社労士が取り組む成年後見制度 業務内容と成年後見人になるには?を解説

社労士が取り組む成年後見制度 業務内容と成年後見人になるには?を解説

社労士が取り組む成年後見制度 業務内容と成年後見人になるには?を解説

少子高齢化を背景に、「成年後見制度」の知名度は高まりつつあります。皆さんも、どこかで「成年後見人」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?

成年後見制度とは、お年寄りや障がい者など判断能力が喪失状態にある又は不十分な人に対する保護・支援制度のこと。被後見人の意思を尊重し、財産管理や必要な代理行為に着手できる成年後見人の役割を、親族が担うケースの他、第三者である弁護士や司法書士、社会福祉士、税理士等が専門職後見人として就任する例もあります。

もちろん、年金や介護保険の専門家である社労士もまた、成年後見人となり得る専門職のひとつです。

目次

専門職である社労士が活躍できる「成年後見制度」とは?

社労士というと、労務顧問や給与計算といった「企業相手の仕事」をイメージする方がほとんどだと思いますが、個人向け業務をメインとする実務家も少なくありません。成年後見業もまさに個人向け業務のひとつであり、高齢化社会の到来の中においては、社労士業界として集中的に取り組むべき分野とさえ言われています。

ここでは、「成年後見制度」と言われてもいまいちピンとこない方に向け、成年後見人の役割を中心に解説しましょう。

成年後見人の役割①「財産管理」

成年後見人は、被後見人に代わって財産の管理を行います。「財産管理」の範囲は、日常生活に必要な印鑑・預貯金通帳の管理、公共料金の支払い、給与や年金の受取から、不動産の管理、遺産相続の手続きといった重要財産の取扱いに至るまで多岐に渡ります。

冒頭で触れたとおり、成年後見人には親族が就任することが多いですが、管理すべき財産が高額であったり、財産の状況が複雑であったりする場合には、専門職後見人として専門家が選任される傾向にあります。

成年後見人の役割②「身上監護」

前述の「財産管理」と並んで、成年後見人の主要な役割とされているのが「身上監護」です。

「身上監護」と文字で書くと難しく感じられますが、被後見人が健康かつ安全に生活できるように必要な契約等を行うことを指します。具体的には、家賃の支払いや契約更新、介護施設や障害福祉サービスの利用手続や支払い等があります。

また、成年後見人が定期的に被後見人の元を訪問して生活の状況を確認することも身上監護の一環ですが、こうしたケアに介護や看護といった労働までは含まれません。

成年後見人制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」に分かれる

成年後見制度は、判断能力が低下してしまった場合に利用する「法定後見制度」と、あらかじめ誰にどのような援助をしてもらいたいかを決めておき、必要になった段階から後見を受けられるようにしておく「任意後見制度」の2つに分けられます。

法定後見制度は、本人の判断能力に応じて成年後見人、補佐人、補助人による支援が受けられるようになり、成年後見人が就く事例としては、被後見人が植物状態や重度の認知症となったケースが想定されます。

専門職後見人制度とは?

「成年後見人には専門家でないと就任できない」と誤解されるケースは少なくありませんが、実際のところ、成年後見人となるために特別な資格は必要ありません。

民法第847条に挙げられる「後見人の欠格事由」である、

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
  • 破産者
  • 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
  • 行方の知れない者

に該当しない者であれば、親族であるか否かを問わず幅広く対象となり、本人や推定相続人の意向を踏まえ、最終的には家庭裁判所によって決定されます。

参考:電子政府の総合窓口e-Gov「民法」

冒頭でも触れたとおり、親族以外の後見人として「専門職後見人」があり、社労士の他、司法書士や弁護士、社会福祉士、行政書士等が該当します。

専門職後見人に依頼するメリットには、「それぞれの専門分野を業務に活かすことができる」「高い職業倫理の元、不正行為や不適切な行為をするおそれが少ない」等が挙げられます。

