社労士の働き方とは?キャリア形成や女性社労士の働き方も解説

これから社労士試験に挑戦しようと考えている受験生にとって、資格取得後の世界は未知であり、多くの方が大きな関心を寄せる話題だと思います。大まかに社労士の働き方を理解しているつもりでも、いざご自身が社労士として活躍する姿を、皆さんは具体的に思い描くことができるでしょうか?

社労士としての働き方や資格の活かし方は、実際のところ、皆さんが想像する以上に幅広いと考えて良いでしょう。このページで社労士としての具体的な働き方を知り、資格取得後の道を考えてみましょう。社労士受験に一歩踏み出せない方、いまいちモチベーションの上がらない社労士受験生にとっては、一歩前進するきっかけとなるはずです。

目次

社労士の働き方は大きく分けて3つ!それぞれの年収実態も併せて確認

社労士の働き方は大きく分けて3つ!それぞれの年収実態も併せて確認

社労士の働き方を決める要素として、まず考えるべきは「登録区分」です。既に皆さんご存知の通り、社労士の登録区分は「開業」「勤務等」に大別され、後者は「勤務」「その他」の別によって資格の活かし方が異なります(これらの他、法人社員としての登録区分もありますが、ここでは割愛します)。このうち「その他」については、現役社労士であってもその位置付けをよく理解していないケースがありますが、社労士としてのキャリア構築を考える上では重要な役割を果たすことがあります。

まずは、社労士の働き方を、「開業」「勤務」「その他」の各区分で具体的に見ていきましょう。

社労士の働き方その1.開業

「開業」登録をすると、ご自身で社労士事務所を立ち上げ、ご自身の名前で業として社労士業をこなすことができるようになります。「独立開業して社労士として生きていこう」という方はもちろん、勤務する会社の仕事とは別に、副業・兼業として社労士業に携わる場合にも、開業登録が必要です。 開業社労士としての働き方は人それぞれで、事務所を大きく成長させて何人ものスタッフを雇用している方、ワークライフバランスを重視し自分のペースで仕事をこなす方など、様々なパターンがあります。年収は仕事量に応じたものとなるため、会社勤めと比較すれば不安定感は否めないものの、第一線で活躍することができれば可能性は無限大です。

社労士の働き方その2.勤務

「勤務」登録は、社労士事務所や社労士法人、もしくは民間企業に勤務して社労士業に従事する場合に必要です。勤務社労士は、あくまで勤務先の社労士事務所や社労士法人の業務に従事する社労士であり、勤務先の業務とは別に独自に顧客を獲得して社労士業を行うことはできません。同様に、一般企業等の勤務社労士もまた、取り扱うことができるのは勤務先事業所に生じる手続き等に限られます。

このように、開業と勤務では社労士としての働き方が大きく異なります。勤務社労士には、開業社労士のような働き方の自由度がありません。また、民間企業では一会社員として、社労士業とは関係のない仕事が割り振られることもあります。しかしながら、組織の従業員として、安定した収入を確保しながら社労士業に携わることができるというメリットがあります。

社労士の働き方その3.その他

既にご紹介した通り、「勤務等」の登録区分には「勤務」の他、「その他」という括りもあります。「その他」登録の場合、社労士業に携わることはできず、社労士を名乗ることもできません。もちろん、労務コンサルティング等のいわゆる3号業務であれば、社労士有資格者の立場から知識を活かした業務遂行が可能ですが、こちらは無資格者でも行うことができる業務です。

皆さんの中には、「その他」登録にどのような意味があるのかと疑問に思う方もいるかもしれませんが、長い目で見れば「その他」登録が活かされる可能性は十分にあります。 例えば、「その他」登録をすれば、社労士会の会員として、開業社労士や勤務社労士と同じ様に連合会や社労士会主催の研修等に参加できるようになります。「その他」登録をすることで、社労士業界最先端の情報を得られる他、他の社労士とのネットワークを形成することができるようになり、十分に準備してから開業という選択が生まれます。社労士資格は一度取得すれば生涯有効ですから、資格を活かすタイミングや方法にも様々な可能性があります。

社労士としてのキャリアプランとは?

社労士としてのキャリアプランとは

社労士の働き方は登録区分ごとに違いがありますが、社労士資格を主軸としたキャリア形成もまた、人それぞれ異なる可能性があります。ひと口に「開業」といっても、どんな仕事をメインにするか、どの分野を専門にするかによって、社労士の働き方は様々です。

皆さんは、社労士試験に合格したら、どのように資格を活かしたいと考えているでしょうか?現状、具体的なプランは描けていないという受験生であれば、まずは社労士としてどんな活躍の場があるかを知り、ご自身の得意なこと、理想に合った道に目を向けてみましょう。

