社労士・労一「次世代育成支援対策推進法」目的や行動計画に関わる改正等

更新日:2021年8月3日

厚生労働省の調査によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は、2020年で「1.34」となり、5年連続で前年を下回る結果となりました。

昨今、急速に進む少子化に鑑み、日本においては、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備を図ることへの必要性が叫ばれています。

このページで解説する「次世代育成支援対策推進法」は、次世代育成支援対策について、国・地方公共団体・事業主が講じるべき措置を定めた法律です。社労士試験では、労一の出題範囲となっています。

目次

「次世代育成支援対策推進法」の社労士試験出題ポイント

社労士試験出題ポイント

次世代育成支援対策推進法は、社労士試験頻出というわけではありませんが、2021年4月1日に「行動計画策定指針」に関わる改正があったことから、今後注意すべきテーマと言えます。

また、労一分野の定番である目的条文、そして本法のキーワードとなる行動計画や認定制度、さらに数字関連では施行期日、いつまでの時限措置なのかについても把握しておくと安心です。

社労士・労一「次世代育成支援対策推進法」は総則を要チェック

社労士試験対策として次世代育成支援対策推進法を理解する上で、注目すべきは「総則」です。

総則には、この法律の目的や定義、基本理念、国及び地方公共団体の責務、事業主の責務が盛り込まれており、このあたりは選択式・択一式共に出題の可能性が高い分野です。

内容理解に努めると共に、選択式の穴埋め問題にも対応できる様、キーワードを意識した対策が有効です。

社労士・労一「次世代育成支援対策推進法」で策定すべき一般事業主行動計画

地方公共団体及び事業主は、次世代育成支援対策推進法の基本理念に則り、行動計画を策定します。法律上、一般事業主行動計画の策定対象となる事業主の要件は、「101人以上の企業の事業主」であり、100人以下の企業では努力義務にとどまります。

一般事業主行動計画には、事業主が「従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備」や「子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備」に取り組むにあたり、以下の各項目について具体的に策定し、盛り込みます。

① 計画期間

② 目標

③ 目標を達成するための対策の内容と実施時期

③を検討する際に参考になる行動計画策定指針について、2021年4月1日施行の改正法には「会社内における不妊治療等に対する理解の促進」に関わる項目が追加された点をおさえておきましょう。

参考:厚生労働省「次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針の改正について」

社労士・労一「次世代育成支援対策推進法」における行動計画策定後の流れ

社労士試験対策上、一般事業主行動計画の内容と併せて、策定後の流れについても理解しておきましょう。

① 行動計画の公表と社員への周知

② 行動計画の届出

策定の日からおおむね3ヵ月以内に、「一般事業主行動計画策定・変更届」を都道府県労働局へ届け出ます。ただし、計画自体の届出は不要で、届出の内容は「計画した旨のみ」です。

③ 施策実行

④ 次期の行動計画を策定

⑤ 厚生労働大臣による認定

計画期間が終了し、目標を達成するなど、認定を受けるための要件を満たしたときは、都道府県労働局に認定の申請を行います(後述する「くるみん」、「プラチナくるみん」)。認定基準を満たしている場合は厚生労働大臣により認定され、企業は商品に認定マークを使用したり、求人広告に記載したり、イメージアップを図ることが可能となります。

前項の一般事業主行動計画策定について、さらにここに挙げた行動計画策定後の流れについては、以下で詳しく解説しています。

参考:厚生労働省「一般事業主行動計画の策定・届出等について」

社労士・労一「次世代育成支援対策推進法」は令和7年3月31日までの時限措置

次世代育成支援対策推進法の社労士試験対策では、法律の内容の他、施行時期・時限措置関連では「数字」についてもおさえておく必要があります。

次世代育成支援対策推進法は、2003年7月16日公布、一部を除き同日施行されています(第2章以下は2005年4月1日施行)。

当初は2015年3月31日までの10年間の時限立法とされていましたが、2014年4月23日施行の改正法で、有効期限が2025年3月31日までさらに10年間延長されることになりました。

次世代育成支援対策推進法の「くるみん」、「プラチナくるみん」とは?

くるみん、プラチナくるみんとは

「くるみん」や「プラチナくるみん」は、次世代育成支援対策推進法に基づく仕事と子育ての両立のための行動計画の策定・実施に際し、一定の要件を満たした企業を「子育てサポート企業」として認定する制度です。

「くるみん」「プラチナくるみん」共に、「女性の育児休業取得率(75%以上)」「労働時間数(フルタイム労働者の月平均時間外・休日労働45時間未満、全労働者の月平均時間外労働60時間未満)」の基準があり、さらに「男性の育休等取得率」に関わる基準に応じて「くるみん認定」か「プラチナくるみん認定」のいずれかを受けることができます。

参考:厚生労働省「しょくばらぼ」

「次世代育成支援対策推進法」社労士試験出題実績

社労士試験出題実績

これまで解説してきた通り、社労士試験の次世代育成支援対策推進法対策では、「総則」「一般事業主行動計画」「行動計画指針」「くるみん・プラチナくるみん認定」に関わる基本的理解に努める必要があります。

併せて、「施行期日」関連については、時限措置に関わる事項も含めて把握しておくと安心です。さっそく、過去の出題を確認しましょう。

次世代育成支援対策推進法の施行期日(平成19年労一)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「次世代育成支援対策推進法は平成15年7月16日に公布され、平成19年4月1日から施行されている。」

回答:×

次世代育成支援対策推進法は、平成15年7月16日に公布され、一部を除き、同日に施行されています(第2章以下は2005年4月1日施行)。

一般事業主行動計画(平成19年労一)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「次世代法第7条第1項の規定において、都道府県が策定する都道府県行動計画においては、職業生活と家庭生活との両立の推進のために、男性を含めたすべての人が、仕事時間と生活時間のバランスがとれる多様な働き方を選択できるようにすべきとしており、また、一般事業主行動計画においては、働き方の見直しに資する多様な労働条件を整備する中で、例えば、所定外労働時間の削減を図るために、「ノー残業デー」や「ノー残業ウィーク」の導入・拡充、フレックスタイム制や変形労働時間の活用など具体的な対策を計画期間中に導入することを義務付けている。」

回答:×

次世代育成支援対策推進法7条1項では、具体的な対策を計画期間中に導入することまでを義務付けていません。

まとめ

  • 社労士試験・労一の出題範囲である「次世代育成支援対策推進法」は、急速に進む少子化対策として、国・地方公共団体・事業主が、働く人の仕事と子育ての両立支援に向けて講じるべき措置を定めたものです
  • 社労士試験対策上、次世代育成支援対策推進法でおさえるべきは、労一分野の出題の定番である目的や定義、基本理念の他、国・地方公共団体・事業主の責務、行動計画、認定制度等の内容、さらに施行期日、時限措置の数字に関わる事項についてです
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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