社労士試験で頻出「生計維持」を正しく理解!「生計同一」との違いとは?

お金と電卓

社労士試験では、主に年金の給付要件で「生計維持」のキーワードが登場します。「生計維持」という文字から、何となく言葉の意味の把握は可能かもしれません。しかしながら、社労士試験の受験生であれば、一歩踏み込んで、生計維持関係を認めるための具体的な事項を理解しておく必要があります。また、類似用語に「生計同一」があり、「生計維持」との相違点を意識しながら給付要件の違いを捉えておくことも、試験対策上重要です。

一つひとつの用語の意味や定義という細かなポイントではあるものの、社労士試験で頻繁に狙われる「生計維持」について、さらには混同しがちな「生計同一」との意味の違いを正しくおさえましょう。

目次

社労士試験頻出「生計維持」「生計同一」を区別しよう

「生計維持」と「生計同一」の違いを明確にすべき機会は、おそらく普段の生活の中ではあまりないと思われます。ところが、主に遺族年金関連の給付要件を考える上では、「生計維持」なのかそれとも「生計同一」なのかが重要であり、この点は社労士試験でもよく問われるポイントです。

社労士試験対策としては、「生計維持」と「生計同一」の違いを区別した上で、それぞれがどんな給付の要件になっているかを整理しておく必要があります。

「生計維持」=「生計同一要件」と「収入要件」の両方を満たす

「生計維持」は、

  • 生計を同一にしている
  • 収入額が一定以下である

の2要件を満たす場合に認定されます。

「生計同一」については後述しますが、主に同居していることが要件となります(次項で解説する通り、別居している場合にも例外的に認められることはありますが)。

また、生計維持として認められるための収入目安は、下記①②のいずれかとなります。

① 前年(前年分が確定していないときは前々年)の収入が850万円未満もしくは所得が655.5万円未満である場合

② 定年等により、近い将来(概ね5年)以内に①に該当することが見込まれる場合

「生計同一」=「生計同一要件」のみ満たし、収入額は問われない

一方、「生計同一」は、「生計維持」のような収入要件は問われず、あくまで「生計を同一にしている事実があるか」で判断されます。

具体的には、以下のいずれかに該当する場合は「生計同一」関係が認められます。

  • 住民票上同一世帯の場合
  • 住民票上の世帯は別であるが、住所が住民票上同一世帯の場合
  • 住所が住民票上異なるが、現に起居を共にしており、家計も同一の場合
  • 単身赴任や就学などで住所を別にしているが、仕送りなど経済的援助と定期的な音信が交わされている場合

番外編「主として生計維持」とは?

ちなみに、健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者の認定基準には「主として生計維持」という要件があります。通常の「生計維持」との違いは収入要件であり、具体的な目安は下記の通りです。

<同居の場合>
被扶養者となろうとする人の年収が130万円未満(60歳以上または一定以上の障害が認められる者は180万円未満)で、かつ被保険者の年収の2分の1未満

<別居の場合>
被保険者からの援助額が被扶養者の年収を上回る場合

つまり、収入面において、より依存度の高い状態であるときに、「主として生計維持」が認められることになります。

社労士試験対策でおさえるべき「生計維持」と「生計同一」

四角と丸

「生計維持」と「生計同一」、どちらの要件が求められるかは、給付によって異なります。もちろん、社労士試験対策上はどのような場合にどちらの要件を満たす必要があるかを正しく理解しておく必要があります。

「生計維持」が要件となるケース

「生計維持」は、大まかに「遺族給付」の受給権者に求められる給付要件です。

  • 労災保険 遺族補償年金の受給権者
  • 国民年金 遺族基礎年金の受給権者
  • 厚生年金 遺族厚生年金の受給権者

「生計同一」が要件となるケース

一方で、「生計同一」は、「未支給」給付の請求権者の要件という点が社労士試験でよく狙われます。

  • 死亡一時金の受給権者
  • 未支給年金及び未支給の保険給付の請求権者
  • 労災傷害補償年金差額一時金の受給権者

社労士試験では「生計維持」のどんなポイントが狙われる?

階段を登る人

社労士試験対策上、「生計維持」についておさえておくべきは、まず、原則となる生計維持要件(生計同一要件+収入要件)や、生計維持と生計同一の相違点です。いずれも基本的な事項なので、漏れのないように知識を整理しておく必要があります。

さらに、過去の出題では「生計維持の認定権限」を問われたこともあります。認定権限は厚生労働大臣にありますが、実際に事務を行う場面で迅速に処理できるよう、その権限に係る事務が日本年金機構に委任されている点は覚えておくと良いでしょう。

まとめ

  • 社労士試験対策上、「生計維持」と、それに類似するキーワードである「生計同一」は、それぞれの違いを区別した上で、どんな給付の要件になっているかを整理して覚えておく必要があります
  • 「生計維持」を認められるには、生計同一要件と一定の収入要件の両方を満たす必要があります
  • 「生計同一」関係の場合、収入要件は問われず、あくまで「同一世帯」であること、別居の場合は経済的援助等の状況に応じて判断されます
  • 「生計維持」は主に遺族給付の受給権者に、「生計同一」は未支給給付の請求権者に求められる要件です
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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