企業内社労士として手続き業務のプロフェッショナルに

社労士として独立開業は目指さず、あくまで社内でのキャリアアップを目標とする場合、勤務社労士としてスキルアップを目指す道があります。企業内に生じる一般的な手続き業務の他、採用活動や人事研修等に携わる中で、社労士としての成長が期待できます。勤務の場合、「扱える業務に制限がある」というデメリットがあると言われますが、長年同じ会社にいれば多種多様なケースに対応することになりますし、勤務社労士としてあらゆる会社を渡り歩いてスキルアップしていくことも可能です。

もちろん、開業社労士のように「自分の専門を活かした仕事だけ」というわけにはいきません。しかしながら、手続きを中心とした一般的な社労士業務に習熟することを目的にするならば、開業に限らずとも、勤務の働き方で十分キャリアアップを目指すことができるでしょう。

社労士事務所で社労士業からコンサルまでを幅広く手掛ける

社労士として主体的なキャリア構築を目指すなら、社労士事務所を開業してご自身で仕事を獲得し、こなす中で成長していけるのが理想です。開業社労士は、勤務社労士以上に様々な企業の事例に触れることができ、キャリアを高めていくには最適と言えます。また、事業主にとっての初めての雇用から支援に携わる機会もある等、やりがいもひとしおです。

もちろん、事務所方針に応じて、専門分野に特化した働き方を実現することもできます。社労士業といえば一般的には企業相手ですが、年金分野など個人相手の業務を専門とする社労士も少なくありません。社労士資格をどのように活かしたいか、どんな仕事がしたいかを考えながら、理想に合った働き方につなげていけるのが、開業社労士の醍醐味と言えます。

専門性を活かして社労士ライターの道も

社労士の仕事は、手続代行のみにとどまらず、工夫次第でぐんと可能性が広がります。その一例が、「社労士ライター」の道です。労働・社会保険関連法には頻繁に法改正が生じますから、社労士の専門分野に関わる最新情報、企業の担当者が判断に迷う事例等を分かりやすく噛み砕いて発信できる人材には常に高い需要があります。「執筆だけなら、社労士資格を持っていなくても出来るだろう」と思われるかもしれませんが、発信元がその道の専門家であるか否かは、ネット社会において特に重視されるポイントです。

しかしながら、書く仕事には向き不向きがありますから、社労士であれば皆が皆できることかと言えば決してそうではありません。そういう意味で、「書く」ことで他の社労士との差別化を図ることができます。

ここではライター業についてご紹介しましたが、皆さんの得意分野を主軸に、他とは異なる社労士業を展開する道はいくつもあるでしょう。社労士試験合格後には、ぜひ「社労士+α」の可能性に注目されてみてください。

次世代の社労士を育成する社労士講師としてキャリアアップ

社労士資格取得後の活躍の道は、単に実務家として社労士業に携わるだけではありません。例えば、ご自身が試験合格を目指す中で培った知識を活かし、社労士講座の講師としてキャリア形成を図ることができます。昨今、資格取得に目を向ける社会人は増加傾向にあり、社労士試験の受験生は毎年コンスタントに生じています。つまり、常に需要の見込める分野と考えて良いでしょう。

しかしながら、前述のライター業同様、社労士であれば誰でも講師に転身できるかと言えばそうではありません。人前で堂々と話すことができるか、受講生を惹きつけることができるか、合格に必要な知識を的確に伝えられるか等、講師業への適性やスキルが求められます。誰にでもできる仕事ではないからこそ、能力のある人材には引く手あまたであり、ご自身のキャリア形成の選択肢としても有力候補といえるのではないでしょうか。

社労士はキャリアアップを目指す女性の働き方にマッチ

社労士はキャリアアップを目指す女性の働き方にマッチ

既に他のページでも触れましたが、社労士は女性のライフスタイルに比較的馴染みやすい仕事です。なぜかと言えば、社労士資格は一度取得すれば生涯有効であることに加え、「開業」「勤務等」といった多様な登録区分が準備されているからです。女性のキャリア形成は、一般的には結婚や妊娠、出産、育児といったライフイベントに左右されがちであると言われています。しかしながら、社労士という専門資格を有していれば、その時々の状況に応じて職場を変えて、もしくは開業に切り替えてといった柔軟な対応がしやすくなり、継続的な就業が実現します。つまり、特定の職場ありきではなく、能力を主軸としたキャリア形成が可能になるというメリットが期待できます。キャリアアップを目指した働きたい女性にとって、社労士はまさに最適な職業と考えて良いでしょう。

まとめ

  • 社労士は、「開業」「勤務」「その他」の各登録区分に応じた、多様な働き方が実現する仕事です
  • 「その他」登録については、その意義が十分に理解されていないものと思われますが、研修会等への参加が可能となることで、知識を深める、人脈形成ができる等のメリットが期待でき、開業準備に役立てることも可能です
  • 社労士の働き方には、手続き代行等の一般的な社労士業の他、「社労士資格+α」の技能を活かした道もあり、あらゆる可能性があります
  • 社労士という専門資格を有することで、ライフイベントに左右されがちな女性のキャリア形成にも継続的に取り組みやすくなります
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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