社労士で転職!未経験でもいける?年齢制限はある?等の疑問に迫る
更新日:2019年10月17日
「社労士になって希望の転職を実現したい」という方にとって、「資格取得後の転職活動の実際」は最大の関心事でしょう。
せっかく苦労して取得する社労士資格ですから、転職活動時の武器にして、より幅広い転職先候補の中からご自身が活躍できる職場との出会いにつなげられるのが理想です。
実際、合格率一桁の難関国家資格に合格していることは、転職活動時に必ずプラスに評価されることでしょう。
しかしながら、一方で「社労士資格さえ取得すれば、必ず希望通りの仕事ができる」というわけではないことも事実です。
転職活動においては、取得した資格をいかにしてアピールするかが重要であることに加え、相手先がどんな人材を求めているか、社労士資格をどう評価するかによって、採用の可否は変わってくることを忘れてはなりません。
社労士の転職先候補
社労士の資格を転職に活かすには、当然のことながら、どのような転職先で有資格者が求められているかを見極める必要があります。
「適材適所」の言葉通り、社労士資格が活かせる職場でこそ、社労士有資格者が受け入れられます。
もちろん、「難関国家資格に合格していること」自体はどんな企業においても一定の評価を受けますが、資格取得で得た知識を実務に活かしたいなら、ある程度転職先候補の絞り込みが必要です。
ここでは、社労士有資格者の主な転職先として3つのパターンをご紹介します。
その1.社労士事務所
社労士事務所への転職は、社労士試験合格者の転職先の王道と言っても過言ではありません。
実務未経験者が社労士として働くために、もしくは将来的に独立開業を目指している方が実務と併せて社労士事務所の運営を学ぶために、などと目的は様々ですが、試験合格後に社労士事務所への転職を志す方は多いようです。
社労士事務所としても、全く知識のない方よりは、有資格者を求めることが多く、労使のニーズが一致する傾向にあります。
ひと口に社労士事務所といってもその形態は様々で、個人・法人の別、事務所規模によって任せられる仕事は大きく変わります。
できれば事前に事務所見学をさせてもらい、複数の事務所を比較検討することで、転職活動におけるミスマッチを防ぐのが得策です。
その2.民間企業の人事・総務部
社労士の専門分野である人事・労務関連業務は、どんな企業においても必ず生じます。
民間企業においては社内に人事部や総務部を設けて対応するケースが大半であり、社労士や社労士有資格者の募集を見かけることは珍しくありません。
社労士試験合格後の転職活動では、民間企業の人事・総務部も視野に入れたい方もいらっしゃると思いますが、この場合には求められる人材・スキルについて事前確認が必須です。
特に中小企業の中途採用では即戦力が求められる傾向にありますから、社労士の資格以上に経験の有無が問われるケースを多く見かけます。
ただし、比較的規模の大きな企業であれば、自分流のやり方を持たない実務未経験者をあえて採用し、自社で人材育成を施す例もありますから、一概に「民間では実務未経験者はNG」とは言えないようです。
その3.他士業事務所
弁護士や税理士といった他士業は、一見すると社労士業とは何ら関連性が無いようにも思われます。
ところが、社労士の転職先候補として「他士業事務所」は現実的な選択肢となるケースも少なくありません。
「社労士なのになぜ他士業事務所に?」と思われるかもしれませんが、専門分野の異なる士業が連携することで業務範囲の拡大を図ることが可能となります。
特に税理士事務所では、事務所内で社労士を開業させて、税務顧問と併せて労務顧問、労働・社会保険関係の手続き顧問の受注も可能にしている例を多く見かけます。
ただし、他士業事務所に社労士として入所する場合、実務に精通していることは必須の要件となります。
番外編 独立開業
さて、社労士として転職活動をしたいが、希望のエリアに思うような転職先が見つからないといったケースもあるでしょう。
「転職活動にはタイミングが肝心」と言われる通り、いつでも理想の職場で募集しているとは限りません。
転職活動が思わしくない場合、社労士有資格者であれば「思い切って独立開業してしまう」という選択肢もあります。業界の右も左も分からない実務未経験者にとってはなかなか高いハードルとなるでしょうが、実際のところ、社労士業界には実務未経験で開業して、第一線で活躍するまでに成長する実務家の存在は決して珍しいものではありません。
実務未経験者であれば、特に開業の予定がなくとも、社労士試験合格後に事務指定講習を修了させておくことをお勧めします。
あらかじめ開業に必要な要件を満たしておくことで、転職活動が上手くいかない、急に思い立って独立に挑戦してみたくなった等の状況や気持ちの変化に応じて、柔軟に独立開業の選択ができるようになります。
社労士で転職、実際どうなの?
