社労士試験・労一のカギ「労働者派遣法」!法改正を分かりやすく解説

更新日:2021年8月3日

労働者派遣法は、「派遣労働者の保護」と「労働者派遣事業の適切な運営」を確保することを目的に、労働者派遣に関わる細かなルールを定めた法律です。

2012年に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」から「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」へ名称変更され、その目的が明確化されました。

目次

社労士試験「労働者派遣法」で狙われる法改正点を総チェック

狙われる法改正点を総チェック

近年、労働者派遣法はたびたび法改正が行われていますが、社労士試験対策上、改正項目は頻出のテーマです。

ここでは、労働者派遣法の2012年、2015年、2020年、2021年の改正ポイントについて解説しましょう。それぞれの項目の詳細は、テキスト等でご確認ください。

「労働者派遣法」2012年改正ポイント

2012年10月1日施行の改正法では、冒頭で解説した通り、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」への名称変更が行われてその目的が明確になった他、以下の項目に改正がありました。

  • 日雇派遣の原則禁止
  • グループ企業派遣の8割規制、実績報告の義務化
  • 離職後1年以内の派遣労働者を元の勤務先に派遣することの禁止
  • マージン率等の情報提供、派遣料金の明示
  • 待遇に関わる説明
  • 有期雇用派遣労働者の無期雇用への転換推進措置
  • 派遣先への通知事項に「派遣労働者が無期雇用労働者か否か」を追加
  • 均衡待遇の確保

参考:厚生労働省「労働者派遣法が改正されました」

「労働者派遣法」2015年改正ポイント

2015年10月1日施行の労働者派遣法改正は、派遣実務に携わる上で特に重要です。

特に、許可制への一本化に伴い、これまで届出制の特定派遣事業を行っていた事業者においては順次許可制への切り替えが必要となったことで、社労士需要がぐんと増加しました。許可制の申請時に、キャリア形成支援制度の検討に頭を悩ませた事業者も多かったようです。

  • 労働者派遣事業の許可制への一本化
  • 労働者派遣の期間制限の見直し
  • キャリアアップ措置の実施
  • 均衡待遇の推進
  • 労働契約申込みなし制度
    ※労働契約申込みなし制度は2012年改正時に盛り込まれた項目で、2015年10月1日より施行

参考:厚生労働省「平成27年労働者派遣法の改正について」

「労働者派遣法」2020年改正ポイント

企業規模を問わず2020年4月1日施行の改正法では、働き方改革の要でもある「同一労働同一賃金」が盛り込まれました。派遣事業者に対し、派遣労働者と派遣先企業の通常の労働者との間にある不合理な待遇差の解消に向けた取り組みが義務付けられました。

ちなみに、パート・アルバイトや有期雇用労働者の同一労働同一賃金はパートタイム有期雇用労働法の改正項目です。こちらに関しては大企業で2020年4月1日、中小企業で2021年4月1日施行となっており、中小企業には1年間の猶予期間がありました。(「パートタイム・有期雇用労働法」について詳しくはこちら) 

参考:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」

「労働者派遣法」2021年改正ポイント

2021年には、1月と4月の2段階で改正労働者派遣法が施行されています。それぞれのタイミングでどのような項目が変わったかを確認しましょう。

■ 2021年1月1日施行

  • 派遣労働者の雇入時の説明義務付け
  • 派遣契約書の電子化(電磁的記録)が可能に
  • 派遣先企業の派遣労働者からの苦情対応が義務化
  • 日雇派遣への適切な雇用管理

■ 2021年4月1日施行

  • 雇用安定措置の強化(派遣スタッフの聴取)
  • インターネットによるマージン率等の開示を原則化

参照:厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱等」

「労働者派遣法」の社労士試験対策!コツは「傾向対策を浅く広く」

社労士試験対策

労働者派遣法は、近年の度重なる法改正もあり、社労士試験・労一では特に注力すべき分野です。

しかしながら、あまり比重を置き過ぎると取り組みのバランスが崩れ、他テーマや他科目での思わぬ失点につながる危険性があるため注意が必要です。あくまで、頻出の法改正項目を中心に、労働者派遣法の基本事項を中心に全体を浅く、広く対策できるのが理想です。

「労働者派遣法」の社労士試験出題実績

社労士試験出題実績

労働者派遣法は社労士試験の労一分野のテーマですが、派遣労働者に関わる出題は労働基準法・労働安全衛生法との関連でも見られるため、過去問を中心に出題傾向を対策しておけると安心です。

さっそく、社労士試験の労働者派遣法出題実績を確認しましょう。

派遣労働者の安全衛生の確保(平成30年労働基準法・労働安全衛生法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「派遣労働者に対する労働安全衛生法第59条第1項の規定に基づく雇入れ時の安全衛生教育は、派遣先事業者に実施義務が課せられており、派遣労働者を就業させるに際して就業させるに際して実施すべきものとみなされる。」

回答:×

派遣労働者に対する「雇入れ時の安全衛生教育」は、雇用主である【派遣元】に実施義務が課せられています。労働者派遣法自体は労一の出題分野ですが、派遣労働者関連の出題は労働基準法・労働安全衛生法でもみられる一例です。

派遣先管理台帳の作成(平成20年労一)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「労働者派遣法施行規則が平成20年2月に改正されたことにより、派遣先管理台帳の記載事項に、派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事した事業所の名称及び所在地その他派遣就業をした場所が追加されるとともに、派遣就業をした場所、従事した業務の種類が、派遣先から派遣元事業主に対する通知事項に追加されることとなった。ただし、労働者派遣の期間が1日を超えない場合には、派遣先管理台帳の作成は不要とされている。」

回答:×

従来、労働者派遣が1日を超えない場合は派遣先管理台帳の作成が不要でしたが、2006年4月1日の法改正により、労働者派遣が1日を超えない場合であっても派遣先管理台帳の作成が義務づけられました。

直近の改正項目は社労士試験頻出のため、確実におさえておきましょう。

まとめ

  • 労働者派遣法の正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」であり、「派遣労働者の保護」と「労働者派遣事業の適切な運営」の確保を目的とします
  • 労働者派遣法は、近年では2012年、2015年、2020年、2021年とたびたび改正が行われており、社労士試験・労一の頻出テーマの一つとされています
  • 2020年4月1日施行の改正労働者派遣法には、働き方改革の要である「同一労働同一賃金」が盛り込まれていますが、パート・アルバイトや有期雇用労働者に対する同一労働同一賃金はパートタイム有期雇用労働法が定める改正項目であり、こちらは中小企業に対する1年間の施行猶予期間があります
  • 社労士試験における労働者派遣関連の出題は、労一の他、労働基準法・労働者安全衛生法にもみられます
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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