社労士報酬の「着手金」とは?目的や相場など実務上の疑問を解説

「着手金」とは?

社労士等の士業への依頼に、「着手金」が生じることは珍しくありません。「業務に対する報酬は別途発生するのに、なぜ着手金を支払わなければならないの?」と思われるかもしれませんが、着手金の目的や理由を知ることで、社労士の報酬体系について理解を深めることが可能です。併せて、社労士の着手金額の相場、着手金を不要とする社労士事務所のスタンスについても確認しておきましょう。

目次

社労士報酬の「着手金」 目的や相場額

着手金は、依頼時に顧客から社労士に宛てて支払われる代金のことです。業務に対する成果とは関係なく支払う必要があるため、仮に顧客の望むような結果につながらなかったとしても原則として返金されません。

顧客側にしてみれば、業務への着手以前に代金の一部を払うことに抵抗が感じられるかもしれませんが、一方で、着手金の設定には合理的な理由があることも確かです。

ここでは、社労士報酬に係る着手金の目的や用途、相場額を解説します。

そもそもどんな業務に「着手金」が設定される?

社労士の着手金は、助成金申請や年金の裁定請求など、受注段階で結果を見通すことができず、なおかつ顧客側の都合により受給に至らない事例が想定される業務に設定されます。また、着手金が設定されている業務については、別途成功報酬として、実際に成果につながった際に受給した助成金額や年金額に所定のパーセンテージが乗じられて請求されます。

社労士の「着手金」 相場額は?

様々な社労士事務所の料金表を見ると、助成金申請や年金の裁定請求の着手金の相場は、概ね30,000~50,000円ほどであることが分かります。ただし、着手金額は社労士法等で決まっているわけではないため、社労士事務所ごとのスタンスや業務の難易度によって異なるようです。また、発注以前に有料相談をしている場合等、着手金が通常よりも軽減されることも珍しくありません。

着手金の主な目的は「事務手数料」

着手金は、業務着手分の報酬の他、郵送費や交通費、印刷代などの必要経費等、総じて「事務手数料」にあてられる目的で設定されています。着手金が生じる助成金申請や年金の裁定請求は、前述の通り、社労士に落ち度がなくても、依頼者側の状況で受給できなくなるケースは少なくありません。こうした事態を想定し、あらかじめ最低限の稼働報酬を徴収しておくことはさほど問題ではないでしょう。

また、業務に付随して生じる実費については、別途徴収する例の他、すでに着手金に含められている場合もあります。

「着手金ゼロ」の賛否

「着手金ゼロ」の賛否

社労士事務所の中には、「着手金ゼロ」の完全成功報酬型で業務を受注するところもあります。

「着手金ゼロ」の謳い文句は、集客には効果的でしょうが、郵送費や印刷代等の必要経費を社労士側が立てかえる必要があり(別途事務手数料を設定する場合は別ですが)、結果が出なかったときに稼働分の報酬を請求できないことに注意しなければなりません。もちろん、顧客側の問題で成果につながらなかった場合についても同様です。

かたや、顧客側にしてみれば、「着手金ゼロ」の方が安心のように思えます。しかしながら、自ら事前にお金を払っておくことで、案件に対して真剣かつ前向きに取り組むことができ、結果につながりやすいというメリットもあります。助成金申請や年金の裁定請求については、代行者である社労士はもちろん、依頼者本人もまた、必要な準備や取り組みに前向きでなければ受給に至ることはできないものです。

顧問契約の有無で着手金や成功報酬は変わる

顧問契約の有無

このページでは、社労士の着手金について解説しました。助成金申請の場合、既に顧問契約を締結している企業に対しては、着手金を徴収せず、しかも成功報酬の割合もスポットと比較して低く設定する社労士事務所がほとんどです。依頼を受ける社労士としても、日頃から労務管理の状況を良く把握している事業所の方が結果を出しやすく、しかも安心して受注できるからでしょう。

社労士としては、助成金申請のスポット相談をきっかけに、顧問契約のメリットを説明し、締結の流れに導くのが得策といえましょう。

まとめ

  • 社労士の着手金は、受注段階で結果を見通すことが困難な助成金申請や年金の裁定請求などに対し、受注時に社労士から顧客に請求する費用のことです
  • 着手金は、業務の成果に関わらず支払う必要があり、原則として返金されません
  • 顧問契約の有無によって、着手金の有無や成功報酬金額に違いがある場合があります
  • 着手金の相場額は概ね30,000~50,000円で、業務着手分の報酬の他、郵送費や交通費、印刷代などの必要経費として徴収されます
  • 「着手金ゼロ」を謳う社労士事務所もありますが、社労士と顧客双方にとって、着手金を支払うべき意義は大いにあります
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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