信義誠実の原則とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

信義誠実の原則とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

信義誠実の原則とは
目次

信義誠実の原則とは

信義誠実の原則は民法第1条2項に定められています。第1条は以下の内容です。

(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

信義誠実の原則は、「信義則」と略されることが多い用語です。

これは権利の行使、義務の履行にあたっては、信義に従い誠実に行わなければならないとするものです。

言い換えると、相手の信頼を裏切ることなく、社会通念上の常識の範囲で物事を行おうね、という基本的なルールです。

英語では、principle of good faithと表記します。principleは、「主義」の他に「原理」「原則」などの意味があり、good-faithは「原則」の他に「誠実」「誠意」「善意」などの意味があります。

信義誠実の原則とは

信義誠実の原則の例

大審院判決大正14年12月3日(「大豆粕深川渡し事件」)

信義誠実の原則の判例として有名なものを例にとり、解説していきます。

「大豆粕深川渡し事件」は大正時代の判例ですので、まずは当時の背景からみていきましょう。

内容としては、AとBが深川で大豆粕の取引をするというものです。

便宜上、Aが売り手、Bが買い手とします。当時の慣習上、「深川渡し」とは、深川にある多数の倉庫のうち売主が指定した倉庫で取引を行うといったものでした。

そしてこの「大豆粕深川渡し事件」の際は、大豆粕の相場が下落しており、買い手のBは内心大豆粕を引き取りたくないと思っていたという背景があります。事件の当日、売り手のAは、倉庫の指定をしませんでした。

相場の下落と倉庫の指定がないという事情が相まって、Bは取引の場へ行きませんでした。一方のAは弁済の提供をしたと主張し、Bに対して損害賠償を請求しました。

AB両者の関係性を見て、Bがどの程度行為をしていれば信義則の原則に反しないかが重要となります。判例は、Bが取引の場所をAに問い合わせるべきだったとして、Aの損害賠償請求を認めました。

Aが取引の具体的な場所をBに伝えていない場合であっても、信義則上BがAに場所を問い合わせるが必要であり、これを怠ったことでAに損害が発生したと解釈されました。


判例に基づいた「信義誠実の原則に反する」の例

判例に基づいた「信義誠実の原則に反する」の例

不動産の共同相続人の1人が、単独相続の登記をして、これに抵当権を設定し、登記を経由しながら、自己の持分を超える部分の抵当権の無効を主張して、その抹消登記を請求することは、信義則に照らし許されない。
(最判昭56.6.16判時二一-三-五五一)

賃借地上の所有建物が火災によって滅失した後、賃貸人の建築禁止通知および土地明渡調停の申立てによって、建物の築造が妨げられたために、賃借人が建物を再築することができないまま賃貸借期間が満了したという場合、賃貸人が地上の建物の不存在を理由として賃借人に借地法四条一項に基づく借地権の更新を請求する権利はないと主張することは、信義則上許されない。
(最判昭52.3.15判時八五二-六〇)

信義誠実の原則に関するよくある質問

保証契約は書面か電磁的記録でしか効力は生じないのではないのですか。

保証人になる契約は、書面で行わないと効力が生じないようになっています。しかし、この問題の場合は、すでに保証契約の上記の規定が前提となった上でのその後の取り扱いになります。

書面で行われている条件はクリアしている上で、

(原則)期間の定めのある建物賃貸借の保証人は、更新後の賃借人の債務についても保証する
例外(1) 反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がある場合
例外(2) 賃貸人の請求が信義則に反する場合

という判決となっています。

「信義則に反する」とはどういう事(意味)なのでしょうか?

信義則とは、相手方から一般的に期待される様な信頼を裏切ることのないように誠実に行動すべきであるとする原則になります。

例えば、賃借人が賃料を払わないにも関わらず、どうせ保証人が払ってくれるだろうという期待のもとに、保証人に何の連絡もせず、賃貸借契約を幾度か更新しつづけ、未払い賃料が過大になってから、保証人に対して「保証人なのだから支払うのが当然だろう」と請求する様な場合です。

この様な場合は、そもそも賃貸人が賃料を払わないのだから契約更新しない、そして早い段階で保証人に請求する等の手段を賃貸人の方でとれたはずです。

それを放置したまま未払い賃料が過大になってから保証人に請求するのは、相手方(保証人)から一般的に期待される様な信頼を裏切る行為と言えます。

この様な場合にまで、賃貸人が保証人に全額を請求するのは信義則に反する(又は権利の濫用)ので、認められないという考え方になります。

手付に関し、残りの手付金を複数回に分けて受領することが、貸付その他信用の供与にあたるという意味がよくわかりません。

宅建業者は勧誘の場面ではできるだけ早く取引を成立させたいと考えがちです。

しかし宅地建物の売買は貴重な財産を対象としており、一般消費者にとって一生に一回しか行うことのない取引です。

宅建業者は、免許を受けてこのように重要な取引に関与することができる立場にありますから、安易に取引の成立を急がせることがあってはなりません。

そのような観点から、法は手付けについて、宅建業者の基本的義務としての信義誠実の原則(宅建業法31条1項)を具現化するルールとして、貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為を禁じています(同法47条3号)。

手付金という名称ではなく予約金、預り金等の名称であっても、手付金の性格を有するものについては法によって信用供与が禁じられます。

すなわち、手付金の貸付・手付支払いの延期・『手付の分割受領』を禁止しています。