社労士試験対策「安全管理者」!頻出の「選任義務」「資格要件」を確認

更新日:2021年5月21日

事業場の安全衛生管理体制の一環として、労働安全衛生法上、一定の業種及び規模の事業場ごとに、「安全管理者」の選任が必要です。安全管理者は、安全衛生業務のうち、安全に係る技術的事項の管理に従事する役割を担います。

社労士試験対策上、その他の管理者の定義との混同に注意しながら、必要なポイントをおさえていきましょう。

目次

社労士試験で狙われる「安全管理者」のポイント

安全管理者のポイント

労働安全衛生法上の「管理者」には社労士試験対策上覚えておくべきものがいくつかありますが、いずれも一般の社労士受験生にとってはなじみが薄く、特に苦手意識を抱きがちな分野です。ただし、これらは出題傾向に則した情報の整理を行うことで、ぐんと理解しやすくなります。

管理者関連でインプットしておくべきは、主に「選任人数」「専属・専任要件」「選任期日」「届出」「資格要件」「巡視義務」です。

さっそく、各観点から重要なポイントを確認しましょう。

安全管理者を選任すべき事業場規模・業種

安全衛生管理者は、法定の業種で常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、安全管理者となる資格を有する者の中から「専属(その事業場のみの任務を担当)」の者を選任します。

「法定の業種」はざっくり「屋内外工業」と覚えておくと良いですが、具体的な業種はテキストや参考書で確認しておきましょう。

また、300人以上の建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業、500人以上の無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業、1,000人以上の紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業等、業種や要件によっては安全管理者を「専任(安全管理者の任務だけを担当)」としなければならないものもあるため、併せておさえておく必要があります。

「専属」「専任」の違いを正しく理解し、それぞれがどのような事業場に適用されるのかを理解しましょう。

安全管理者の資格要件

安全管理者となる資格要件には、3種類あります。

一つは「1.学歴要件により所定年数以上産業安全の実務に従事した経験を有し、かつ「安全管理者選任時研修」を修了した者」、

そして「2.労働安全コンサルタント」、

さらに経過措置として「3.平成18年10月1日時点において安全管理者としての経験が2年以上ある者」が挙げられます。

「1」の学歴要件に応じた実務経験年数については、テキストや参考書で具体的にインプットしておきましょう。

また、安全管理者となれるのはあくまで「労働安全コンサルタント」であり、第1種安全管理者免許又は安全工学安全管理者免許を有する者等は含まれません。

これら、安全管理者となることのできる資格・免許については、過去の社労士試験でも狙われたことのあるポイントです。

安全管理者の選任期日と届出

統括安全衛生管理者や衛生管理者同様、安全管理者についても、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署長へ報告する決まりとなっています。

安全管理者の職務

安全管理者の仕事は、「事業場における安全に係る技術的事項の管理」です。

具体的には、以下に挙げる安全に関する措置を講じます。

① 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置

② 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備

③ 作業の安全についての教育及び訓練

④ 発生した災害原因の調査及び対策の検討

⑤ 消防及び避難の訓練

⑥ 作業主任者その他安全に関する補助者の監督

⑦ 安全に関する資料の作成、収集及び重要事項の記録

⑧ その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行なわれる場合における安全に関し、必要な措置

出典:東京労働局「共通 3 「総括安全衛生管理者」 「安全管理者」 「衛生管理者」 「産業医」のあらまし」

法律上、巡視頻度の指定は “なし”

巡視頻度の指定はなし

衛生管理者には法定で巡視頻度に関わる定めがある一方で、安全管理者には具体的な規定はありません。

そのため、社労士試験対策上は「安全管理者には週1回の巡視義務・・・」という趣旨の選択肢は「×」となります。

加えて、産業医の定期巡視の頻度である「月1回」との混同にも注意が必要です。

ただし、実務上は安全管理者についても衛生管理者同様、週1回以上が望ましいとされています。

「安全管理者」の社労士試験出題実績

安全管理者の社労士試験出題実績

労働安全衛生法で問われる「安全管理者」については、冒頭でも解説した通り、他の管理者との要件の混同に注意する必要があります。

分かりやすいように表にまとめたり、過去問演習を繰り返したりすることによって、それぞれの管理者について正確なインプットが不可欠です。

最後に、社労士試験の過去問から、安全管理者関連の出題実績を確認しておきましょう。

「選任義務のある事業場要件」と「巡視義務」(平成23年安衛法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「常時80人の労働者を使用する建設業の事業場においては安全管理者を選任しなければならないが、安全管理者は少なくとも毎週1回作業場等を巡視しなければならない。」

回答:×

安全管理者は「法定の業種(主に屋内外工業)で50人以上の事業場」において選任するため、前半の安全管理者を選任すべき事業場の要件は正しいです。一方で、作業場等の巡視頻度については規定がないため誤りです(週1回の定期巡視は衛生管理者)。

「選任義務のある事業場要件」と「資格要件」(平成22年安衛法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「常時50人以上の労働者を使用する製造業の事業者は、安全管理者を選任しなければならないが、安全管理者は労働安全コンサルタントのほか、第1種安全管理者免許又は安全工学安全管理者免許を有する者の中から選任しなければならない。」

回答:×

前半の安全管理者を選任すべき事業場の要件は正しいですが、安全管理者の資格要件については誤りです(安全管理者に選任できるのは文中の「労働安全コンサルタント」のみで、第1種安全管理者免許又は安全工学安全管理者免許を有する者は選任できません)。

まとめ

  • 社労士試験対策上、安全管理者を含む労働安全衛生法上の管理者関連では「選任人数」「専属・専任要件」「選任期日」「届出」「資格要件」「巡視義務」を中心に理解を深めるのが得策です
  • 安全管理者は、法定の業種で常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに「専属(その事業場のみの任務を担当)」の者を、さらに業種や事業場規模に応じて「専属(安全管理者の任務だけを担当)」の者を選任する必要があります
  • 安全管理者の資格要件は社労士試験頻出であり、「学歴要件により所定年数以上産業安全の実務に従事した経験を有し、かつ安全管理者選任時研修を修了した者」、「労働安全コンサルタント」、さらに経過措置として「平成18年10月1日時点において安全管理者としての経験が2年以上ある者」の要件を頭に入れておく必要があります
  • 安全管理者には、法定の定期巡視頻度はありません
  • 労働安全衛生法に登場する各管理者については、それぞれの要件の混同に注意すべく、横断学習を中心に対策を進めると良いでしょう。
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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