同時履行の抗弁権とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

同時履行の抗弁権とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

同時履行の抗弁権とは
目次

同時履行の抗弁権とは

同時履行の抗弁権とは、1つの契約において相手方と自分に違う債務があり、相手が債務を履行してくれるまで、自分も債務を履行しないと主張することができる権利を言います。

例)佐藤さんは鈴木不動産から建売住宅を購入しました。

引渡し予定日を過ぎても、鈴木不動産は家を渡してくれないのにも関わらず、先に支払いを済ませてくれと要求してきます。

このとき、佐藤さんは鈴木不動産に対し「引渡ししてくれるまでお金は支払いませんよ」と主張することができます。

これを「同時履行の抗弁権」と言います。


同時履行の抗弁権

同時履行の抗弁権の成立要件

以下の3つの要件が必要となります。

  1. 同一の契約から発生した異なる2つの債務があること
  2. 両者の債務が弁済期にあること
  3. 相手方が債務の履行をしないまま、履行の請求をしてきたこと

例)友人の岩田さんが、急にお金が必要になったとのことで、1カ月以内にお金を返し、自分の時計も預けるので、5万円貸してくれないかと打診してきました。

相田さんはこの申し出を承知し、お金を貸しました。2カ月後、未だ岩田さんから返済がない状況で、時計を売ってお金をつくるので、先に時計を返してくれないかと連絡がありました。以上の状況の場合、相田さんは岩田さんに「お金を返してくれたら、時計を返すよ」と主張することができます。

このとき、

  1. 時計を預かり、お金を貸した
  2. 借金の申し出から1カ月以上経過している
  3. 返済をしないまま、時計の返却を求めてきた

以上の要件を全て満たしていることが条件となります。


抗弁権の成立要件

同時履行の抗弁権と消滅時効

同時履行の抗弁権がある場合においても、一方が履行期に債務を履行すれば、消滅時効が進行します。言い換えると、お互いに相手への債務を持っていて、約束を果たす期日がきたときに、片方が責任を果たせば、その後、責任を果たしていないもう片方の債務は、時効により権利が消滅していくという内容です。

この場合、債務を果たした方が損をするのではないかと思いがちですが、債務を果たしていないもう片方には、同時履行の抗弁権はなくなるので、債務を果たした方はその後履行請求権を得て、損害賠償請求や契約解除などが可能になります。したがって、債務を果たしたからと言って損をするわけではありません。

抗弁権と消滅時効

同時履行の抗弁権を相殺できない場合

これには、「自働債権」と「受働債権」が関わってきます。

「自働債権」とは

自分から働きかける側、つまり相殺すると言い出した方の債権です。

「受働債権」とは

働きかけを受ける側、つまり相殺すると言われた方の債権です。

同時履行の抗弁権がある場合では、立場により自働債権を相殺できる場合とできない場合とがあります。

例)宇野さんは居酒屋の店長で、常連の榎並さんと仲良くなり、12月1日の仕事後、他のお店に飲みに行きました。

この日店長の宇野さんは持ち合わせがなかったため、常連の榎並さんに5000円を借りました。 この借金は1週間後の12月8日に返す約束をしました。

しかし店員の宇野さんは予期せぬ出費が続き、返済が難しくなりました。12月10日に常連の榎並さんは宇野さんの居酒屋に行く予定で、その際返済を要求するつもりです。

この場合、お金を貸した側である榎並さんは、「飲み代と借金を相殺してくれ」と主張することができます。

つまり、貸金債権を自働債権として相殺することができます。

榎並さんは、すでに5000円を貸していますので、先払いしたことと同じ意味合いになり、相殺が可能となります。

一方、宇野さんは「借りたお金を飲み代に充てておきますので、借金はチャラでいいですか」とは言えません。つまり、代金債務を自働債権として相殺することはできません。

宇野さんが相殺可能となってしまうと、借金を本当に飲み代に充ててくれるかどうかは不確実ですので、榎並さんは何も担保がない状況で不利益を被ります。したがって、借金がある側から相殺の要求はできないのです。

自働債権とは

民法によって同時履行の抗弁権が認められている場合

契約を解除した場合、契約をする前に遡って、原状回復義務が生じます。

契約した双方に同時履行の抗弁権があります。

例)大沼さんは、試着せずにワンピースを買いました。しかし、いざ着てみると、きつくて背中のチャックが閉まりません。レシートには1週間以内であれば返品可能と書いてあるので、返品することにしました。

この場合、大沼さんは「ワンピースを返品するからお金返してね」と主張することができます。またお店側も、「お金を返すので、ワンピースを売った状態で返してね」と主張することができます。

(民法546条、533条)