ここまで、社労士の転職先候補について解説してまいりました。
晴れて試験に合格した後、どんな職場で、社労士資格で得た知識を仕事に活かせるのかをご確認いただけたのではないでしょうか。
万が一、転職活動が思うように進まなくとも、社労士有資格者には「独立開業」の選択肢もあります。
社労士資格を活用した働き方の可能性を具体的に考えることができれば、これまで以上に試験対策に集中できるようになるでしょう。
さてここからは、社労士資格取得後の転職活動の実際について、ケース別に解説していきます。
参考:転職で年金の空白期間?実は怖い年金の空白。あなたの夫は大丈夫?社労士転職 未経験者の場合
社労士試験の受験生の中には、実務未経験者も多いのではないでしょうか。
試験対策を進める上で、「経験がないこと」で知識の習得に苦労されている方もいらっしゃると思いますが、社労士としての転職活動においてもまた、実務未経験であることがネックとなる可能性は高いと言えます。
社労士試験合格後の転職活動において、実務未経験者が資格を活かす場合、「会社が求める人材を正しく把握すること(経験者の募集か、未経験者でも良いか)」で必然的に転職先候補が絞り込まれます。
そして応募先には、社労士有資格者であることに加えて、これまでのキャリアからアピールできる「何か」を的確に伝えることを心がけることが鉄則となります。
資格頼みの自己PR では、どうしても経験者との比較の中でふるいにかけられてしまう傾向にあるようです。
社労士転職 20代の場合
転職活動において、「若さ」はそれだけで武器となる可能性が高いと考えて良いでしょう。
これは社労士の転職に限ったことではありませんが、思考が柔軟かつフットワークが軽く、しかもあらゆる可能性で伸びしろの感じられる20代であれば、実務未経験であっても比較的採用されやすい傾向にあります。
特に、数ある国家資格の中でも社労士は受験生の年齢層が高いため、「若い有資格者」はそれだけで他の応募者との差別化の要素となるのです。
社労士転職 30代の場合
一方で30代以降となると、社労士として転職を目指す上では「経験者」が想定されるケースが多くなります。
30代前半であれば前項の「20代の場合」と同様のメリットを想定できることもありますが、30代半ば~後半となるとある程度の実経験を有する転職者の割合が増えてくるため、実務未経験者であることがハンデとなりやすくなります。
ただし、社労士有資格者であることと併せて、前職で培ったスキルが評価されて、希望の転職先での採用を勝ち取ることもできます。30代半ばであればすでに10年超の社会人経験があるわけですから、「自分には何もない」と考えていても、意図せぬ部分が他との差別化につながることもあります。
転職活動に際しては、まずご自身のスキルの棚卸に取り組むのが得策と言えそうです。
社労士転職 40代以上の場合
どんな業界にも共通して言えることですが、40代以上の転職活動は、若年層と比較すると特に難航するものです。
特に、全くの畑違いの業種から社労士業界に飛び込む場合、社労士資格に加えて、特定分野における専門知識や高度なスキルを携えておかないと、転職活動を円滑に進めることは不可能です。
これまでの職業人生の中で培ってきたことがどのように転職先で活かされるか、この点をいかに上手くPRできるかが重要となります。
ちなみに、社労士試験の合格者の中には50代、60代も珍しくありませんが、多くは定年退職後の独立開業を見据えていますから、「社労士資格で転職」というケースはあまり見受けられません。
毎年、多くのシニアが社労士試験に挑戦する背景には、「実務未経験、高年齢での開業事例が比較的多い」という社労士業界ならではの魅力があるのです。
社労士転職 女性の場合
社労士等の専門的な国家資格を有していることは、女性が転職を目指す上で有利に働いてくれます。
女性の場合、仕事を始めても、結婚や妊娠、出産、育児等のライフイベントによって長期的なキャリア形成が阻まれることが少なくありません。
しかしながら、「社労士」という専門職をキャリアの主軸に置くことで、長い人生の途中で一時的に仕事を諦めたとしても、資格を活かした就職が可能となります。
また、きめ細やか、かつ親身な対応が求められる社労士業では、女性を積極的に採用する事務所は少なくありません。
そういった意味でも、社労士転職において「女性である」という要素はプラスに作用する傾向にあります。
ワークライフバランスの実現の可否は転職先にもよりますが、社労士という職種柄、理解のある職場に恵まれる可能性は高いと考えて良いでしょう。
社労士で転職 成功事例
社労士試験に挑戦する受験生であれば、「転職のために資格取得を目指している」という方も相当数いらっしゃると思います。
しかしながら、いざ社労士資格を取得したとしても、方法を誤れば、転職活動を成功させることはできません。
社労士としての転職を成功させるために、転職活動においてどのようなことを意識すれば良いのでしょうか?
