社労士(社会保険労務士)が懲戒処分を受けるのはどんなとき?懲戒事例を解説

社労士(社会保険労務士)が懲戒処分を受けるのはどんなとき?懲戒事例を解説

社労士が懲戒処分を受けるのはどんなとき?懲戒事例を解説

働き方改革真っ只中の昨今、社労士業界では「ブラック社労士」の存在も問題になっています。

経営者と労働者が抱える悩みに寄り添い、共に課題をクリアしながら法令遵守、健全な職場環境の構築を目指すことが社労士の使命であるにもかかわらず、一部には個人の利益のためだけに不正に手を染める社労士もいるようです。

社員をうつ病にして退職に追い込むことを指南したブログが問題となり、社労士が懲戒処分を受けた事件は、皆さんの記憶にも新しいのではないでしょうか?

目次

社労士の懲戒処分とは?

「懲戒」というと企業に勤める従業員に対する制裁をイメージしますが、特定の会社に属さない開業社労士にも懲戒処分が下されることがあります。

社労士制度について定める社労士法には、

  • 労働・社会保険分野の専門家として常に品位を保持し、公正な立場で、誠実に業務遂行すること
  • 社会保険労務士の信用又は品位を害するような行為をしてはならないこと

が規定されています。

これらに違反した場合、所属の都道府県社労士会等から指導が行われ、従わなかった場合には懲戒処分の対象とされます。

社労士の懲戒は、不正の程度に応じて

  • 戒告
  • 業務停止
  • 失格

の3段階で処分が下されます。

社労士の懲戒 「戒告」

社労士の懲戒処分のうち、最も軽いのが「戒告」です。

「戒告」とは、本人の将来を戒める内容の申し渡しをすることであり、分かりやすくいえば「厳重注意」に該当します。

戒告は口頭で伝えられる他、戒告書と呼ばれる文書により下されることもあります。

懲戒処分を受けた社労士は、氏名や登録番号、懲戒となった行為等が官報公示されますが、戒告の場合の公表期間は「処分の日より1年間」です。

社労士の懲戒 「業務停止」

「業務停止」は、文字通り、社労士としての業務を一定期間行えないようにすることです。

業務停止期間は処分の程度により異なりますが、一年以内とされる事例を多く見受けます。

懲戒処分の公表の期間は、「業務の停止の日から期間終了の翌日より2年間」です。

社労士の懲戒 「失格」

「失格」は、社会保険労務士資格を失わせる処分であり、懲戒の中で最も程度の重い処分です。

法人の場合は、解散を伴います。

懲戒処分の公表の期間は、「処分の日から5年間」です。

厚生労働大臣が行う懲戒処分の他、都道府県社労士会による処分もある

ここでご紹介した懲戒の種類は、いずれも厚生労働大臣が下す処分です。

上記とは別に、都道府県社労士会が快速違反として独自に行うことのできる処分もあります。

具体的には、

  • 会員資格の停止=実質の業務停止。ただし、他都道府県社労士会への登録替え、業務への従事を妨げるまでの効力はない
  • 退会勧告=退会するよう説きすすめること。ただし、失格までの強制力はない

等の処分が挙げられます。

このように、都道府県会独自の処分は、厚生労働省の懲戒処分よりも程度の軽いものではありますが、社労士の不正等に対し、懲戒処分よりも迅速な対応が可能となります。

もちろん、都道府県社労士会の処分に基づき、厚生労働大臣による懲戒の要否が検討されるケースは大いに想定されます。

社労士の懲戒処分はどんな時に行われる?

社労士の懲戒処分はどんな時に行われる?