同時履行の抗弁権

判例によって同時履行の抗弁権が認められている場合

契約の取り消し

契約を取り消した場合、契約をする前に遡って、原状回復義務が生じます。契約した双方に同時履行の抗弁権があります。

例)加納さんは、オークションにてビデオカメラを購入しました。代金は先払いで決済済みです。しかし届いてみると、説明とは異なり、詐欺に遭ったことがわかりました。急いで出品者へ連絡し、この契約を取り消すことにしました。

この場合、加納さんは「ビデオカメラを返すから、ちゃんとお金を返してね」と主張することができます。出品者もまた「お金を返すからビデオカメラは返して」と主張することができます。

請負契約に関して目的物引渡債務と報酬支払債務

目的物の引き渡しを要する請負契約がある場合、目的物引渡債務と報酬支払債務は同時履行の関係にあります。

例)菊池さんは、家を建てることを地元の工務店に依頼しました。この場合、菊池さんは「お金を払うから、家を引き渡してね」と主張でき、工務店も「家を引き渡すから、支払いよろしくね」と主張することができます。

契約の取り消し

弁済と受取証書の交付

債権を弁済した者は、受取証書をもらうことを主張でき、受取証書を交付する者は、弁済を要求することができます。

(大判昭16.3.1)

例)工藤さんは、子どもの学費が足りず、叔父に300万円借金しました。5年後ようやくお金を工面し、借金を弁済できる目処がたちました。この時、工藤さんは「お金を返すから受け取った証拠として証書を頂戴ね」と叔父に主張することができます。

叔父もまた、「証書を渡すから、きちんとお金返してね」と主張することができ、双方は同時履行の関係にあります。

建物買取請求権

建物買取請求権において、建物の代金支払債務と、建物の明け渡し債務は同時履行の関係にあります。

例)小泉さんは地主から土地のみを賃貸しその上に小泉さん名義の家を建てました。しばらくして、地主が土地を明け渡してほしいと言ってきました。この時小泉さんは「土地を明け渡す代わりに建物のお金払って」と主張することができ、地主は「建っている家は買うから出ていってね」と主張することができます。

同時履行の抗弁権と留置権の違いについて

留置権とは

人の物であっても、それに対して債権を持っていれば、引き留めておくことができる権利です。債権が完済されるまで、引き留めておくことができます。「物を返すからお金払ってね」というように双方の債務を引き合いに権利を主張できる点が同時履行の抗弁権と似ています。

第三者との関係性

同時履行の抗弁権は第三者に主張することができませんが、留置権は第三者に主張することができます。同時履行の抗弁権はその契約の債権にのみ効力が生じますが、留置権は対象物に係る債権であれば、効力が制限されないためです。

例)同時履行の抗弁権

佐藤さんはバイクを買取会社に売りに出しましたが、そのバイクは現在友人が使用しています。このとき、買取会社は友人に対し、「佐藤さんにバイクの買取り代金をお支払いしたので、バイクを引き渡してください」とは主張できません。同時履行の抗弁権はあくまでも、佐藤さんと買取会社の契約の上でのみ有効だからです。


例)留置権

清水さんは引っ越しの際、家具を着払いで運送業者に運んでもらいました。着いてから代金を支払う前に、手伝いに来てくれた友人に家具をあげる約束をしました。

その際、運送業者は友人に対し、「その家具の運送費用を払ってもらわない限り、家具は引き渡しません。」と主張することができます。

家具に係る債権であれば、留置権は第三者にも有効です。

同時履行の抗弁権と留置権の違いについて

同時履行の抗弁権に関するよくある質問

Aは実際に土地の引渡し債務の履行(弁済の提供)をして、相手方の同時履行の抗弁権を奪ってからでないと、遅滞の責任を免れることはできないのですか?

同時履行の抗弁権を主張している場合には、履行遅滞になりません。

同時履行の抗弁権とは、契約の当事者が、相手方が債務を提供するまでは自己の債務を履行しない、と主張できる権利をいいます。これは、債務がお互いに対価の関係にあるとき、他方が履行しないのに一方だけを履行させるのは不公平だという考え方にもとづいて認められているものです。

ですので、同時履行の抗弁権がある間は、期限を過ぎて債務を履行しなくても、履行遅滞とはならず、損害賠償義務や相手方の契約解除権は発生しないことになります。

催告の抗弁権・検索の抗弁権については連帯保証人にはないとありますが保証人の権利で相殺の抗弁・時効の援用・同時履行の抗弁権に関しても連帯保証人にはないのでしょうか?

相殺の抗弁・時効の援用・同時履行の抗弁権に関しては、連帯保証人も保証人同様に認められています。

相殺の抗弁は連帯保証人もできるという意味でよいのでしょうか? 保証人の権利の相殺の抗弁、時効の援用、同時履行の抗弁権は保証人、連帯保証人両方の権利ですか?

連帯保証人は、主たる債務者の反対債権で相殺の援用ができます。

また、同時履行の抗弁権や時効の援用も保証・連帯保証ともに共通です。