「労働施策総合推進法」とは?社労士試験で狙われる法改正ポイント

更新日:2021年7月19日

社会保険の労働一般では、労働関係法令における幅広い知識が問われます。

試験範囲が膨大なため、社労士受験生にとっては捉えどころがなく、悩みのタネになりがちな科目ですが、この範囲は昨今の働き方改革も相まってより一層重要度を増しています。

社労士試験対策としては、重要な改正が行われた法令を中心に、各テーマの基本を漏れなく習得しておくことが肝心です。このページでは、働き方改革上、重視される「労働施策総合推進法」について解説します。

目次

社労士試験頻出!「労働施策総合推進法」の出題ポイント

労働施策総合推進法の出題ポイント

労働施策総合推進法は、多様な働き方を促進させることを目的として成立した法律です。従来の「雇用対策法」が名称変更され、労働施策総合推進法として2018年7月9日に施行されました。

正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」と言います。

労働施策総合推進法は、社労士試験でも狙われやすい働き方改革関連のテーマを幅広く網羅する法律です。まずは、社労士試験対策上重要な「目的条文」と、おさえるべきキーワードについて理解を深めましょう。

社労士試験の選択式対策!「労働施策総合推進法」目的条文

社労士試験の選択式では、各法律の目的条文が穴埋め形式で出題されています。労働施策総合推進法の目的条文も、今後の社労士試験で狙われる箇所のため、キーワードをおさえておきましょう。

「この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。(1条1項) 」

労働施策総合推進法の目的条文には、いくつか重要なキーワードが登場しますが、働き方改革の柱となる「労働者の多様な事情に応じた(=労働参加率の向上)」「労働生産性の向上」についてはおさえておくと良いでしょう。

「募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保」に関わる定め

労働施策総合推進法では、労働者の募集及び採用について、原則、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない旨が定められています。

一方、一部のケースで年齢制限による募集及び採用が認められる場合もあります。社労士試験対策上、こうした例外的な取り扱いを把握しておきましょう。

① 期間の定めのない労働契約を締結する場合に、定年の定めをしている場合において、定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を募集する場合

② 労働基準法等の規定により、特定の年齢層の労働者の就業等が禁止又は制限されている業務について、労働者の募集及び採用を行う場合

③ 募集及び採用における年齢制限を必要最低限のものとする観点から見て合理的な制限であるとされる一定の場合に該当するとき

1ヵ月30人以上の大量離職が生じる場合に必要な「雇用変動の届出」

「雇用の安定」についてのテーマを網羅する労働施策総合推進法では、「雇用変動の届出」についての定めがあり、社労士試験対策上把握しておく必要があります。

事業主は、一の事業所において、常用労働者について1ヵ月以内の期間30人以上の離職者が生じるときは「大量離職届」を、最後の離職者が生ずる日の少なくても1ヵ月前に公共職業安定所長に提出することによって、当該離職者の数等を厚生労働大臣に届け出なければならないとされています。

外国人の雇い入れ・離職時の「外国人雇用状況の届出」

「外国人材の受け入れ」は、働き方改革の重要施策のひとつとされています。これに関連して、労働施策総合推進法では、「外国人雇用状況の届出」について以下の通り定めています。

「事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、その者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。(28条1項) 」

この届出は、新たに外国人を雇い入れた場合には、その月の翌月10日までに、その雇用する外国人が離職した場合にはその翌日から起算して10日以内に、雇用保険被保険者資格取得届又は被保険者資格喪失届と併せて公共職業安定所長に提出することによって行うことになっています。

社労士試験対策で要チェック!「労働施策総合推進法」改正項目

労働施策総合推進法の改正項目

ここからは、労働施策総合推進法の最新の改正項目である「パワハラ防止」「中途採用比率の公表」について概要を解説しましょう(2021年6月時点)。

「労働施策総合推進法」改正ポイント① パワハラ防止

企業では、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上、必要な措置を講じることが義務となりました。具体的な取り組みとして、以下の4点が挙げられます。

  • 事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
  • 苦情などに対する相談体制の整備
  • 被害を受けた労働者へのケアや再発防止
  • そのほか併せて講ずべき措置

ここに挙げたパワハラ防止策義務化の施行時期は、大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日(2022年3月31日まで努力義務)となっています。

「労働施策総合推進法」改正ポイント② 中途採用比率の公表

中途採用比率とは、「全社員に対して中途社員が何人働いているかを示す割合」を指します。

2021年4月施行の改正法では、常時雇用する労働者の人数が301人以上の大企業に対して、中途採用比率公表を義務づけています。なぜ大企業に対して中途採用率の公表を義務づけるのかというと、その背景には「中途採用の促進」があります。

大企業には未だに新卒採用主義が根強く残りますが、こうした状況を変える一手段として、各社に中途採用の状況を数字で公表させることにより、今後中途採用を促進させたい狙いがあるようです。

中途採用比率公表の具体的な方法としては、おおむね1年に1回以上、公表日を明らかにした上で、「直近3事業年度」の実績を企業のホームページなど(求職者が情報を容易に閲覧できる方法)を通じて行うこととされました。

まとめ

  • 労働施策総合推進法は、「雇用対策法」の名称を変更して2018年7月9日に施行された法律です
  • 社労士試験対策では、労働施策総合推進法の目的条文と内容に関わる基本知識の他、最近の改正ポイントである「パワハラ防止」、「中途採用比率の公表」についておさえておく必要があります
  • 労働施策総合推進法の目的条文では、働き方改革を意識したキーワードをいくつも読み取ることができます
  • 労働施策総合推進法の社労士試験の出題は、奇問難問の類ではなく、基本的な知識で十分対応可能なレベルです
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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