定年後から始める社労士開業!「第2の人生」としての社労士の実際

景色を眺める男性

20代から60代以上まで、比較的幅広い受験者層の社労士試験への挑戦に、「いつまでに」の期限はありません。

このページを訪れている皆さんの中にも、「定年後、第2の人生を見据えて社労士試験を受験する」という方が多いかもしれませんね。実際に、社労士試験会場に足を運ぶと、定年前後のシニアの姿をたくさん目にします。

はたして、「定年後に社労士」は現実的な選択肢なのでしょうか?定年後の社労士開業について考察しましょう。

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目次

「定年後は社労士」が現実的である理由

結論から言えば、試験対策と開業の両方を考えても、定年後から十分に社労士を目指すことができます。その理由としては、社労士業界自体が他士業と比較して年齢層が高いこと、さらにこれまでのキャリアの有無を問わず開業しやすいことが挙げられます。

社労士試験合格者の10%弱が「60歳以上」

社労士業界の年齢層は、例年の試験結果から見てとることができます。毎年試験結果と共に公表される「合格者の属性」では、「60歳以上」が10%弱を占めていることが分かります。また、定年を見据えての挑戦であろう「50歳代」は20%弱となっており、「定年前後」の括りでは合格者全体の30%程に達することが明らかになっています。

試験会場の様子に鑑みると、おそらく受験者ベースでみればさらにシニアの割合は高まるものと予想されます。このように、社労士試験は合格率一桁台の難関国家試験ではありますが、定年を見据えた中高齢者が、そして定年後のシニアが挑戦し、合格を勝ち取っているケースは少なくありません。

参考:全国社会保険労務士会連合会試験センター「試験の概況」

これまでの経験を活かして、定年後に社労士開業ができる

さらに試験合格後を見据えると、定年後の社労士開業ではこれまでのキャリアを活かせる可能性が高く、現実的な選択肢であると言えましょう。

例えば長年、公務員として、または企業の人事部、総務部等で労働・社会保険関連業務に携わっていた方であれば、これまでに培った知識やスキルを活かして社労士試験や開業に挑戦することができます。実際、これまでの知識や実務経験の延長上として、第2の人生に社労士を選択する人は少なくありません。

異業種出身でも定年後の社労士開業は可能

一方で、異業種出身者であっても、社労士試験への挑戦は無謀ではありません。現に、これまで会社員として働いてきた方にとって、労働・社会保険関連は比較的馴染み深く、初めて学ぶはずの制度でもすでに予備知識が備わっており習得しやすい傾向にあるようです。

特に年金分野の知識は、若年層よりも年齢層が高い方が、より一層実感を持って学ぶことができます。

また、開業を考える上でも、シニアであるメリットは多岐に渡ります。例えば、年齢層が高い方が顧客に安心感を与えやすいことが挙げられます。さらに、従事していた業種での経験が、その分野の労務管理を考える上で役に立つことも少なくありません。

定年後開業の社労士の中には、現役時代に身を置いていた業界でのキャリアを活かして、「〇〇業界専門」と銘打ってPRする方が多く見受けられます。

ここに注意!定年後の社労士開業

赤い紙が破れてるとこにビックリマーク

このように、定年前後から試験に挑戦し、定年後から開業を目指す選択は、社労士業界においてはさほど珍しいことではありません。実際に、毎年の社労士試験後には、たくさんの定年後開業社労士が誕生しています。

ただし、定年後から社労士開業を目指す上では注意すべき点もあります。

社労士は資格取得がゴールじゃない

まず、社労士試験は合格してからが始まりであることを十分に意識しましょう。資格を取得して終わり、ではありません。法律を扱う士業であれば、試験合格後も継続して知識の習得、ブラッシュアップに努める必要があります。シニアに限ったことではありませんが、合格後の継続的な努力を疎かにしていては、開業社労士は務まりません。

さらに、社労士に合格したからといって自動的に仕事が舞い込んでくるわけではないため、自ら顧客獲得に乗り出さなければなりません。現状、「社労士」の肩書があればどうにかなるというわけではありません。必ず、ご自身の努力や工夫で顧客を掴みとっていく姿勢が重要です。

また、長年会社員としてやってきた場合、「仕事をとるのも自分、こなすのも自分」という状況に不慣れなケースは少なくありません。ところが、開業すれば原則として、すべてを自分で行わなければならないことも覚えておきましょう。

実務未経験者は、定年後でも社労士業界では新人

定年後の社労士開業で心がけるべきは、「謙虚さ」です。開業後、年下の先輩社労士から学ばせてもらったり、顧客が自分よりも若い経営者だったりという例は珍しくありません。このような時、年齢を重ねていることでつい謙虚さを欠いた言動をしてしまいがちですので、くれぐれも気を付けましょう。

すでに企業で定年まで立派に勤め上げた方であっても、社労士業界では新人です。新しい業界に足を踏み入れた以上、ご自身が長年所属していた組織での振る舞いが通用するわけではないことを心得ておきましょう。

「現役時代の人脈頼み」で失敗しがちな定年後社労士

定年後開業の社労士に多いのが、「これまでの人脈を活かして仕事を獲得しよう」と考えて失敗するケースです。

会社に在籍していた時には、社内の人間や取引先から、「開業したら頼みますよ」等と声がかかることもあるでしょうが、こうした口約束を鵜呑みにするのは危険です。

基本的に、組織を離れたら、これまでの人脈にも必ず変化が生じます。よって、あくまで自分自身で仕事を獲得していく姿勢が肝心です。

定年後の開業社労士なら、「社労士コミュニティ」を活用すべし

定年後の開業であれば、まず支部活動に取り組むことで仕事獲得のチャンスに恵まれる可能性があります。

「支部活動」というと少々ハードルが高く感じられるかもしれませんが、社労士業界は比較的年齢層の高いため、ある程度年齢を重ねた新人社労士でも委員会等に所属しやすいという特徴があります。

支部活動への参加によって、行政協力が優先的に回ってきたり、同業者から紹介を受けられたりと、支部での人脈が仕事につながることは少なくありません。支部によっては、委員会に所属していなければ行政協力に参加できないというところもあります。

ただし、支部活動に熱心になり過ぎるあまり、肝心なご自身での営業活動や業務遂行に支障をきたしては本末転倒です。社労士コミュニティは、あくまでご自身のプラスになる範囲で適度に活用することを心がけましょう。

まとめ

  • 比較的年齢層の高い社労士業界では、定年前後に試験に挑戦し、開業するケースは珍しくありません
  • 社労士試験の合格者の属性をみると、「60歳以上」が10%弱、定年を見据えての挑戦であろう「50歳代」は20%弱となっており、受験者ベースでみるとさらに中高齢者の割合は高くなるものと予想されます
  • 社労士開業では、これまで培ってきたあらゆる経験や知識が活かされやすく、第2の人生を考える上ではごく現実的な選択肢といえます
  • 定年後に社労士を目指す上で大切なのは、年齢関係なく新人として振る舞える「謙虚な姿勢」です
  • 定年後の開業では、現役時代の人脈頼みではなく、すべてを一から始めるイメージで取り組みましょう
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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