社労士補佐人制度とは?労働審判における社労士の役割を考える

社労士補佐人制度とは?労働審判における社労士の役割を考える

補佐人制度とは?

社労士というと、一般的には「労働・社会保険関係諸手続きの代行屋」のイメージを持たれることが多いですが、時代の変遷と共にその役割や業務範囲は着実に拡大しつつあります。

その一例に「社労士補佐人制度」の創設が挙げられ、社労士には複雑化する労働・社会保険制度、労働問題にまつわるトラブルを円滑に解決へと導く役割が期待されています。

2015年度新設の「社労士補佐人制度」について理解を深め、社労士の新たな可能性に目を向けていきましょう。

目次

社労士補佐人制度とは?

「社労士補佐人制度」とは、労働・社会保険制度に関わる国とのトラブル、職場における労使トラブルが訴訟や労働審判に発展した際、弁護士と共に裁判所に出頭し、陳述を行える制度です。

「裁判」というと、通常は弁護士の専門分野とされています。しかしながら、「社労士補佐人制度」の創設により、労働・社会保険制度や労使間の紛争については専門家である社労士が、事件に関わる事実及び法律上の認識を裁判所に申し述べることができるようになりました。

行政訴訟や労働審判における、補佐人としての社労士の役割

社労士が補佐人として行政訴訟や労働審判に携わることは、審理を円滑に進める上で有効となり得ます。労働・社会保険制度や労使トラブルに関わる相談は、弁護士ではなく社労士に寄せられる例も少なくありません。

問題について、話し合い等のあらゆる手を尽くしてもなお解決されない場合に訴訟や労働審判に発展しますが、この時、代理人となる弁護士だけでなく、当初より相談を受け、事の次第を把握する社労士を補佐人として参加させることで、より正しく事実認識が行えるようになります。

また、依頼者にとっては、事態がこじれてから依頼した弁護士だけでなく、当初から関与する社労士も対応にあたることで「安心感が得られる」というメリットも期待できます。

補佐人となる社労士に「特定」付記は不要

社労士補佐人はしばしば特定社労士と混同されますが、両者は全く異なる制度です。特定社労士とは「ADR(裁判外紛争解決手続)代理業務」を行うことができる社労士のことで、制度自体は2007年に創設されました。

労使間紛争について、裁判によらず当事者双方の話し合いに基づき、あっせんや調停、仲裁といった方法で解決を図る際の支援を担います。

一方で、社労士補佐人は、裁判や労働審判に発展した後の支援を行います。裁判外の紛争解決を図る特定社労士とは別の制度であることは、言うまでもありません。よって、社労士補佐人業務は、特定社労士でなくとも依頼を受けた社労士であれば誰でも行うことができます。

【番外編】社労士補佐人制度が盛り込まれた2015年社労士法改正の内容

社労士補佐人制度は、冒頭で触れたとおり、2015年4月に施行された改正社労士法に盛り込まれました。本改正は第8次社労士法改正といわれる大改正であり、社労士補佐人制度の他にも重要な改正がありました。

ここでは、法改正のポイントをひと通り確認しておくことにしましょう。

  1. 個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続における紛争の目的の価額の上限の引上げ(60万円⇒120万円)
  2. 補佐人制度の創設
  3. 社員が1人の社会保険労務士法人設立が可能に ※3.のみ2016年1月1日施行

出典:全国社会保険労務士会連合会「平成27年4月 社会保険労務士法改正」

社労士補佐人制度の実務とは?

社労士補佐人制度の実務とは?

このように、法律上、社労士補佐人制度の創設が実現しましたが、実際に補佐人業務に携わったことのある社労士はごくわずかです。

大阪大学大学院法学研究科が2018年2~3月行った調査では、実に97.8%の社労士が裁判所における補佐人業務について「(今のところ)行っていない」と回答しています。

参考:大阪大学大学院法学研究科「社会保険労務士の業務展開についてのアンケート調査」

このように、実務家にとっても未知の領域といえる社労士補佐人制度の実務を考察しましょう。

社労士が裁判所で出来ることは「陳述」

社労士が補佐人として行えるのは、「意見陳述」です。労働社会保険に関する行政訴訟、個別労働関係紛争に関する民事訴訟といった場面で、事実や法律上の認識を専門家の立場から述べることができます。

とはいえ、社労士補佐人は、必ず訴訟代理人である弁護士と出頭しなければ陳述ができないことから、裁判の場で社労士が代理人弁護士よりも前に出て主張するケースは考えにくいと言えましょう。

また、実際の裁判で行われる口頭弁論は事前に提出される書面に代えられることが多いため、社労士補佐人の実務は「書面準備のサポート」が主となることが想定されます。

「尋問」はできないが、尋問に向けた弁護士のサポートは補佐人である社労士の大切な役割

社労士補佐人制度を考える上で、注意すべきは「尋問ができないこと」です。尋問とは、当事者や証人に対して質問することを指します。社労士補佐人ができることは、あくまで「陳述(主張)」にとどまります。

ただし、直接的な尋問はできないとしても、事実関係や論点をまとめる、最新法令や通達といった情報を提供する等、弁護士が尋問するためのサポートは行うことができます。

このように、社労士補佐人の役割は一見すると限定的と思われがちですが、社労士の専門知識を活かした活躍が期待されます。

まとめ

  • 社労士補佐人制度は、行政訴訟や労働審判の際に社労士が弁護士と共に裁判所に出頭し、陳述を行える制度です
  • 社労士が補佐人として行える業務は「陳述」であり、「尋問」はすることができません
  • 社労士補佐人と特定社労士は混同されがちですが、ADR(裁判外紛争解決手続)代理業務に携わる特定社労士とは全く異なる制度です
  • 社労士としての補佐人業務への関与は未だ多くありませんが、今後の展開が期待されます
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