取得時効とは?を詳しく解説!|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説
更新日:2019年4月24日

取得時効とは
長い間他人のものを持っていると、自分のものになることを言います。
例)兼子さんは、幼い頃から住んでいる家を父の物と思い、過ごしてきました。月日は流れ、父は無くなり、兼子さんは当然に家を相続したものと思っていました。
しかし、所有権は親戚にあり、兼子さんのものではありませんでした。ただ、長い間自分のものだと思って所有してきたことから、取得時効が成立し、家は兼子さんのものとなりました。
取得時効の要件(1) ~時効の認められる権利~
時効の認められる権利であることが必要です。時効の認められるものは以下の3つがあります。
- 所有権
- 地上権
- 賃借権など
取得時効の要件(2) ~所有の意思~
(1)の要件に加え、以下の状態であることが必要です。
- 所有の意思を持って(=自分の物と思って)
- 他人の物を所有するという状態であること。
他人に物を貸すという間接的な占有でもOKです。
取得時効の要件(3) ~時効期間~
(2)の要件に加え、時効期間を満たしているかどうかもポイントとなります。
- 起算点:所有の意思をもって目的物の所持を始めた時から
- 時効期間:最初から自分のものと思っていた場合→10年
他人のものであることを知っていた場合→20年
取得時効の要件(4) ~中断のないこと~
以下の理由による中断がないことが要件となります。
- 請求
裁判や、裁判以外の請求(催告)が中断事由となり、この場合、6カ月以内に裁判上の請求などの強力な手段をとることが必要となります。
- 差押・仮差押・仮処分
- 承認
- 占有を失った場合
中断された場合、それまでの期間はゼロとなり、中断事由終了のときから再び時効が進行します。
取得時効の要件(5) ~当事者の意思があること~
時効は時間の経過により権利を得たり失ったりする制度です。
一部には「借りたお金は絶対に返すべきだ」という考えの基、このような制度を好まない人も当然にいるはずです。
そこで、時効により利益を得る者の意思を尊重するために設けられたのが、援用・放棄の制度です。
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援用
当事者は、時効の成立を主張しなければ、時効による利益を受けることはできません。 したがって、消滅時効が完成しているのにお金を支払った場合には、返してもらうことはできません。
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放棄
一方、時効による利益を受けることを潔しとしない者は、その利益を放棄することができます。 しかし、時効完成前にあらかじめ時効の利益を放棄することができません。
時効の成立を主張した場合、起算日にさかのぼって権利を取得します。

占有の承継
取得時効を主張する者は、自分の占有期間のみでなく、前者の占有の期間も併せて主張することができます。ただし、前者の占有の瑕疵(=欠点・マイナス点)も引き継ぐこととなります。

取得時効の中断とは
そもそも時効とは、長い間ある状態が続いているので、その状態を尊重するために認められた制度です。
だとすれば、ある状態がなくなったのであれば、その時点までの状態を尊重する必要はありません。
そこで認められるのが「中断」です。

時効と登記
- 時効により不動産の所有権を取得した者は、時効の進行中に元々の所有者から所有権を取得して登記をした者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができます。
- 時効の完成により不動産の所有権を取得した者は、その登記をしなければ、時効完成後にその不動産を元々の所有者から取得して所有権移転登記を備えた第三者に対し、所有権を対抗することはできません。これは判例の考え方に基づいています。

取得時効と時効取得の違い
宅建で出てくるワードとして重要なのが「取得時効」です。取得時効の結果、「時効取得」するという状態が生まれます。

取得時効に関するよくある質問
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取得時効は占有者本人が主張しなくても所有権を取得できるのですか?
例えば、他人の土地と知りながら20年所有の意思を持って占有して、20年後に占有者が所有権の取得を主張しなくても自動的に取得できるのですか? -
実際に取得するためには、占有者は時効完成後に自分のものであると主張する(援用)必要があります。
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『時効が完成すると、その効力は起算日(消滅時効「権利を行使することをし得るとき」・取得時効「占有を開始した時点」) に遡ります。』という文章が理解できません。
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時効の完成と時効の成立は同じ意味になります。
定められた期間が経過して、援用(時効の制度を利用する意思を相手に伝えること)することが必要になります。時効期間の開始時に遡るとは、権利を行使できる時から権利がなかったことになる、つまり簡単言えば最初から借金がないことになる。ということです。 -
「所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地をBが2年間自己占有し、引き続き18年間Cに賃貸していた場合には、Bに所有の意思があっても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。」というのはどういった状況なのでしょうか。
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BがA所有の土地を、自分の土地だと信じて(またはA所有の土地だと知っていても)所有し、その土地をCに賃貸していたような場合です。現実的には、AがBに対して、何らかの文句を言うと思いますが、もし、あった場合には、という規定になります。
取得時効の要件は自主占有ですが、賃借人による代理占有も自主占有に含まれます。Bは、所有の意思をもって占有しており、B自身による占有2年間と賃借人Cによる代理占有18年間を合わせて20年間自主占有していることになるので、Bが自分の土地だと信じている場合、または、A所有の土地だと知っていても時効取得を主張できます。
窪田義幸(くぼた よしゆき)
″栄光を掴む″ための講義、″強い意欲″を持ち続けるための講義をめざします
【出身】愛知県
【経歴】立命館大学文学部卒。宅建・マンション管理士・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士。
【趣味】神社仏閣巡り
【受験歴】1999年宅建試験受験、合格
【講師歴】2001年よりフォーサイト宅建講座講師スタート
【刊行書籍】3ヵ月で宅建 本当は教えたくない究極の宅建合格メソッド (最短合格シリーズ)
【座右の銘】雨垂れ石を穿つ
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