必要です。

まとめ

  • 有資格者にとってハードルの高い社労士の独立開業ですが、「工夫やアイディア、そして覚悟をもって、まず一歩踏み出すこと」で道が開かれます
  • 社労士独立の主な失敗要因には、「資格頼みで不十分な営業努力」「安易な価格競争への参入」「自営業者としての実行力のなさ」が挙げられます
  • 社労士の独立は、年齢や性別、実務経験の有無に関係なく、成功させることができます
  • 企業における副業解禁が進む中、社労士独立も工夫次第で本業と並行して行うことができますが、所属先の規定に留意する必要があります