社労士と宅建、取るならどっち?難しさやダブルライセンスに注目

黄色と青の扉

社労士と宅建は、専門性も試験の内容、難しさのまったく異なる資格同士です。しかしながら、どういうわけか「社労士と宅建、どちらの資格を取得しようか」と悩む方は少なくありません。

そもそもなぜ、資格取得を志す方が社労士と宅建で迷うのかと言えば、おそらく「社労士も宅建も高い専門性の証明となる資格であるから」だと推測されます。社労士も宅建も、独占業務を有し、仕事に活かすことのできる注目資格です。

それではいざ、社労士と宅建のどちらを取得しようかと考える際には、両資格の相違に目を向け、よりご自身に合った知識を習得できるものを選択するのが得策です。また、必要であれば「両方取得する」という選択肢もあります。

このページでは、社労士と宅建の難しさや試験内容の比較、さらにダブルライセンスの可能性を考察しましょう。

➡社労士と簿記の比較についてはこちら
目次

社労士と宅建、仕事の違いを考える

社労士と宅建は、「法律関係の国家資格」という点では共通していますが、専門分野の異なる資格同士です。まずは社労士と宅建の仕事の違いを理解し、ご自身が挑戦する資格選びの参考にしましょう。

人事・労務の専門家「社労士」

社労士は、労働・社会保険関連法令に精通する、いわば人事労務の専門家です。労働保険や社会保険の諸手続きを行う他、給与計算代行や就業規則作成、雇用関係助成金の申請代行、労務コンサルティング等、活躍の幅は多岐に渡ります。

士業というと独立開業のイメージが付きものですが、自分自身で道を切り開く開業社労士の他、企業の会社員としての安定した立場で働ける勤務社労士という選択肢もあります。また、社労士関連業務は、人を雇用する企業においては必ず発生することから、常に高い需要があります。

このように、資格を有していることで、専門性を活かしつつライフステージに合わせた柔軟な働き方が可能となる点が、社労士の魅力といえるでしょう。

不動産取引のプロ「宅建」

一方で、宅建は、不動産取引の専門家としての活躍が期待されます。不動産に関わる高額な契約時、顧客の不安を取り除き、契約を円滑に進めるための「顧客への重要事項説明」こそが、宅建士の独占業務です。

また、宅地建物取引業者ごとに所定の人数の宅建士を配置するよう法律に定められていることから、不動産業界では一定のニーズがあることも宅建有資格者ならではのメリットです。

また、宅建有資格者の就職先としては王道の不動産会社の他、不動産管理会社、自社建築物件の販売を手掛ける建築会社、融資に伴い不動産の担保価値に係る評価が必要な金融機関等もあります。

社労士と宅建、両試験の違いを考察

定規とコンパスと机とペン

仕事内容や働き方の異なる社労士と宅建は、試験自体もあらゆる面で異なります。社労士も宅建も、いずれも資格を取得することが第一歩です。いずれかの試験の受験で迷われている方であれば、まずは両試験の特徴を知り、どちらを目指すのが最適かを考えましょう。

社労士試験には受験資格あり

まずは「受験資格」についてですが、宅建には設けられておらず、年齢、性別、国籍、学歴を問わず、誰でも受験することができます。

一方で、社労士試験には主に「学歴」「実務経験」「試験合格」について受験資格が設けられており、いずれか一つの要件を満たすことができなければ受験することができません。

主な受験資格には、「学歴」なら大学や短期大学卒業以上の者、「実務経験」では労働・社会保険関連業務に3年以上従事した者、「試験合格」は行政書士試験等所定の試験に合格した者等があります。

参考:全国社会保険労務士会連合会試験センター「社会保険労務士試験オフィシャルサイト_社会保険労務士試験の受験資格」

試験科目は社労士10科目、宅建4科目

また、社労士試験と宅建試験は、受験科目の数でも大きく異なります。

社労士試験の試験科目は、以下の10科目であり、それぞれ選択式と択一式からの出題があります。試験は午前午後にかけて行われ、計4時間50分で78問(110点)に取り組みます。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労働保険徴収法
  • 労務管理その他の労働に関する一般常識
  • 社会保険に関する一般常識
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法
  • 国民年金法

