一般承継と特定承継とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

階段を登る人形
目次

一般承継と特定承継とは

まず承継とは、「受け継ぐ」ことを言います。

相続、売買、贈与や事業の破産・廃業・解散などの事由が起きたときに、物や権利を本人から受け継ぎ取得します。

英語では、一般承継を「general succession」、特定承継を「specific succession」と言います。

「general」には「一般」という意味の他、「通常の」「全般」といった意味があります。「specific」には「特定」という意味の他、「詳しい」「具象的」といった意味があります。「succession」には「承継」という意味の他、「相続」「続き」といった意味があります。

承継には、大きくわけ2つの種類があります。

1つは「承継取得」でもう1つは「原始取得」です。

承継取得は、売買や相続などのように、前の所有権の持ち主の権利をそのまま受け継ぐ取得方法です。

したがって、前の持ち主の権利義務をすべて取得することになります。一方の原始取得は、前の持ち主の時に何らかの制限があったとしても、それらの制限がない状態の権利を取得するというものです。

つまり、まっさらな状態で受け継ぐことになります。

2種類の承継の表

宅建の試験では、一般承継と特定承継が出題範囲となります。

一般承継とは

一般承継人による承継を一般承継と言います。承継する対象となる人が持っている物や権利をそっくりそのまま受け継ぎます。

そのため一般承継は、包括承継とも呼ばれます。一般承継人とは、相続における相続人や、会社の合併によって消滅した場合の吸収合併存続会社または新設合併設立会社が該当します

特定承継とは

一般承継以外の承継取得を特定承継と言います。一般承継に対し、特定の物や権利のみを受け継ぐという違いがあります。

宅建の試験では、時効取得が特定承継の分野において重要です。

一般承継人による登記の申請

不動産登記における承継の論点は、宅建で出題される可能性のある項目です。難易度が高いので捨て問とするのも一つの手ですが、出題論点はだいたい同じですので、一度理解すれば得点源とできるメリットがあります。

一般承継人による申請とは、登記権利者、登記義務者または登記名義人が権利に関する登記の申請人になることができる場合において、これらの者について相続その他の一般承継があった場合に、相続人その他の一般承継人がこの登記の申請をすることができるというものです。

例えば、ある土地の所有権の登記名義人であるAさんがその土地をBさんに売り渡したとします。その後所有権移転登記を備える前に、AさんまたはBさんが死亡した場合には、AさんやBさんの相続人は、この土地の所有権移転登記をすることができます。

この場合を、登記義務者又は登記権利者の相続人その他の一般承継人による登記の申請と言います。

一般承継と特定承継に関する過去問

問題

不動産の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては、消滅しない。
  2. 承役地についてする地役権の設定の登記は、要役地に所有権の登記がない場合においても、することができる。
  3. 区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。
  4. 不動産の収用による所有権の移転の登記は、起業者が単独で申請することができる。

平成24年度宅地建物取引士資格試験 問14

解説

  1. 正しい。

    登記の申請をする者の委任による代理権は、本人の死亡によっては消滅しません(不動産登記法第17条第1項)。

  2. 誤り。

    要役地に所有権の登記がないときは、承役地に地役権の設定の登記をすることができません(同法第80条第3項)。

  3. 正しい。

    区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができます(同法第47条第2項)。

  4. 正しい。

    権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者および登記義務者が共同してしなければならないのが原則です。もっとも、不動産の収用による所有権の移転の登記は、第60条の規定にかかわらず、起業者が単独ですることができます(同法第118条第1項)。

夜に勉強している女性の絵

一般承継と特定承継に関するよくある質問

平成24年度第1問の問題の解説をお願いします。

民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、同項の「第三者」に該当しないものはどれか。

  1. Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者C
  2. Aが所有する甲土地につき、AとBの間には債権債務関係がないにもかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者C
  3. Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたC
  4. AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたC

通謀虚偽表示における「第三者」とは、通謀虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき「法律上の利害関係を有する者」を言います。

よって、それぞれの選択肢で、「法律上の利害関係」があるかどうかを考え、そのうち最も利害関係が無いものを選びます。このうち、選択肢3について、仮装名義人に金銭を貸しつけたけでは、「法律上の利害関係」があるとはいえません。

開発許可の一般承継・特定承継について詳しく教えてください。

開発許可の地位の承継について、
一般承継(相続)・・・当然に地位を承継します。
特定承継(売買)・・・知事の承認がないと承継できません。

「開発許可に基づく地位の承継」について一般承継の例えに「相続」と書かれていますが、一般承継には相続の他に、遺贈や合併も含まれると思っていて良いでしょうか?

特定承継の場合の、「知事の承認」ですが、「知事の認可」でも正解と判断して良いでしょうか?

一般承継には相続の他に、遺贈・会社合併も含まれます。都道府県知事の「承認」という用語で覚えておいてください。

どのような場合に許可が必要、届出が必要、だれの許可が必要・・・という規定はそれぞれの法律で異なります。一概にすべての法律で、たとえば用語の定義が一律に同じといえないことがあります。

ただ、およその判断基準として他の法律と似ていることがありますので、参考程度としていただければと思います。

この記事の監修者は
窪田義幸(くぼた よしゆき)

″栄光を掴む″ための講義、″強い意欲″を持ち続けるための講義をめざします
【出身】愛知県
【経歴】立命館大学文学部卒。宅建・マンション管理士・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士。
【趣味】神社仏閣巡り
【受験歴】1999年宅建試験受験、合格
【講師歴】2001年よりフォーサイト宅建講座講師スタート
【刊行書籍】3ヵ月で宅建 本当は教えたくない究極の宅建合格メソッド (最短合格シリーズ)
【座右の銘】雨垂れ石を穿つ
フォーサイト公式Youtubeチャンネル「くぼたっけん」
フォーサイト講師ブログ

宅建コラム一覧へ戻る