社労士の提出代行と事務代理の違いとは?実務上の疑問を正しく理解

万年筆

開業社労士として実務に携わる際、諸手続きの際に必ず「提出代行」「事務代理」の別を明示します。開業したての社労士であれば、「提出代行」なのか、それとも「事務代理」なのか、判断に迷うことも少なくないでしょう。

「どちらでもさほど違いはないのでは?」と思われるかもしれませんが、「提出代行」と「事務代理」は明確に異なりますので、申請時には正確な申告が求められます。

このページでは、これから社労士試験や開業を目指す受験生に向けて、一足早く実務のお話として、社労士の「提出代行」「事務代理」を解説することにしましょう。

目次

社労士の「提出代行」「事務代理」とは?

社労士の「提出代行」と「事務代理」は、いずれも開業社労士が顧客から委託を受けて労働・社会保険関連手続きや助成金申請を行うことを指します。

提出代行と事務代理は似て非なるものであり、具体的には業務に係る社労士の「権限」が異なります。提出代行と事務代理の概要については、社会保険労務士法に定められていますが、ここではざっくりと説明しておきます。

事業主に代わって行う「提出代行」

「提出代行」とは、本来、提出義務者である事業主等が行うべき申請書等の提出手続を、本人に代わって社労士が行うことです。「提出代行」の場合、申請書類を作成すること、事業所で作成された書類については記入漏れや添付書類漏れがないかを確認することに加え、最終的に必要書類を整えて行政機関に提出することまでが業務範囲となります。

つまり、行政に申請書類が受理される前までの手続きの代行を意味します。

あらゆる権限が付与される「事務代理」

一方で、「事務代理」では、前項で解説した「提出代行」の業務の他、実際に行政で申請に係る確認が行われた後の質問や調査への対応、さらに申請が審査を通らなかった際の主張や陳述等の行為を事業主に代わって行うことができます。事務代理の場合、社労士に対して提出代行以上の権限が付与されることになる、ということです。

通常、事業主が社労士に手続代行を依頼する場合、「事務代理」を想定しているケースがほとんどです。労働・社会保険関連諸手続きについては、専門家に一切を任せたいというニーズが多く、これに対応するために、社労士は責任をもって事務代理に取り組む必要があります。

勤務社労士は「事務担当者」

ここで解説した「提出代行」と「事務代理」は、開業社労士や社労士法人に限って行うことができます。企業の会社員として雇用され、会社内で社労士業務を行う勤務社労士の場合、「事務担当者」の表記を用いることになります。

社労士なら知っている!提出代行実務の必須アイテム

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晴れて社労士試験に合格し、開業社労士として実務家デビューを果たした際、まず揃えるべきは代行印、代行証明書です。顧客を獲得する以前に印を作成し、証明書のひな形を準備しておくと、いざ業務委託を受けた際に慌てずに済みます。

社労士必携① 提出代行印

提出代行を行う際、社労士は「提出代行者 ○○(氏名)」の印を申請書に押印します。この印は都道府県会の協同組合で購入できますが、作成に時間がかかるため、開業したら早めに注文しておきましょう。

記載内容は、「日付」「社会保険労務士(東京都社会保険労務士会)」「提出代行者」「氏名」「事務所電話番号」となります。併せて、同じ形の「事務代理印」もオーダーしておくと良いでしょう。

なお、この提出代行の表記ですが、申請書への手書きは原則認められないようですので、必ず印を用意しておきます。

社労士必携② 提出代行証明書

社会保険労務士が事業主に代わり、提出代行や事務代理によって届出するすべての手続きには、社会保険労務士が事業主の提出代行者であることを証明する「提出代行証明書」を添付する必要があります。

フォーマットは全国社会保険労務士会連合会のホームページにありますので、そちらから入手します。作成時には、提出代行や事務代理を行う事業所の所在地や名称、事業主氏名を記載の上、事業主に押印をもらいましょう。

まとめ

  • 社労士が顧客に代わり各種の申請を行う際には「提出代行」と「事務代理」の別を明確にして手続きを進めなければなりません
  • 「提出代行」と「事務代理」は、それぞれに業務を行う社労士の権限が異なるため、正確にしておく必要があります
  • 「提出代行」では、申請書類の作成、不備や添付書類の確認、行政窓口への提出までを担います
  • 「事務代理」では、提出代行業務に加え、申請が行政に受理された後の対応一切まで社労士が行うことができます
  • 提出代行や事務代理を行うにあたり、専用の提出代行印、事務代理印、提出代行証明書等が必要です
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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