社労士が成年後見制度に携わるメリット

社労士が成年後見制度に携わるメリット

成年後見人の候補といえば「被後見人の近くに住む親族」が相応しいとされていますが、高齢化により単身高齢者世帯が増加傾向にある中においては、専門職後見人の選任比率が高まりつつあります。

社労士が専門職後見人となる例は、弁護士や司法書士の後見人就任数と比較すれば、その数は圧倒的に劣ります。しかしながら、ひと口に「専門職」といっても各士業で専門分野が異なる以上、強みはそれぞれです。

ここでは、社労士の専門性を踏まえた上で、成年後見人となるべき理由に目を向けてみましょう。

年金・健康保険・介護保険の専門知識を活かせる

社労士は、文字通り「社会保険」の専門家です。各種年金制度や健康保険制度、介護保険制度に精通し、社会福祉の観点から被後見人の生活を支援することができます。

成年後見制度というと、「財産管理」の業務が頭に浮かぶ方も多いと思いますが、実際には介護保険関連手続き(施設入所等)の必要性から制度利用の申し立てが行われるケースも少なくありません。また、被後見人の生活の糧となる年金に関わる知識は、後見人として必ず持ち合わせておくべきと言えます。

このように、被後見人の実生活に深くかかわる年金・医療・介護といった社会保障制度に精通する社労士は、成年後見業務を担うのに適切と考えられています。

身近な法律家としての立ち位置

専門職後見人に選任される専門家といえば、司法書士に次いで弁護士の割合が高くなっています。しかしながら、一般の方にとって、弁護士等への相談はなかなか高いハードルに感じられることもあるようです。

その点、社労士は数ある士業の中でも比較的身近な存在と言えます。また、年金や介護保険等の日常の相談から、成年後見制度の話につなげられるケースは少なくありません。社労士の立ち位置や専門分野を活かすことで、成年後見業務に無理なく参入していける可能性は大いにあります。

社労士が成年後見人となる際の費用

社労士が成年後見人となる際の費用

成年後見人の選任に伴う費用は下記の通りです。

  1. 収入印紙
  2. 切手代
  3. 登記手数料
  4. 鑑定費用
  5. 成年後見人となった人への報酬

①~③の申し立て手続きにかかる費用がだいたい1万円ほどで、被後見人本人の精神状態を鑑定する場合には④として5~10万円かかります。その他、任意後見の場合、公正証書作成費用も別途見積もる必要があります。

そして、後見人となる社労士等に支払われる報酬(⑤)は月額2万円~3万円であり、家庭裁判所が本人の財産、後見人の業務内容から判断し決定されます。決定した報酬は、被後見人の財産から支払われます。

社労士による成年後見人制度 今後の可能性

社労士による成年後見人制度 今後の可能性

出典:厚生労働省「成年後見制度の現状」

図から分かるように、社労士が成年後見人となるケースは現状、「その他」にまとめられるほどの少ない件数ですが、だからこそ今後伸びしろが十分にある分野と考えることができます。

事実、近年は親族以外の第三者が成年後見人に選任される事例が全体の7割超を占め、割合は着実に高くなっています。今後は個人への携わり方次第で、成年後見分野での社労士による業務拡大が見込まれることは言うまでもありません。

まとめ

  • 成年後見制度とは、判断能力が十分ではないお年寄りや障がい者などを保護・支援する目的で、後見人が財産管理や必要な代理行為に携わる制度のことです。
  • 社労士等の専門家は「専門職後見人」として、専門分野を活かしながら後見業務に携わることができます。
  • 欠格事項に該当しない限り、誰でも成年後見人になれますが、近年では親族以外の第三者が就任する割合が全体の7割を超え、とりわけ専門職後見人の需要が高まりつつあります。
  • 社労士が後見人となる例は現状多くありませんが、社労士が年金・医療・介護といった社会保障関連の専門家であることを鑑みれば、今後は成年後見業を主軸とした業務展開を十分見込むことができます。
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