社労士の独立は可能?開業の流れについても解説

更新日:2023年9月28日

社労士の独立は可能?開業の流れについても解説

いわゆる士業と呼ばれる資格の多くは、独立開業という働き方ができるという特徴があります。

社会保険労務士(以下:社労士)の資格も独立開業が望める士業のひとつ。

では、社労士として独立開業をするためにはどうすればいいのか。独立開業のメリットや、手順、さらに失敗しないためのポイントなどを紹介していきます。

これから社労士資格を取得し、独立開業を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

独立開業型社労士と企業型社労士の違い

社労士として働く場合、主に2つの働き方が考えられます。

ひとつは企業に勤務しながら社労士としての業務に就く企業勤務型。もうひとつは独立し開業する独立開業型です。

可能性としてはもうひとつ、企業に勤務しながら副業で社労士として働くという方法もありますが、こちらはやや特殊な働き方となります。

副業で社労士として働くためには、まずは勤務している会社が副業を認めている必要があります。また、会社が副業を認めていても、社労士を副業とするのは簡単ではありません。副業である以上、本業の仕事中に副業の業務を行うことはできません。副業の業務は土日祝日などの週末か、本業の就業時間外に行う必要があります。

社労士の主な顧客は法人です。副業社労士が業務を行えるタイミングは、顧客となる法人も就労時間外である可能性が高く、なかなか顧客獲得は簡単ではありません。

こういった事情もあり、副業として社労士の業務を行うのは簡単ではないため、ここでは企業勤務型と独立開業型に限定して違いを解説していきたいと思います。

働き方の違い

企業勤務型の社労士は、いわゆるサラリーマンと同様の働き方となりますので、就業時間や通勤に関しても、従来通りの働き方となります。

休みも土日祝日が一般的となり、有給や夏季休暇、年末年始休暇に関しても、会社の規定通りの取得が基本です。

一方独立開業型の場合、自身が経営者という立場になりますので、働き方はある程度自分の意志で決定できます。もちろん顧客の都合や自身の事務処理能力の問題はありますが、残業は一切なしや、週休3日、午前中は休みとして午後から働くなど、働き方は自分次第で自由に決定できます。

独立開業型の方が、自分の理想とする働き方を実現できる可能性は高いといえるでしょう。

年収の違い

企業勤務型と独立開業型では、年収にも違いがあります。詳しいデータに関しては以下の記事で詳しく解説していますので、そちらを参考にしてください。

年収の違いを詳しく見る

細かい数字や解説は上記の記事に任せますが、簡潔に特徴を紹介すると、企業勤務型の方が年収は安定し、独立開業型は不安定ながらも、企業勤務型以上の高収入を望むことができるということになります。

社労士の独立は難しい?

社労士の資格を取得したとして、独立開業をするのはどの程度の難易度となるか。この点に関して解説していきましょう。

どのくらいの割合で独立をしているのか、独立して成功するにはどのようなことを意識すべきかなど、社労士と独立に関して解説していきます。

独立開業している社労士の割合

2019年に「日本学術振興会」が発表した「研究費助成事業の研究データ」によるアンケート結果が以下の通りです。

働き方 割合
独立開業型(専業) 66.9%
独立開業型(副業アリ) 18.3%
企業勤務型 9.6%
社会保険労務士法人勤務 5.2%

社労士として独立開業している方の割合は合計すると8割以上。企業勤務型は1割弱となっており、社労士の多くが独立開業しているというのが現実のようです。

また、独立をしている方の20%以上が副業を持っていることも特徴の一つ。副業といってもいろいろな働き方がありますので一概には言えませんが、社労士と相性のいい別の資格も取得するダブルライセンスの形で事務所を開設している方も多いようです。

独立開業自体は難しくない

上記のデータから分かるのは、社労士として独立開業すること自体はさほど難しいことではないということ。何しろ8割以上の社労士資格取得者が、独立開業しているのですから、独立自体はさほど難しくはないということになります。

ただし、副業を持っている方も多く、社労士として独立開業し、しかも順調に収入を上げている方はそこまで多くはないということも分かります。

独立開業して収入を安定させるのは簡単ではなく、ある程度覚悟を持ってから独立する必要があると考えておいた方がいいでしょう。

独立開業をする方法

将来的に社労士として独立開業をすることを考えている方、また独立開業までは考えていないものの、社労士の資格取得を考えている方に向けて、社労士として独立開業をする手順を紹介しておきましょう。

