社労士の実務「離職票」 社労士に委託するメリットとは?

荷物を持って並んでる人の絵

一般的に、多くの資格で「試験内容と実務は別物」と言われますが、社労士試験もまさにこうした特徴を持つ試験のひとつです。

例えば、「離職票」については社労士の実務上、その役割や発行手続きに関わる知識を兼ね備えている必要がありますが、社労士試験の段階では具体的な実務を問われることはありません。しかしながら、実務を把握していることが、試験対策に活かされるケースは大いにあるのではないでしょうか。

このページでは、社労士実務の先取りとして「離職票」に関わる理解を深めておくことにしましょう。

目次

そもそも「離職票」とは?発行は義務なの?

正社員として勤務し、退職された経験のある方なら、実際に離職票の発行を受けたことがあると思います。

離職票とは雇用保険被保険者離職票のことで、退職時に会社から発行される書類のひとつです。離職票には、前勤務先名、雇用保険被保険者資格取得年月日と離職年月日、被保険者種類、過去1年間の勤怠と給与額、退職の理由などが記されています。

原則は退職者の希望に応じて発行するものとされていますが、実務上、雇用保険被保険者であった退職する従業員すべてに対して発行する取り扱いがほとんどです。

離職票が必要なのは「基本手当受給」のため

離職票は、求職期間中に雇用保険から基本手当(失業給付)を受給するために必要な書類です。ハローワークでは、提出された離職票の内容に応じて、基本手当の額や支給期間を決定します。

ただし、転職先が離職の事実を確認するために離職票の提出を求めることもあるため、必ずしも基本手当の受給のためだけに必要とは言い切れません。よって、退職時に既に転職先が決まっている人、しばらく就業予定のない人に対しても、会社は離職票を発行できるよう手続きを進めておくとスムーズです。

離職票発行の手続き

離職票発行の手続きは、会社がハローワークあてに行います。離職票発行手続きは、被保険資格の喪失手続きと併せて行うのが通常です。

離職票発行に必要な内容を記載した離職証明書を会社がハローワークに提出すると、ハローワークから離職票が発行され、会社に送付されます。会社は、受け取った離職票に必要事項を追記した後に、郵送等で退職者に交付します。退職者は交付された離職票を持って、会社を経由せずに直接基本手当の受給手続きをします。

会社は退職者への離職票交付は、「退職の日から10日」が目安とされており、数ある事務手続きの中でも特に迅速な手続きが求められます。

離職票関連業務を社労士に委託するメリット

自転車に乗ってる人たちの絵

このように、離職票に関わる一連の業務は会社がハローワークに直接行うことで、わざわざ社労士に委託せずとも完了します。しかしながら、離職票発行を含む従業員の退職手続き業務を、企業に代わって社労士が行うケースは少なくありません。ここでは、企業が報酬を支払ってまで社労士に業務委託するメリットに注目しましょう。

複雑な離職票発行手続きを確実に進められる

離職票発行に関わらず、企業が労働・社会保険関連諸手続きの一切を、あえて報酬を支払ってまで社労士に委託する背景には、「手続きの膨大さ、複雑さ」があります。

例えば、従業員の退職を例にとってみても、離職票発行に雇用保険・社会保険の資格喪失手続きと、会社が行うべき処理は多岐に渡ります。加えて、退職者があれば同時期に従業員の受け入れがあり、そこでも入社に伴う事務手続きが生じます。

また、通常、従業員の入退社は時期が重なることも珍しくなく、入退社の件数が多ければ多いほど担当者への業務負荷がかかることになります。もちろん、膨大かつ複雑な諸手続きを遂行する中で万が一手続き漏れが生じれば、必ず後になって問題化します。

この点、入退社関連の諸手続きを専門家である社労士に委託することで、確実な業務遂行と現場の業務負担軽減が可能となるのです。

社労士法第17条による付記により、添付書類を省略できる

離職票発行手続きに必要な離職証明書を提出する際、通常であれば確認・審査書類として労働者名簿、出勤簿、賃金台帳の添付が必要です。ところが、社労士が手続きを行う場合、社労士法第17条による付記印を押して提出することにより、これらの添付が不要となります。つまり付記印とは、「社労士が届出に必要な添付書類の内容を確認・審査済みである」旨の証明となるのです。

もっとも企業においては、もちろん労働者名簿、出勤簿、賃金台帳を適正な形で作成しておかなければならないことに変わりはありません。しかしながら、申請の都度、書類の添付をする必要がなくなるため、事務手続きを簡素化することが可能となります。こうした点も、社労士に離職票関連業務の代行を依頼するメリットの一つと言えるでしょう。

離職票が遅い、届かない際の対応を社労士に依頼できる

離職票については、しばしば「手元に届くまでの時間」が問題視されます。退職者にとっては、基本手当受給手続きを行うために一日も早く手元に届いて欲しい書類ですが、一方で行政の都合により、申請時期によっては遅れがちになるケースも珍しくありません。

具体的には、年末や年度末など退職者が多く生じる時期には、申請件数に行政の事務処理能力が追い付かないことがあります。離職票がなかなか届かない状況があれば、会社は退職者から「離職票が届かない、遅い」といった指摘を受けることがありますが、こうした問い合わせ対応も含めて社労士に委託することで、現場の負担を軽減させることが可能になります。

また、退職者にとっては、会社担当者よりも社労士に説明されることでより納得感を得ることができる、といった効果もあるようです。

社労士に離職票関連業務を委託する際の料金は?

豚の貯金箱

離職票関連業務に限ったことではありませんが、社労士報酬はすべて一律に決まっているわけではなく、個々の社労士が独自に設定できます。

離職票関連業務は、通常、雇用保険被保険者資格喪失手続きとセットで委託されることが多く、退職者一人あたり10,000円~15,000円ほどが相場のようです。ただし、顧問契約を締結している場合は顧問業務に含まれるため、入退社がたびたび生じる現場では、単発での依頼よりも顧問契約を締結する方が社労士報酬を抑えられることがあります。

社労士として実務に携わるようになったら、業務内容はもちろん、報酬面も含めて、依頼主にとって魅力的な提案ができるよう心がける姿勢が大切です。

まとめ

  • 離職票は、雇用保険被保険者が退職した後、基本手当(失業給付)の受給手続きを行う際に必要な書類です。
  • 離職票は、必要事項を記載した離職証明書を提出することで交付されます。
  • 退職者への離職票交付は「退職の日から10日」が目安であり、会社には特に迅速な対応が求められます。
  • 離職票発行の複雑な手続きを、正確かつ早期に行うためには、社労士への業務委託が有効です。
  • 離職票関連業務の社労士報酬は、通常、雇用保険被保険者資格喪失手続きと併せて、退職者一人あたり1万~1万5000円が相場となっています。
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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