社労士の懲戒処分について、ここまで「戒告」「業務停止」「失格」の3種類を解説しました。

これから社労士を目指す皆さんであれば、当初から進んで懲戒処分に該当する行為をしようと考えるケースは皆無でしょう。

しかしながら、「万が一、意図せず違法・不正に該当する行為を行ってしまったら・・・」と不安になる方がいるかもしれませんね。

ここからは、社労士がどんな時に懲戒の対象となるかについて、実際の懲戒事例を考察することにしましょう。

厚生労働省「社会保険労務士の懲戒処分事案」

事務代理の不正

<事例>

65歳超雇用推進助成金の申請にあたり、そもそも65歳定年制を採用していた企業の申請書及び就業規則を改ざんし、定年を60歳から66歳に引き上げたという虚偽の申請をした

<考察>

65 歳超雇用推進助成金の申請要件のひとつに「65歳以上への定年引上げ」があり、この基準を満たすために申請以前の定年を「60歳」と偽って申請した事例です。

以前から65歳定年であったなら、「定年の定めの廃止」「希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入」のいずれかを実施しなければ、要件を満たすことはできません。

雇用関係助成金に精通した社労士であれば、当然、どのような申請であれば要件を満たすことができるのかを把握しています。

しかしながら、本件の様に、そもそも要件を満たすことのできない案件について、事実に反して申請書等の作成を行うことは社労士の懲戒処分事由に該当します。

保険給付の不正受給、労働社会保険諸法令に反する指示

<事例>

保険料の賦課又は徴収を免れる目的で、労働保険概算・確定保険料申告手続、社会保険料定時決定手続において、事業主等に対して事実に反した賃金台帳の作成を指示した上、事実に反した労働保険概算・確定保険料申告書、健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届の作成を行った

<考察>

虚偽の申告により労働保険料、社会保険料を不当に引き下げること、事業主に対して不正を指南することは、当然のことながら社労士の懲戒処分事由に該当します。

また、社労士であれば事業主から保険料等の代理納付を依頼されることがありますが、事業主から受け取った保険料等を適正に納めず横領し、かつ横領の事実を隠蔽するため、保険料額について虚偽の申告をするという前例もあったようです。

こちらももちろん、あってはならない不正事例と言えます。

社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行

社労士の懲戒事例は、大半が複数の懲戒処分事由に該当するものであり、懲戒処分となる社労士であれば「社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行」にあたる行為をしています。

例えば、前述の保険料に関わる不正事案は

× 故意に、真正の事実に反して申請書等の作成を行ったとき

× 故意に、社労士法第15条(不正行為の指示等の禁止)に違反する行為をしたとき

× 社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行

に該当するものとして、失格処分を受けた事例です。

専門家を名乗る以上、その知識を正しく活かす道に目を向けなければならないことは言うまでもありません。

皆さんが晴れて社労士となったときには、ぜひとも、責任とプライドの持てる仕事を心がけてください。

社労士の懲戒請求の方法

社労士の懲戒請求の方法

社労士が行った業務について、違法や不正、その他社労士としてふさわしいと言い難い非行が発覚した際には、当該社労士に対し懲戒請求をすることができます。

ここでは、「手続き業務に関わる不正行為が発覚した場合を例に、社労士の懲戒処分の流れを確認しておきます。

  1. 懲戒事案の調査

    不正事案発覚後、調査・捜査とその結果の把握を経て、懲戒処分に該当する場合には懲戒処分に係る調査が行われます

  2. 聴聞手続き

    不正を行った社労士に聴聞が行われます

  3. 懲戒処分の決定

また、一般から都道府県社労士会に特定の社労士に対する苦情が寄せられた場合、文書による不正情報の受付を行い、その内容に基づいて事実関係の確認と処分決定が行われます。

もちろん、都道府県会を経ることなく、都道府県労働局監督課に直接、懲戒請求書を提出することも可能です。

まとめ

  • 職業倫理に反した社労士は懲戒処分の対象となり、不正の程度に応じて「戒告(厳重注意)」「業務停止」「失格(社労士資格喪失)」のいずれかに処せられます
  • 懲戒は厚生労働省による処分ですが、この他に都道府県社労士会の会則に則って下される処分もあります
  • 社労士の懲戒は、事務代理の不正や保険給付の不正受給、労働社会保険諸法令に反する指示、その他社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行等の事由によって行われます