社労士関連資格「衛生管理者」とは?受験資格、難易度、メリットを解説
更新日:2020年7月28日
社労士受験生であれば、「衛生管理者」資格をご存じの方も多いと思います。労働者の健康障害や労災事故の防止に取り組ませるために一定規模以上の事業場で選任義務のある衛生管理者は、安全衛生法に定められた国家資格です。
社会保険労務士資格と関係性が深く、ダブルライセンスとしての相性も良いことから、社労士受験生であればまずおさえておきたい資格のひとつといえます。
社労士試験の知識が活かせる!「衛生管理者」
衛生管理者は事業場の衛生分野全般の管理者であり、法律上、従業員50人以上規模の事業場で必ず選任しなければならないとされています。そういった意味では、一般企業で常に一定の需要があり、求職者が就転職を有利に進めるために取得するケースは少なくありません。
衛生管理者資格には第一種と第二種があり、前者は全業種で、後者は有害業務と関連の少ない業種においてのみ、業務に従事することができます。
社労士試験と一部重複する、衛生管理者の試験科目とは?
衛生管理者の試験科目は、第一種、第二種ともに「関係法令」「労働衛生」「労働生理」の3科目です。ただし、第一種では有害業務関連の業種にも対応するため、試験範囲に有害業務に係る内容が追加され、第二種よりも一歩踏み込んだ対策が必要になります。
第二種衛生管理者の合格者が第一種を受験する場合、「労働生理」が免除され、「関係法令」「労働衛生」の出題に関しても有害業務に係る内容に限定されます。
ちなみに、社労士試験と衛生管理者試験では、労働基準法や労働安全衛生法の分野で出題が重複します。
「社労士資格」で受験できる?衛生管理者の受験資格
社労士試験同様、衛生管理者試験にも受験資格があり、原則として労働衛生の実務経験が問われます。具体的な経験年数は、大学や短大、高専卒業であれば1年以上、高校卒業であれば3年以上とされる他、10年以上の実務経験があれば学歴関係なく受験可能となっています。
衛生管理者と社労士は一部の試験科目が重複する関連資格同士ですが、社労士試験合格者というだけで衛生管理者試験の受験資格を得ることはできません。ただし、社労士として企業の労働衛生に携わった経験があれば、問題なく受験可能です。
参考:公益財団法人安全衛生技術試験協会「受験資格_衛生管理者(第一種及び第二種)」
社労士試験よりも目指しやすい、衛生管理者の難易度
「仕事に活かせる資格が欲しい」という方にとって、社労士と衛生管理者は比較対象となりやすい資格です。どちらを目指すかを検討する際の判断材料のひとつに「難易度」がありますが、この点については衛生管理者の方が合格を狙いやすいといえます。
なぜかというと、衛生管理者の合格率は第一種で45%前後、第二種で50%前後であり、例年一桁台の合格率となる社労士試験とは状況が異なるからです。
また、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者ともに合格基準は各科目で40%以上、かつ、すべての科目の合計で60%以上という基準点さえ満たすことができれば合格できます。社労士試験のような相対評価ではないため、他の受験生や年度ごとの難易度の状況に左右されることがない点も、合格を目指しやすい理由のひとつと言えます。
社労士とは異なる魅力!衛生管理者資格取得のメリット
社労士試験と衛生管理者試験は、共に事業場の労務管理の実務に携わるための専門資格ですが、その内容や難易度が大きく異なるという点を考慮すると、まさに「似て非なる資格試験」と捉えることができます。
ここでは、衛生管理者資格を取得するメリットについて、社労士資格とのダブルライセンスの可能性も含めて考えてみましょう。
衛生管理者には、常に一定の需要あり
衛生管理者は、業種を問わず従業員数50人以上規模の事業場で必ず選任しなければなりません。適正な選任がない場合、50万円以下の罰金という罰則の対象となるため、企業の求人を見ると常に一定の需要があることが分かります。
つまり、求職者にとっては取得していることで就職活動がぐんと有利になる資格のひとつと言っても過言ではありません。
社労士を志すなら知っておきたい知識を習得できる
社労士試験と衛生管理者試験のダブル受験を考える上では、試験範囲の一部重複がメリットとなります。社労士試験の受験前にまず衛生管理者試験を受験する場合、社労士試験範囲の一部である労働衛生分野に関わる知識を習得・強化することが可能となり、社労士受験の際の強みとなります。
また、先々企業実務に携わる社労士を志す方にとっては、衛生管理者の受験を通して企業の労働衛生管理を学ぶことができるのでお勧めです。
社労士試験の知識を活かして受験できる
また、すでに社労士試験の受験者が目指すダブルライセンスとしても、衛生管理者資格は最適です。衛生管理者試験では、社労士受験時に習得した労働基準法や労働安全衛生法の知識を活かすことができ、「関連法令」分野での得点につなげられます。
ただし、社労士有資格者が衛生管理者試験に挑戦する場合、合格率の違いからつい「衛生管理者は合格が高いし、大丈夫だろう」と対策の手を緩めがちになりますが、油断して不合格となるケースは珍しくありません。社労士試験後の受験でも、最善の対策を講じて衛生管理者試験に臨むべきです。
社労士受験生も受験しやすいスケジュール
衛生管理者試験は、全国7ブロックの安全衛生技術センターで、毎月1~3回程度行われています。年に一度の社労士試験とは異なり、比較的頻繁に行われる試験であるため、社労士試験の受験生でも無理なく挑戦可能です。
社労士試験前に受験するのか、それとも受験後に合格発表を待つ間に挑戦するのか、もしくは社労士資格取得後に目指すのか、「いつのタイミングで衛生管理者試験を受験するにしてもスケジュールを立てやすい」という点で挑戦をお勧めできます。
社労士試験と衛生管理者試験、それぞれ科目免除対象になる?
よく、「社労士試験と衛生管理者試験は一部試験科目が重複しているから、相互に科目免除の対象になるのでは」と考える方も少なくありませんが、それぞれの試験において科目免除の取り扱いはありません。
すでにどちらかの資格を取得している場合でも、労働基準法と労働安全衛生法については、改めて試験に合った対策が必要となります。
まとめ
- 衛生管理者とは、事業場の衛生分野全般の管理者であり、具体的には労働条件や労働環境の改善、疾病の予防処置等を担当します
- 衛生管理者には第一種と第二種があり、それぞれ実務に従事することのできる対象業種が異なります
- 衛生管理者試験は、「合格率(第一種で45%前後、第二種で50%前後)」と「合格基準(各科目で40%以上かつすべての科目の合計で60%以上の絶対評価)」の観点から、社労士試験よりも合格を目指しやすいと考えることができます
- 社労士試験と衛生管理者試験は、労働基準法と労働安全衛生法の分野で出題が重複しますが、相互の資格で試験科目の免除措置は講じられません
- 社労士試験と衛生管理者試験のダブルライセンスを目指すメリットには、「それぞれの試験の対策を活かせること」や「スケジュール的に両立しやすいこと」が挙げられます
小野賢一(おの けんいち)
「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
●フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師