社労士の社会的地位とは?「役に立たない」「なくなる資格」といわれる一方、確かな必要性も

社労士の社会的地位とは?

「社労士」という資格の取得を目指す受験生同士であっても、その目的は人それぞれでしょう。社労士として活躍したいと思う方がいる一方で、仕事につなげずとも純粋に興味のある分野だから資格を取ってみようと考える方も少なくないと思います。

目的は何にせよ、せっかく苦労して目指す「社労士」。目標とする資格の社会的地位や評価が高いことに越したことはありません。

ところが、インターネットで「社労士 仕事」と検索した際、続いて出てくるキーワード候補に「ない」「なくなる」等のネガティブな言葉が並ぶのを目の当たりにすれば、誰だって「社労士って、どうなんだろう」と思いますよね。

社労士の社会的地位とは、実際のところどうなのでしょうか?

目次

「なくなる職業」なんてもう言わせない!社労士の社会的地位は上昇中

社労士は弁護士や税理士同様、法律を扱う士業に数えられますが、従来、他の士業と比較するとその知名度は高いとは言えず、どちらかと言えばマイナーな資格のように捉えられることは珍しくありませんでした。

ところが、近年では状況が一変し、社労士の社会的地位、知名度共に、ひと昔前と比べると格段に向上しています。なぜ社労士の社会的地位が高まりをみせているのか、そこには「働き方改革」「新型コロナウイルス」の影響があるようです。

社労士の必要性を幅広く知らしめた「働き方改革」

2019年から本格的に始まった働き方改革を追い風に、社労士の活躍の場はぐんと広がっています。長時間労働の是正や労働者の処遇改善への対応で、どこの現場においても新たな人事労務制度設計や周知徹底、就業規則改定などが求められています。こうした働き方改革に起因する業務支援を担うのが、労務管理の専門家である社労士です。

最近では、テレビのコメンテーター等で「社労士」を見かけることが増え、メディアを通じて幅広く「社労士」の存在が知られるようになりました。

国のピンチこそ、社労士の社会的ニーズの高まり時

2020年は、未知の新型コロナウイルス感染症によって、世界中が混乱に陥った一年でした。企業においては営業自粛や短縮等の要請により、かつてないほどの雇用危機に見舞われたケースも少なくありません。

いずれの現場においても雇用維持の重要性が叫ばれる昨今、「ウィズコロナ」「新様式」をキーワードにした企業の雇用維持への取り組みを支えることも、社労士の重要な役割と言えるのではないでしょうか。

実務の現場では、テレワークの導入、休業制度設計・運用、雇用調整助成金の活用等の場面で、多くの社労士が活躍しています。

社労士の社会的地位向上に寄与する「第8次社労士法改正」とは?

第8次社労士法改正

このように、昨今では社会情勢の変化による社労士の社会的地位向上が実現していますが、これまでの社労士の歴史を見るに「社労士法改正」もまた、社労士の社会的地位向上に多大な影響をもたらしていることが分かります。社労士法の改正は、社労士の業務範囲や権限等の拡充に寄与する重要なポイントと言えるでしょう。

第8次社労士法改正で社労士の社会的地位はどう変わった?

直近の社労士法改正といえば、2015年に可決・成立した第8次でしょう。第8次社労士法改正により、かねてより議論されていた3テーマが実現しました。

①個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続における紛争の目的の価額の上限の引上げ(60万円から120万円への引き上げ)
②補佐人制度の創設(事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭・陳述可能に)
③社員が1人の社会保険労務士法人設立が可能に

とりわけ①②の成立は、社労士の業務範囲の拡大、社会的地位の向上に寄与した大きな一歩と捉えることができます。

社労士の社会的地位向上の実現を目指す「政治連盟」の活動

社労士の社会的地位向上の実現には、「政治連盟」の活動が深く関わっています。政治連盟とは、社会保険労務士の社会的・経済的地位の向上と社会保険労務士制度の発展を図るために必要な政治活動を行う団体のことです。社労士の活躍の幅を広げるために不可欠な社労士法改正実現に向け、各政党や国会議員に法改正の必要性を訴え、その実現に向け協力を求めるための活動を行っています。

政治連盟への加入は強制ではなく任意であり、社労士登録をしていてその活動に賛同できる方のみ入会できる仕組みになっています。

社労士業界の今後の展望は明るい!自信を持って目指せる資格です

今後の展望は明るい!

「企業の礎は人」という言葉の通り、労務管理の必要性は人を雇用するどの現場においても生じるものです。そして、近年では特に労務管理重視の風潮が高まってきており、これに伴い、企業の労務管理を専門とする社労士の社会的地位もまた、向上しつつあります。

働き方改革関連法令への対応、さらには新型コロナウイルス感染拡大に端を発した新たなワークスタイル創出の必要性により、社労士需要は今後も継続するものと思われます。

社会的な需要拡大によって社労士が幅広く活躍できる状況は、これから資格を取得したい社労士受験生にとっては追い風です。ぜひ自信を持って、社労士試験に挑戦してください。

まとめ

  • 社労士は、これまで弁護士や税理士といった他士業と比較するとマイナー資格のように捉えられてきましたが、「働き方改革」や新型コロナウイルス感染拡大に起因する「雇用危機」においては格段に活躍の幅を広げ、これにより社労士の社会的地位は向上しつつあります
  • 社労士法の改正は、社労士の社会的地位向上に直接的に関わるポイントです
  • 直近の第8次社労士法改正により、「個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続における紛争の目的の価額の上限の引上げ」「補佐人制度の創設」「社員が1人の社会保険労務士法人」が実現しています
  • 社労士法改正に向けては、各政党や国会議員にその必要性を訴えかける政治連盟の活動が深く関わっています
  • このように、社労士の社会的地位、社会的ニーズが高まりつつあり、こうした状況は今後も継続するものと予測されます
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

社労士コラム一覧へ戻る