社労士試験の「白書」対策は、意外な頻出テーマ「歴史」がカギ

「白書」対策

社労士試験の白書対策に、お悩みではないでしょうか?「白書」は一般常識科目の分野のひとつに過ぎませんが、白書自体のボリュームが膨大なため、受験生であればまず「対策にどう取り組むか」がネックとなりがちです。

取り組みの方針が固まれば、白書自体の把握はさほど難しいものではありません。社労士受験生の中には「白書はどこが狙われるか分からないから、対策しなくていいや」という方もいるようですが、他科目同様、ポイントをおさえた取り組みでしっかり得点に結びつけることができます。

このページでは、社労士試験の出題範囲全体とのバランスを取りながら、適切な力配分で白書対策に取り組むための方法を解説します。

目次

社労士試験の白書対策 攻略のポイントは?

さて、冒頭で触れたとおり、白書対策には効果的な「方法」があります。その方法の原則は、「膨大な白書の中から、出題傾向に則した資料の概要を把握すること」であり、出題数からいえばあまり時間を費やし過ぎるのは得策ではありません。

社労士試験の白書対策で意識すべき「現在」「過去」「概要」のキーワードを元に、効果的な取り組みを考えてみましょう。

「現在」については試験年度の「前年度版白書」をチェック

社労士試験の一般常識では、毎年、労働経済白書と厚生労働白書から、各種テーマについて「現在(ここ数年)」の動向に関わる出題があります。これらの白書は毎年公開されるものですが、社労士試験の範囲となる最新の白書は「前年度版の白書」です。

頻出のテーマとして、労働経済白書からは「失業率」「有効求人倍率」「障害者雇用率」「正規・非正規の動向」「賃金」、厚生労働白書からは「医療」「介護」「年金」「少子高齢化」「財政」が挙げられます。これらのテーマは、近年、択一式だけでなく選択式でも狙われるため、しっかりおさえておきましょう。

「過去」の理解は「平成23年版厚生労働白書」でスムーズに

社労士の試験範囲のうち、意外な頻出テーマといえば「社会保険制度の歴史」でしょう。社会保険制度の変遷については、とにかく把握すべき事項が複雑かつ膨大なため、社労士受験生の大半が苦手意識を抱く分野とも言えます。

ところが、「社会保険制度の歴史」のような難解テーマの学習にも、厚生労働白書の活用が有効です。「平成23年度版厚生労働白書」には、国民皆保険・皆年金制度がスタートした昭和36年4月から50周年となる平成23年に公表された厚生労働白書に、概要をまとめた図が掲載されています。

社労士受験生であれば、この資料を活用することで必要な時系列を正しくおさえることが可能です。ただし、資料の内容が膨大であることに変わりありませんので、白書対策講座と並行して活用し、ポイントをピックアップしながら学習を進めるのが得策と言えます。

参考:厚生労働省「平成23年度版厚生労働白書」

社労士試験の白書対策で重要なのは「概要・要約の把握」

社労士試験の白書対策に取り組む上では、他の科目以上に「ポイントをおさえた理解」が求められます。社労士試験対策でおさえるべき白書は、厚生労働白書で約500ページ、労働経済白書で約400ページと膨大ですが、これらの資料のすべてを読み込む必要はありません。

白書からの出題があくまで社労士試験範囲のごく一部であることを鑑みれば、対策テキストに記載の内容、厚生労働省HPに掲載されている概要版・要約版からの把握で対応可能です。社労士試験対策上、白書対策で時間を費やすよりも、主要科目の基礎徹底に努めるのが得策です。

社労士試験「白書」からの出題実績

「白書」からの出題実績

社労士試験における白書分野からの出題数は少ないものの、例年、選択式・択一式で確実に狙われています。あまり神経質になり過ぎることはありませんが、前述の通り、大まかな動向や概要については正しくおさえて試験に臨む必要があります。

社会保険制度改正の歴史に関わる出題

社会保険制度改正の歴史について、時系列で並べ替える問題が出題されています。下記は、正答の肢です。

<2019年 社一 問10 A>

【社会保険制度の改正に関する次の(1)から(6)の記述について、改正の施行日が古いものからの順序で記載されているもの】
(1) 被用者年金一元化により、所定の要件に該当する国家公務員共済組合の組合員が厚生年金保険の被保険者資格を取得した。
(2) 健康保険の傷病手当金の1日当たりの金額が、原則、支給開始日の属する月以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で除した額に3分の2を乗じた額となった。
(3) 国民年金第3号被保険者が、個人型確定拠出年金に加入できるようになった。
(4) 基礎年金番号を記載して行っていた老齢基礎年金の年金請求について、個人番号(マイナンバー)でも行えるようになった。
(5) 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上から10年以上に短縮された。
(6) 国民年金第1号被保険者の産前産後期間の国民年金保険料が免除されるようになった。

(1)→(2)→(3)→(5)→(4)→(6)

解答:○

前年度の厚生労働白書からの出題

<2019年 社一 問10 D>

【本問は、平成29年版厚生労働白書を参照している】
年金積立金の運用状況については、年金積立金管理運用独立行政法人が半期に1度公表を行っている。厚生労働大臣が年金積立金の自主運用を開始した平成11年度から平成27年度までの運用実績の累積収益額は、約56.5兆円となっており、収益率でみると名目賃金上昇率を平均で約3.1%下回っている。

解答:×

正しくは、
「半期に」ではなく「四半期に」
「平成11年度から」ではなく「平成13年度から」
「下回っている」ではなく「上回っている」

となります。「運用実績の累積収益額」「名目賃金上昇率」等、受験生が苦手に感じがちなキーワードが登場すると、ただでさえ本試験で緊張する中、より一層頭が混乱しがちになりますが、冷静に一つひとつのキーワードの正誤を確認していく必要があります。

まとめ

  • 社労士試験の白書対策をネックに感じる受験生は少なくありませんが、ポイントを踏まえた取り組みによって得点に結びつけることができます
  • 社労士試験の白書対策の原則は「膨大な白書の中から、出題傾向に則した資料の概要を把握すること」であり、「現在」「過去」「概要」のキーワードを元に取り組む必要があります
  • 「現在」については各種統計の動向が問われ、労働経済白書からは「失業率」「有効求人倍率」「障害者雇用率」「正規・非正規の動向」「賃金」、厚生労働白書からは「医療」「介護」「年金」「少子高齢化」「財政」の各キーワードが頻繁に狙われます
  • 「過去」については社会保険制度の歴史についての出題が主で、「平成23年度版厚生労働白書」が試験対策上有効な資料となります
  • 膨大な白書対策に取り組む上では、資料の内容一つひとつを細かく読み込むのではなく、他科目以上に「概要・要約の把握」が求められます
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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