社労士試験対策で盲点となりがちな「社会復帰促進等事業」の覚えるべきポイント

更新日:2021年6月7日

労災保険というと、真っ先に、業務災害や通勤災害によって被災した労働者や遺族に対する保険給付を行うものといったイメージが浮かぶのではないでしょうか?ところが、労災保険で行えることは、単なる保険給付のみに止まりません。

被災労働者の社会復帰促進、被災労働者やその遺族の援護、労働者の安全衛生の確保などを図ること等の社会復帰促進等事業も幅広く行います。

社会復帰促進等事業については、社労士試験でも出題実績があるため、基本的なポイントをおさえておく必要があります。

目次

社労士試験で狙われる「社会復帰促進等事業」の要点

社会復帰促進等事業の要点

労災保険法のテーマのひとつである社会復帰促進等事業の内容は多岐に渡りますが、社労士試験対策上は、出題頻度の高い項目をチェックしておくことで対応可能です。

具体的には、以下に挙げる「社会復帰促進等事業の3事業とその内容」であり、いずれも「復帰に向けての支援」「遺族の支援」「災害防止」の観点から見ていくと整理しやすいでしょう。

社会復帰促進事業

社会復帰促進事業で行うのは、「療養施設やリハビリ施設の設置・運営」、そして「業務災害及び通勤災害の被災労働者の円滑な社会復帰促進のための事業」です。

具体的な事業内容について、2020年4月1日の施行規則改正で、以下が明記されました。

  • 義肢等舗装具費の支給
  • 外科後処置
  • 労災はり・きゅう施術特別援護措置
  • アフターケア
  • アフターケア通院費の支給
  • 振動障害者社会復帰援護金の支給
  • 頭頸部外傷症候群等に対する職能回復援護

選択式、択一式両方で問われる可能性がありますので、ざっくりと頭に入れておきましょう。

被災労働者等援護事業

被災労働者等援護事業とは、「被災労働者の療養生活や介護の援護」「遺族の就学援助」「被災労働者や遺族に対する資金貸付」といった被災労働者及び遺族の援護を図るための事業を指します。

前項の社会復帰促進事業同様、被災労働者等援護事業の具体的な事業内容についても、2020年4月1日の施行規則改正で、以下が明記されました。

  • 労災就学援護費
  • 労災就労保育援護費
  • 休業補償特別援護費
  • 長期家族介護者援護金及び労災療養援護金の支給

安全衛生確保等事業

安全衛生確保等事業では、「業務災害防止に関する活動に対する援護」「健康診断施設の設置・運営」といった労働者の安全衛生の確保のために必要な事業と、「賃金の支払の確保を図るために必要な事業」を行います。

業務災害防止に関する活動に対する援助として、具体的には、労働災害防止対策の実施、災害防止団体に対する補助等が挙げられます。

社会復帰促進等事業の実施機関

社会復帰促進等事業を行うのは、原則として「政府」です。ただし、以下の機構によって行われる事業もあります。

独立行政法人労働者健康安全機構
独立行政法人労働者健康安全機構法第12条第1項に掲げるもの
具体的には、療養施設の設置及び運営、健康診断施設の設置及び運営、未払賃金の立替払事業など

独立行政法人福祉医療機構
労災年金受給権者に対する年金の受給権を担保とする小口資金の貸付け
※特別支給金の支給は政府が行います

社労士試験対策上、独立行政法人労働者健康安全機構と独立行政法人福祉医療機構の名称と、それぞれが行う事業についてはインプットしておきましょう。

「社会復帰促進等事業」の社労士試験出題実績

社労士試験出題実績

社会復帰促進等事業は、社労士試験頻出とは言えないものの、一方で出題される際には細かな点が問われるテーマです。

ここで解説した内容はごく基本的な要点ばかりですので、確実に得点するためには、過去の出題実績を参考に、一歩踏み込んだ出題ポイントについて対策するのが近道といえるでしょう。

それでは、さっそく社会復帰促進等事業に関わる出題を確認しましょう。

社会復帰促進等事業としてのアフターケア(平成23年労災法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「アフターケアの対象傷病は、せき髄損傷、頸肩腕障害、腰痛、慢性肝炎、白内障等の眼疾患、振動障害、外傷による末梢神経損傷、炭鉱災害による一酸化炭素中毒等であるが、サリン中毒及び精神障害は対象とならない。」

回答:×

「サリン中毒及び精神障害」は、アフターケアの対象傷病に含まれます。

参考:厚生労働省「『アフターケア』制度のご案内」

社会復帰促進等事業の種類①(平成26年労災法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「政府が行うことができる社会復帰促進等事業には、賃金の支払の確保を図るために必要な事業が含まれる。」

回答:

社会復帰促進等事業の「安全衛生確保措置」に、賃金の支払の確保を図るために必要な事業が含まれます。

「安全衛生確保」の文言と「賃金」のキーワードは結びつきにくいかもしれませんが、確実におさえておきましょう。

社会復帰促進等事業の種類②(平成26年労災法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「政府が行うことができる社会復帰促進等事業には、葬祭料の支給を図るために必要な事業が含まれる。」

回答:×

「葬祭料」の支給を図るために必要な事業は、社会復帰促進等事業には含まれません。

葬祭料の支払いは、社会復帰促進等事業の目的である「被災労働者の社会復帰の促進」「遺族援護」の趣旨から外れるものではありませんが、当事業では主に長期に渡る援護が想定されます。

まとめ

  • 社会復帰促進等事業は、社労士試験の労災保険法で問われるテーマであり、頻出とは言えないまでも出題時には細かなポイントが狙われる要注意分野です
  • 社会復帰促進等事業は「社会復帰促進事業」「被災労働者等援護事業」「安全衛生確保等事業」の3事業で構成されます
  • 社労士試験対策上、社会復帰促進等事業に含まれる3事業の内容については、過去に問われたことのあるポイントを中心に細かくおさえておくと安心です
  • 社会復帰促進事業と被災労働者等援護事業については、2020年4月1日の施行規則改正で具体的な内容が明示されました
  • 社会復帰促進等事業の実施機関は「政府」の他、「独立行政法人労働者健康安全機構」「独立行政法人福祉医療機構」があるため、それぞれが行う事業を確認しておきましょう
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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