社労士の資格を取得すればすぐに開業できるというわけではありませんので、しっかり手順を把握しておきましょう。

社労士試験に合格する

社労士にはいくつかの独占業務があります。独占業務とは、その資格を持つ者しか就けない業務。つまり社労士として働くためには、社労士の資格取得が必須となりますので、まずは資格取得を目指しましょう。

社労士試験の難易度や、出題される問題の内容などに関しては、ほかの記事で詳しく解説していますので詳細は省きますが、社労士試験は簡単な試験ではないため、取得を目指す方はしっかりと勉強期間を用意し、勉強方法なども考えておくのがおすすめです。

2年間の実務経験か事務指定講習を受講する

社労士試験に合格しても、すぐに社労士を名乗れるわけではありません。社労士として登録するには、社労士試験の合格に加え、2年間の実務経験が必要です。

社労士としての実務経験がなく、社労士試験に合格したという方は、合格後2年間は登録できないのかと言えばそうではありません。実務経験の代わりに、「全国社会保険労務士連合会」が実施する「事務指定講習」を受講し、修了することで実務経験に置き換えることができます。

社労士試験に合格し、実務経験を証明できるか、事務指定講習を終了するかのどちらかを満たせば、社会保険労務士会に登録することができるようになります。

社会保険労務士会に加盟し登録を行う

社労士試験に合格し、実務経験も満たすことができれば社労士としての登録を行い、ここで初めて社労士としての実務を行うことができるようになります。

登録は各都道府県に設置されている社会保険労務士会に行うことになります。登録する社会保険労務士会は、登録者が住んでいる都道府県か、独立開業型であれば事務所を設置する都道府県、企業勤務型であれば勤める会社の所在地となる都道府県に行います。

社会保険労務士会への登録には、登録料や登録免許税、入会金、年会費などの納付が必要です。入会金と年会費に関しては、都道府県ごとに差がありますので、しっかりと確認して納付するようにしましょう。

社労士として独立開業する場合は、この社労士登録以外に、開業の手続きも必要です。こちらは個人事務所の開業の手順に従って手続きを行いましょう。

社労士として独立するメリット

社労士には2つの働き方があります。それでも社労士資格取得者の8割以上が独立開業をしていることから、独立開業にはメリットがあると考えられます。

そんなメリットを紹介していきましょう。

自分らしい働き方を実現できる

最初の方でも触れましたが、独立開業するということは、自身が経営者であり社長であるということになります。自分が責任者ですから、働き方を決めるのも自分自身。休みをどのくらい取るか、残業はするのか、仕事開始を何時にするのかなど、働き方に関してもすべて自分で決めることができます。

仕事の時間を比較的短めの設定にし、趣味の時間を多めにするなど、自分らしい自由な働き方をすることができるのは大きなメリットといえるでしょう。

成果次第で高収入が目指せる

独立開業をした場合、事務所の維持に必要な経費や、業務上必要な経費を除けば、売り上げは基本的に自身の収入とすることが可能です。

つまり、仕事の成果次第で高収入を目指すことも十分に可能ということ。実際に年収のデータを見ても、年収1,000万円を超えるという方も少なくなく、高収入を目指す方にとって独立開業は非常に効率のいい働き方といえます。

ただし、反対に言えば成果が出なければ収入は低いままということになります。独立開業した社労士の方の収入の傾向にもその特徴は表れています。独立開業を目指す場合は、しっかりと準備し、収入アップを目指せるように工夫していきましょう。

社労士として独立して失敗してしまうケース

上記の通り社労士として独立開業した場合、収入は非常に高くなるか、低いままとなるかの両極端であるケースが多いようです。

つまり一定数社労士として独立しても、業務が上手くいかずに失敗してしまう方がいるということになります。

こうした方が失敗してしまう理由に関して、代表的な例をいくつか紹介しておきましょう。

資格があれば大丈夫という勘違い

もっとも多いのが社労士資格を取得したという安心感が強すぎるケースです。

社労士試験は難関資格のひとつです。取得のためには長期間勉強を続け、結果を出さなくてはいけません。そのため資格取得者の中には、資格を取得したことに満足してしまい、社労士の資格を持っていれば独立開業して生活していけると勘違いしている方がいらっしゃるようです。

