社労士がおさえておくべき住民税関連手続きとは?

更新日:2020年5月11日

税に関する知識は社労士業務の専門外ではありますが、積極的な情報発信はしないにしても、実務上把握しておくべき税務知識もあります。その代表格が「住民税」であり、給与計算に従事する社労士であれば必ずおさえておくべきです。

このページでは、社労士が知っておきたい「住民税」の基本的な知識を解説すると共に、税務に関わる給与計算事務はそもそも税理士と社労士のどちらが担うべきかを検討することにしましょう。

目次

社労士が知っておくべき「住民税」

社労士がおさえておくべき住民税関連手続きとは?

「住民税」とは、都道府県民税と市町村民税を合わせた税のこと。給与計算事務に携わる社労士であれば、従業員の入社・退社に伴う住民税の異動手続きも併せて行うケースは少なくありません。
住民税等の税に関わる知識は社労士試験の出題範囲外ですが、既に実務経験のある受験生であれば、住民税に関わる諸手続きに精通されているかもしれません。ここでは、実務未経験の受験生に向けて、社労士が知っておくべき住民税の基本を解説します。

住民税の「特別徴収」「普通徴収」とは?

住民税の納付方法には、「特別徴収」と「普通徴収」があります。
特別徴収とは、給与所得者(会社の従業員)に適用される納付方法です。事業主(給与支払者)は、毎年6月から翌年5月までの毎月の給料から税額を徴収し、従業員(納税義務者)に代わって住民税を納入します。
一方、普通徴収とは、納税義務者各人が区市町村から送付される納税通知書を使って納税する方法で、年4回に分けて納めることになります。
現状、社労士試験の受験生の皆さんも、特別徴収と普通徴収のいずれかの方法で住民税を納税されていることと思います。社労士として給与計算事務に携わるようになったら、これまでは会社任せにしていた住民税の異動手続き、月々の控除等も担う可能性があると考えておきましょう。

社労士の給与計算に付随する住民税関連業務

原則として、事業主には「特別徴収義務者」として特別徴収税額決定通知書に記載された税額を納期限内に納入する義務が課せられています。そのため、 給与計算事務では、予め通知された住民税額を控除して、支給額を算出する必要があります。ちなみに、給与から控除される項目は住民税の他、社会保険料(健康保険・厚生年金)、介護保険料、雇用保険料、所得税等があります。これらは住民税のように、必ずしも通知された金額を控除すれば良いという種類のものだけではなく、社会保険料の様に報酬の増減に応じて保険料見直しの手続きが必要になるもの、雇用保険料のように都度給与額に応じて算出・徴収しなければならないものもありますから、注意が必要です。

住民税の異動届は社労士業務?

住民税の異動届は、税務関連の事務であるため、必ずしも社労士業務に含まれるわけではありません。原則として、特別徴収義務者である事業主が届け出るべき様式です。
しかしながら、給与計算に伴い入社・退社のタイミングで行う手続きのため、実務上、給与計算事務を受託する社労士が事業主に代わって行うことも少なくありません。
入社に際しては事業所で特別徴収を行うための手続きがあり、退社に伴い給与所得者異動届出書の作成・提出があります。社労士であれば、住民税関連の基本的な手続きの流れについても把握しておきましょう。

住民税を含む給与計算事務は税理士?それとも社労士?

社労士がおさえておくべき住民税関連手続きとは?

ところで、企業においては給与計算事務の委託先を税理士にするか、それとも社労士にするかで判断に迷うケースは多々あるようです。給与計算業務については、士業間によくある業際問題でもしばしば議論されるテーマですが、そもそもいずれかの士業の独占業務ではないため、どちらが行っても良いことになっています。税理士や社労士だけでなく、給与計算業務を専門とするアウトソーシング会社に委託することも可能です。
ここでは、税務を専門とする税理士、労務管理の専門家である社労士それぞれに給与計算事務を依頼するメリットについて考えてみましょう。

給与計算を税理士に依頼するメリット

給与計算業務には住民税や所得税が深く関連するため、税理士に委託されるケースも少なくありません。また、顧問として税務官公署への届け出、申告、申請等を任されている税理士が顧問契約の業務範囲内で給与計算を担うこともあります。
税理士に給与計算を依頼する最大のメリットは、「給与計算に付随して発生する税務関連の諸処理を問題なく遂行できる」ことでしょう。また、税理士と社労士の企業関与率を鑑みれば、従業員数が少なく、社労士による労務管理や労働・社会保険手続き代行を必要としない会社では、必然的に給与計算の委託先が税理士となることも考えられます。

給与計算を社労士に依頼するメリット

一方で、会社規模が大きくなり、従業員数も増え、労働・社会保険関連手続きの頻度が高くなると、企業における社労士の活用が進みます。社労士は労務管理全般の専門家ですから、就業規則や賃金規程の作成、日々の勤怠管理に携わることになります。会社の就業ルールや給与体系、従業員の労働時間の状況に精通する社労士が給与計算を担う方が、実務上スムーズであることは言うまでもありません。また、給与計算事務に付随して従業員の働き方を確認できれば、顧問社労士としてより的確な提案ができるようになるでしょう。
このように、労務管理の観点から給与計算事務を遂行できる点に、社労士に給与計算を依頼するメリットがあります。給与計算の具体的なやり方や、住民税等の税に関わる知識は社労士試験の出題範囲ではありませんが、晴れて社労士として実務に携わる様になったら、しっかりとマスターしておきたい分野です。

まとめ

  • 税務手続きは社労士の専門外ですが、実務に携わる上では、給与計算事務に付随して住民税関連の知識を深めておく必要があります
  • 住民税の納付方法には「特別徴収」と「普通徴収」があり、給与支払者である事業主は特別徴収義務者として、通知された住民税額を給与から天引きし、納期限内に納入する義務を負います
  • 給与計算事務はいずれかの士業の独占業務ではないため、税理士や社労士、その他アウトソーシング会社等あらゆる委託先が想定されます
  • 税理士に給与計算事務を依頼するメリットには、「税務手続きの円滑な遂行が可能」「そもそも顧問税理士としての業務範囲となっている場合があること」等が挙げられます
  • 一方で、社労士に給与計算事務を依頼するメリットには、社内ルールや従業員の勤怠状況を把握した上で給与計算事務に携わることで、「労務管理上適切なフィードバックができるようになる」という点にあります
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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