ここでは、社労士試験合格後の転職活動時に意識していただきたいポイントを、実経験の有無別にご紹介します。
参考:社会保険労務士(社労士)の資格は転職に有利? 社労士が活かせる職種と資格の取得方法|みんなの転職体験談① 実経験をアピール
現状、労働・社会保険関連の諸手続きや給与計算業務等、社労士業に関わる経験を有する方が晴れて資格を取得して転職活動に臨む場合、「有資格者であること」と「業務経験者であること」は積極的にアピールするべきです。
社労士有資格者であっても、実務に携わったことがないという例は多々あります。
その点、資格と経験共に備わっていることは社労士の転職活動における大きなアドバンテージとなります。
実経験をアピールする場合、主にどんな業務にどのくらいの期間従事していたのかの説明に加え、幅広い社労士業務の中から今後どのような分野に専門的に携わりたいかを積極的に伝えることで、社労士業への意欲の高さを伝えると良いでしょう。
参考:社労士事務所で働きながら受験勉強!資格なしでもOKの求人はある?|kamakumababy② 社労士試験合格+αをウリに
一方で、社労士資格を取得できても実務に携わったことがない方の場合、転職活動においてはどのような点をアピールするべきかといえば、「社労士業以外の分野での能力・知識」です。
例えば、IT関連のスキルはどんな業種でも共通して求められます。
社労士の実務でも業務ソフトを活用したり、客先で勤怠管理システムや給与計算システムの導入をお手伝いしたりといった機会は多く訪れますから、ITに精通していることは必ず強みとなります。
また、事務方出身者の多い社労士業界において、営業スキルの高い人材は特に重宝される傾向にあります。
このように、社労士の実務とは関係のない能力や知識であっても、少し角度を変えてアピール方法を考えてみることで、ご自身の魅力として転職活動の武器とすることも可能です。転職活動に先立ち、これまでの経験の棚卸をすることで、今一度、自分自身の強みを確認しておくと良いでしょう。
社労士で転職 失敗事例
せっかく社労士の資格を取得して転職活動に臨んでも、残念ながら上手くいかないケースも少なくありません。
これから社労士として転職活動に臨む皆さんが同様の失敗をしないためにはどのような点に気を付ければ良いのかを、具体的な失敗事例を元に考えておきましょう。
① 資格頼みでアピール不足
社労士有資格者の転職における典型的な失敗事例として挙げられるのが、「社労士の資格を有していること」で安心しきってしまい、転職活動に必要な自己PRを十分に考えていないケースです。
「社労士業界への転職なのだから、社労士の資格を持っていればそれで問題ないでしょう」と安易に考えていては、転職活動は上手くいきません。
応募者の中には、社労士有資格者はもちろん、資格に加えて豊富な経験を有している、社労士の分野以外で高いスキルも持っている等、様々な方がいて、それぞれに自身の魅力をアピールします。
このような状況では、ただ「社労士の資格を持っています」だけでは自己PRの材料としては不十分と言わざるを得ません。
転職活動において、社労士有資格者であることはもちろん心強い要素となりますが、その他にもご自身の持ち味や能力を魅力的に伝えられる様な準備は不可欠です。
② 職場とのミスマッチ
社労士資格取得後の転職活動の失敗例として、意外と多いのが「職場が求める要件を満たせない」「職場の雰囲気と合わない」等のミスマッチです。
募集記事からは限られた情報しか得ることができませんが、実際に勤務先に足を運んでみて、面接で話をしてみて感じられること、分かることはたくさんあります。
職場とのミスマッチを防ぐためには、募集の内容をしっかりと読み込んだり、応募する前に事務所見学をさせてもらったりすることで、ある程度の対策を講じることができます。
ただし、勤務先との「合う」「合わない」は働いてみてからでないと分からない部分も多いので、数ある募集の中から、自分に合うものを事前に正しく選別することは困難と言わざるを得ません。
③「社労士で大手に転職」の野望敗れる
受験生の中には、「社労士資格を取得すれば大手企業に転職できるのでは」と思っている方もいらっしゃるでしょうか。
社労士は合格率一桁の難関国家資格ですから、「この資格さえ携えれば、新卒の時には入社できなかった大手への転職も有利になるだろう」と信じてやまない方も少なくないようです。
結論から言えば、社労士の資格を取得しても大手に転職できるとは限りません。
経験さえあれば大手の人事部や総務部で雇用されたり、即戦力の派遣社員として現場の仕事に従事できたりという可能性はありますが、未経験者であれば「有資格者=即採用」には至りにくいでしょう。
もちろん、若手であれば将来性を見込まれて、自社内での人材育成を前提に採用されるケースもありますが、こうした事例はさほど多くない様です。
まとめ
- 社労士の転職先候補には大きく分けて3パターンあり、社労士事務所、民間企業の人事・総務部、他士業事務所が挙げられます
- 社労士有資格者の転職では、年齢が高くなるにつれ経験者が有利となる傾向にあります
- 社労士の実務未経験者であっても、他分野でのスキルや知識を積極的にアピールすることで、社労士業界への転職を成功させることができます
- 社労士有資格者の転職活動には成功、失敗の典型的なパターンがあり、これから資格を活かした転職を目指す方は各事例を踏まえた活動を心がけるのが得策です
小野賢一(おの けんいち)
「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
●フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師