確かに社労士試験の難易度は高く、資格取得で満足してしまう方は一定数いるかと思います。しかし、独立開業するということは、1つの事務所の責任者となるということです。

事務所の責任者である以上、社労士としての業務だけではなく、営業も経理も広告宣伝もすべて自分の責任で行う必要があるということ。こうした業務全般を自分一人で処理する準備や覚悟がなければ、独立開業はまず上手くいきません。

社労士資格の取得で満足し、独立開業するということに対する準備や覚悟が足りない方は、独立に失敗してしまう傾向が強いようです。

安易に価格競争に参入してしまう

社労士の仕事に対する報酬には、相場はあっても制限や規定はありません。ある程度社労士が自身で自由に設定できるため、この報酬の設定によっては独立して開業した事務所の経営が難しくなってしまう場合があります。

気を付けたいのが安易に価格を安く設定してしまうこと。仕事ごとの単価が安くなれば、1件あたりの収入が低くなってしまい、ある程度の収入を確保するためにより多くの案件を受注する必要が生じてしまいます。

たしかに単価を安くすれば、顧客を確保できる可能性は高まります。しかし、安すぎる価格設定は単価のダウンに繋がり、結果事務所経営に大きな影響を与えてしまいます。

また、安い単価で多くの仕事を担当すれば、1つの仕事にかける時間も短くせざるを得なくなり、その結果ミスが発生してしまう可能性もあります。仕事上ミスが重なれば、当然顧客からの信頼は落ちてしまいます。

社労士の業務において、顧客からの信頼が下がるのは大きなマイナス。結果的に顧客が離れ、収入が安定しなくなる結果となり、最終的には廃業という可能性も出てきます。

特に営業力に自信がない方ほど、安易に価格競争に参戦してしまう傾向がありますが、単純に値引きせずに、相場に即した料金で仕事を受注できるように努力する必要があります。

実行力の欠如

社労士として独立開業したからと言って、ただ事務所で待っているだけでは仕事は入ってきません。また、社労士として社労士会に登録をするのだから、社労士会から仕事が斡旋されるかと言えば、そんなことはありません。

仕事を獲得するために、何か行動を起こさなければいけないことは分かっていても、その行動を実行する実行力が無ければ仕事を獲得するのは難しくなります。

特に考えたいのが営業活動です。仕事を獲得するために営業活動は欠かせません。営業活動と言っても、チラシをポスティングし、HPを開設すればOKというわけではありません。自身の人脈などもフルに活用し顧客獲得を目指さないと、まず仕事は入ってこないでしょう。

こうした業務に対する実行力が欠けている方は、社労士として独立開業しても失敗してしまう可能性が高いでしょう。

まずは社労士試験に合格するのが重要

社労士としての働き方は2つ。企業に勤務する企業勤務型か独立開業型です。社労士資格を持っている方の多くが独立開業を果たしていますが、その中で成功している方は、独立開業に向かってきっちり準備をし、覚悟を持って独立した方となります。

とはいえ、社労士として働くためには、まずは資格を取得しなければいけません。社労士資格取得のために意識したいポイントや、勉強の方法などに関して解説していきましょう。

できるだけ短期間での合格を目指そう

将来的に社労士として独立開業したいと考えている方は多いかと思います。独立開業を目指すのであれば、社労士資格を取得するのに時間をかけるのはおすすめできません。

独立開業を目標としている以上、資格の取得は最終目標ではなく、むしろスタート地点です。上の独立の手順でも紹介した通り、まずは資格取得からすべては始まります。

この資格取得の時点で、必要以上に時間をかけてしまうと、独立開業するタイミングも遅れてしまいます。

社労士試験は難易度の高い試験であるため、つい合格を最終目標としてしまう方もいらっしゃるようですが、資格取得は最終目標ではなく、目標達成のための準備段階として考え、できるだけ短期間で取得できるように準備しましょう。

おすすめは通信講座の受講

できるだけ短期間で社労士試験に合格することを考えるのであれば、独学にこだわらない方が良いでしょう。

社労士試験はある程度しっかり時間をかければ、独学でも合格を目指せる試験です。そんな情報を聞いて独学で挑戦しようと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、短期合格であれば通信講座の活用がおすすめ。

通信講座を利用すれば、専門講師の合議を受講できる上、最短で合格できるように考えられた、勉強カリキュラムも手に入ります。このカリキュラムに沿って勉強するだけでも、資格取得までの時間は大幅に短縮できるでしょう。

