社労士の類似資格「労務管理士」とは?社労士関連資格を知ろう

「労務管理士」とは?

「労務管理士」という資格をご存知でしょうか?社会保険労務士と類似する名称のため、しばしば「どちらも同じような資格なのでは?」と考えられがちですが、両者は試験範囲こそ似通っているものの、全くの別資格であることは言うまでもありません。

社労士と類似する「労務管理士」について理解を深め、ご自身にとってどちらの資格を目指すのが良いのかを考えてみましょう。

目次

社労士と類似!「労務管理士」とは?

社労士と労務管理士は、いずれも企業の労務管理に役立つ知識の証明となる資格ですが、それぞれの内容や取得に向けた道筋は大きく異なります。

社労士の資格や仕事内容については本コラムの別ページでも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。このページでは、労務管理士資格の概要や取得方法についてご紹介しましょう。

「労務管理士」は労務管理関連の専門知識を証明する民間資格

労務管理士とは、労働基準法を始めとする労働関係法令や、職場における労務管理に関わる知識や能力の程度を証明する資格です。資格取得を通じて、法令を正しく理解しているか、労働者の採用から退職までの一連の就業管理を適切に遂行できるかが審査されます。

社労士資格が国家資格であるのに対し、労務管理士は一般社団法人日本人材育成協会及び一般社団法人日本経営管理協会が運営する民間資格です。

2級労務管理士は、「講座受講+認定試験」又は「書類審査+推薦」で取得可能

労務管理士資格は、20歳以上であれば性別や学歴、職業、実務経験等の要件を問わず誰でも受験できます。労務管理士には2級と1級があり、2級の場合、下記の4通りの取得方法があります。

①公開認定講座での「資格取得」
②通信講座による「資格取得」
③書類審査による「資格取得」
④Web資格認定講座による「資格取得」

①②④は講座受講と認定試験、③は書類審査(経歴と課題論文)と労務管理士資格取得者からの推薦によって取得可能です。ただし③の対象者は、労務管理に関する3年以上実務経験を有する者とされ、経歴書または在職中の者は事業所の職務証明が必要となります。

1級労務管理士へのステップアップでさらに専門性を磨く

2級労務管理士合格後は、さらに知識を高めて1級労務管理士を目指すことができます。2級合格後、資格者研修を通じて労務管理講座・基本過程を学び、これを修了すると1級労務管理士の受験資格が付与されます。

この資格をもって1級労務管理士試験に挑戦し、合格後に各分野別研修過程を受講すると晴れて1級労務管理士へとステップアップすることができます。

労務管理士と社労士の類似点・相違点

労務管理士と社労士

労務管理士と社労士それぞれの資格の概要や取得の道のりについてざっくりとご理解いただいたところで、改めて両資格の類似点、相違点をまとめておくことにしましょう。

ご自身にとって社労士と労務管理士のどちらを取得するのが望ましいのか、今後の目標設定を考える上ではそれぞれの資格の特徴を見極めることが大切です。

労務管理士と社労士の類似点「労務管理関連の知識の証明となる」

労務管理士と社労士が類似する点といえば、ずばり「専門分野」です。労務管理士も社労士も、試験合格を目指す上では、労働関連法令に精通し、企業の労務管理に関わる知識を有していることが求められます。

また、資格の専門性を活かして、企業の従業員との労働契約締結から給与計算、健康管理や労務環境の改善に取り組むことができる点でも似通っているといえます。

労務管理士と社労士の相違点「民間資格か国家資格か」

一方で、労務管理士と社労士の最大の相違といえば、民間資格か国家資格かという点でしょう。国家資格である社労士有資格者であれば、専門家として独立開業が可能ですし、労働社会保険関連の手続き代行や労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成といった独占業務にも従事できます。

しかしながら、労務管理士はあくまで民間資格のため、社労士が従事できる労務関連の独占業務には従事できません。もちろん、労務コンサルティング等を生業にした独立開業は不可能ではないでしょうが、やはり社労士と比べれば業務範囲は限られ、俗にいう3号業務のみをビジネス上の強みとする点には心もとなさを感じざるを得ません。

ただし、会社に所属してその職場の労務管理に取り組む上では、労務管理士の知識を活かす場面は幅広く想定されます。また、将来的に社内における労務管理のスペシャリストとして成長できるチャンスにも恵まれるでしょう。

社労士資格との併用がオススメな資格とは?

社労士資格との併用

皆さんの中には、「労務管理士と社労士の類似資格同士を併せ持つことで専門性の高さを証明したい」という方もいるかもしれませんが、結論からいえば、この組み合わせを取得することにあまり意味はありません。基本的に、社労士資格さえ有していれば、労務管理士の知識も十分に網羅していると考えることができるからです。

それでは、社労士資格と併せて取得しておくべき資格には、どのようなものがあるでしょうか?

そもそも「独占業務を有する国家資格である社労士にダブルライセンスは不要」という意見もありますが、競合との差別化を図るためには、前職(異業種)での経験を資格として対外的に証明できる形にしておくことが、社労士業の幅を広げることにつながるものと思われます。

具体的な例として、ITや税務、会計、簿記関連の資格取得が典型的ですが、社労士業との相乗効果を狙う上ではどんな経験やスキルも無駄になることはありません。社労士業務に直接活用できたり、その業界に特化した労務管理の提案につながったりと、異業種での経験を活かせる場面は多岐に渡ります。

まとめ

  • 労務管理士と社労士は類似資格同士ではありますが、両者は似て非なるものです
  • 労務管理士は、企業における労務管理の実務遂行能力を図る民間の評価資格です
  • 労務管理士は2級と1級に分かれており、2級は20歳以上であれば誰でも受験が可能で、「講座受講+認定試験」又は「書類審査+推薦」によって審査されます
  • 1級労務管理士は、2級合格と所定の講座受講で受験資格が付与されます
  • 労務管理士と社労士の最大の相違は「民間資格か国家資格か」という点にあり、独立開業を目指すなら国家資格である社労士の取得が得策です
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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