背信的悪意者とは?要件事実や類型、背信的悪意者排除論をわかりやすく解説!|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

背信的悪意者とは?要件事実や類型、背信的悪意者排除論をわかりやすく解説!|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

背信的悪意者とは
目次

背信的悪意者とは

まず、読み方ですが「はいしんてきあくいしゃ」と読みます。どのような意味なのかさっそく見ていきましょう。

背信的悪意者をわかりやすく言うと、「故意に人を苦しめるような悪だくみをしている人」のことを言います。

これは民法第177条 条文に

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

と規定されています。

例)天童さんは、家を購入し、登記や引渡し全般を東宝不動産にお願いしていました。
しかし、東宝不動産は天童さん名義で登記をぜず、その地位を利用して自分の名義で登記をしました。

このように、他人を苦しめるような目的の人を背信的悪意者といいます。

宅建に関しては、二重譲渡の関係や転得者との関連でよく出題があります。 以下実際の過去問を載せますので、論点を詳しく見ていきましょう。

4.Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。

(宅建過去問 平成24年度 問6)

→解説:背信的悪意者からの譲渡人であるJ(転得者)も有効に権利を取得することができます。よって、その者自身が背信的悪意者でない限り第177条にいう「第三者」に該当します。

(最判平8.10.29)本問Hは登記を有していませんので、第三者であるJに対して所有権を主張することはできません。

背信的悪意者とは

背信的悪意者の要件事実

次に、どのような場合に背信的悪意者となるかの基準を見ていきましょう。

1.相手方の悪意 これは言うまでもないことですが、相手がわざと意地悪な気持ちを持って行動していることが第一条件となります。

2.信頼を裏切ることをしたという事実があること ただ悪意を持っているだけでは、特に問題になりませんので、その悪意を持って、何か他人に不利益が被るようなことをしたという事実があることが必要です。

以上2つの要件を満たす者が、背信的悪意者として認められる者となります。

背信的悪意者の要件事実

背信的悪意者排除論とは

「第三者」は悪意でも保護されるが、悪意者がもっぱら真の所有者の権利を害する目的でその登記の欠缺を主張する場合には、そのような主張は信義に反し、認められないとされる

(最判昭和43年8月2日民集22-8-1571)

この判例がいわゆる背信的悪意者排除論の代表格です。

言い換えると、背信的悪意者排除論の論点は、第三者が背信的悪意者として認められるかどうかという点です。判例では、背信的悪意者は第三者として認められるとされています。

例)家が内藤さんから第三者へ売られたことを知っている二河さんが、その家を買った場合、第三者は登記をしないと所有権を二河さんに対抗できません。信義則に反しない限りは、二河さんが知っていて二重譲渡をした場合でも保護されるということになります。


背信的悪意者排除論とは

背信的悪意者の類型

多くの判例分析によれば,
  • (1)登記具備者が譲渡人の家族など近接した関係にある場合(例えば,最判昭和63年12月1日民商100巻6号173頁)
  • (2)登記具備者が未登記の権利取得を承認し,これを前提とする行動をとりながら後に矛盾する主張をする場合(例えば,第1売買への立会人のような者(最判昭和43 ・11・15民集22巻12号2671頁)
  • (3)登記具備者が加害目的や不当な利益取得目的で積極的に二重譲渡を教唆する場合(例えば,最判昭和43年8月2日民集22巻8号1571頁)などの類型がある。

さらに、未登記権利者の占有や代金支払の有無, 未登記の理由,第2譲渡の無償性や対価の著しい低さなどが背信性認定の要素とされている

引用元:松岡久和「177条における第三者(2)ー背信的悪意者」『判例プラクティスⅠ 総則・物権』251頁

背信的悪意者の類型

背信的悪意者に関するよくある質問

不動産が二重売買された場合、相手方の片方が背信的悪意者であれば、背信的悪意者からの転得者は善意悪意に関わらず、保護されるのでしょうか?

177条の第三者は善意悪意を問いませんので、背信的悪意者からの転得者は、その者が「背信的悪意者」でない限り保護されます。

「Aが甲土地をHとIとに対して2重に譲渡した場合においてHが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えた時はIがいわゆる背信的悪意者であってもHはJに対して自らが所有者であることを主張することができない」の問題で、背信的悪意者は無権利でIから買ったので、Jも無権利者でないのですか?

背信的悪意者というのは無権利者ではありません。登記を取得しても自己の権利を対抗できないにすぎません。 "なので、HとJは二重譲渡の関係となります。 だから、Jが登記を取得すれば勝ちとなります。"