フォーサイトなら短期間合格を目指せる

社労士講座を開講している通信講座は数多く存在します。どの講座を受講すべきか、悩んでしまう方も多いかと思います。そんな方におすすめしたいのがフォーサイトの社労士講座です。

フォーサイトの社労士講座には、社労士試験に精通した専門講師による講義動画や、見た目にもわかりやすいオリジナルテキストはもちろん、いつでもどこでも勉強できるeラーニング教材がついてくるセットがあります。

また、勉強カリキュラムは、最短で合格を目指せる合格点主義の効率的なカリキュラム。より確実に短期間での合格を目指せるでしょう。

eラーニング教材には、講義動画、デジタルテキスト、講義音声データはもちろん、スマホで簡単に挑戦できる演習問題や、自動的に勉強スケジュールを考えてくれるスケジュール機能も搭載。

毎日のスキマ時間も勉強時間に変えることで、より効率的に合格を目指せるでしょう。

社労士の独立に関するQ&A

これから社労士資格の取得を目指す方、また社労士として独立開業を考えている方が、疑問に思うであろうポイントに関して、Q&A方式で回答していきたいと思います。

Q.未経験でも独立は可能?

A.未経験でも独立開業は可能。

社労士としての仕事をしたことがないという方でも独立開業することはそんなに難しいことではありません。各自治体に設置されている社労士会に登録し、社労士事務所を開業する手続きを行えば、独立して一国一城の主となることができます。

ただし、独立開業=成功するというわけではありません。独立開業したあと、営業や広告宣伝などにしっかりと取り組まないと、成功できないケースも少なくありません。

独立開業するということは、自分が経営者になるということ。その点はしっかりと意識して、覚悟を持って独立開業するようにしましょう。

Q.独立開業の事務所は自宅でもいい?

A.自宅でも開業は可能

独立開業をする以上、事務所を設置する必要があります。この事務所に関しては、今お住まいの自宅を事務所として申請しても独立開業は可能です。

ただし、自宅を事務所として申請する場合には注意すべきポイントも。社労士として働く場所と、自宅として生活するスペースをはっきりと分ける必要があります。社労士の仕事をしていれば、顧客の個人情報を取り扱うケースも多くなります。

こうした顧客の個人情報がしっかりと守られる環境を作った上で申請するようにしましょう。

Q.開業資金はどの程度必要?

A.最低でも1年は暮らせるだけの貯蓄が必要

多くの方が気にしているのが開業資金でしょう。開業資金に関しては、状況次第でどの程度必要かは変わってきますが、目安となる金額を紹介しておきましょう。

★独立開業に必要な費用

  • 社会保険労務士会への登録料など
  • 事務所を借りるための賃料
  • 事務所に設置する事務用品のリース料
  • HP開設の費用
  • チラシなどの広告宣伝費用

まずは独立開業に必要な費用に関して解説いたします。大まかに言えば上記のような費用が必要となりますが、その金額はどこに開業するか、どの程度の事務所にするかで大きく変わりますので、具体的な金額は避けておきます。

ここまでは多くの方が考える範囲内かと思います。問題はここから。社労士として独立開業をしたからといって、すぐに仕事が受注でき、収入が安定するということはありません。

独立開業をした後、最低でも半年程度、できれば1年ほどは収入なしでも暮らせるだけの資金を準備してから独立開業することをおすすめします。

まとめ

社労士という資格には独占業務があり、独立開業ができる資格でもあります。実際にアンケートデータを見ても、社労士資格を持っている方の8割以上が独立開業しており、むしろ独立開業が基本の資格と言っても過言ではありません。

独立開業をすること自体はさほど難しいわけではありません。実務経験がなくとも申請さえしっかり行えば、独立することができます。

ただし、独立後、安定した収入が得られるかどうかは、独立した方の努力や工夫次第。独立開業をする以上、自身が経営者となりますので、その覚悟を持ち、しっかりと準備をしてから独立しましょう。

特に社労士の場合顧客の多くは法人です。また、一度契約した法人とは長い付き合いになるケースが多く、新規参入は厳しいとも言われています。

反対に言えば、一度食い込むことができれば、長期的な契約も視野に入るということ。自身の得意分野を作るなどの工夫をして、しっかり顧客を獲得できるように準備しておきましょう。

この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

社労士コラム一覧へ戻る