一方で、宅建の試験科目は以下の4科目で、2時間で50問を解きます。

  • 宅建業法
  • 民法など
  • 法令上の制限
  • 税、その他

このように、社労士試験のボリュームは圧倒的であり、つい「社労士は止めた方が良いかな」と弱気になってしまうかもしれません。しかしながら、社労士試験では科目の数だけ多くの専門知識を習得できることは言うまでもありません。

難しさは社労士試験が上

社労士試験と宅建試験の違いといえば、やはり難しさでしょう。難しさの指標となる「合格率」については、社労士で例年7%前後、宅建で15~17%程であり、10%も差があります。

しかしながら、社労士も宅建も、「各法令の基本的な知識の習得」で合格に近づくことができる試験です。社労士試験の場合、試験科目が多いため、宅建と比較すると難しさとしてはどうしても高くなる傾向にあります。

また、両試験ではそもそも科目が異なるため、「社労士と宅建、どちらの試験勉強の方が興味関心を持って続けられるか」という視点での検討も重要となるでしょう。

社労士と宅建、ダブル受験は可能?

ところで、資格受験生の中には社労士と宅建のダブル受験を目指す方も少なくありません。スケジュールとしては社労士試験が8月、宅建が10月のため、物理的にダブル受験は可能です。

ただし、社労士と宅建士はいずれも難しい国家試験であること、試験科目に重複のない試験同士であることを鑑みれば、中途半端な対策、付け焼刃の知識で容易に合格できるものではありません。

ダブル受験をするなら、同年度に2つの資格取得を目指すのではなく、「1年1資格」を念頭に、無理のない計画を検討できると安心です。

社労士と宅建のダブルライセンスにメリットはある?

人の絵とルーペ

前項では、「社労士と宅建のダブルライセンス」について触れました。両資格を仕事に活かしたい場合、合格することがゴールの「資格マニア」にならないために、今一度、社労士と宅建の両方を取得するメリットについて考えておきましょう。

結論から申しますと、社労士と宅建は、実務上関連性の薄い資格同士です。よって、社労士と宅建を両方持っている人材に高い需要が見込めるか、というと、なかなか難しいかもしれません。

ただし、資格をどう活かすかは、ご自身の工夫次第という部分もあります。例えば、社労士と宅建の両資格保有者が不動産販売会社に就職する際、宅建士として業務に従事できることはもちろん、勤務社労士として自社の労働・社会保険関連手続業務まで行えるならば、重宝される可能性があります。

ダブルライセンスの可能性を、ご自身なりに考えてみても良いでしょう。

結論:社労士と宅建はどっちが狙い目?

はしごと的

さて、ここまで社労士と宅建の両資格について、あらゆる観点から比較検討してきました。

実際のところ、これから何かしら仕事に活かせる資格を取得したい方にとって、どちらの資格を目指すのが良いかという点については、「それぞれの相違点を考慮の上、最終的にはご自身の興味関心、志望に合わせて選ぶべし」というのが結論となるでしょう。

一般論でいえば、不動産業につくのであれば宅建資格が、民間企業への入社や独立開業の可能性を考慮すれば社労士資格の取得の方が役に立つ可能性が高いと言えるのですが、この二択でなくても資格の活かし方は人それぞれです。

ご自身にはどんな知識が必要か、何に興味があるか、どのような仕事に就きたいか等、あらゆる観点から検討されてみてください。

➡中小企業診断士と社労士の比較はこちら

まとめ

  • 人事・労務の専門家としての社労士と、不動産取引のプロである宅建は、そもそも専門分野が大きく異なる資格同士です
  • 社労士と宅建士は、「受験資格の有無」「科目数」「難しさ」等の試験面においても異なります
  • 社労士と宅建士のダブル受験は可能ですが、ダブルライセンスの活かし方を自分なりに十分に検討した上で、確実に合格するために無理のないスケジュールで臨むことが必要です
  • 社労士と宅建士、どちらの資格を目指すかは、それぞれの相違点を考慮の上、最終的にはご自身の興味関心、志望に合わせて選ぶ野が得策です
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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