留置権とは?留置権の具体例、要件、性質、判例を詳しく解説!|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

留置権とは?留置権の具体例、要件、性質、判例を詳しく解説!|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

留置権とは
目次

留置権とは

留置権は、「法定担保物権」の1つです。

法定担保物権には他に先取特権があります。「法定担保物権」と「約定担保物権」を合わせて「物的担保」と言います。「約定担保物権」には抵当権や譲渡担保、質権、仮登記担保があります。

また、「物的担保」「人的担保」などを総称して「担保」と呼びます。ただし、今出てきた中で、試験によく出るのは、「抵当権」ですので、抵当権に学習の的をしぼるのも1つの手です。

留置権の具体例

留置権は、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置する権利をいいます。具体例として、自動車工場が自動車を整備したときは留置権に基づいて、整備代金の支払いを受けるまで自動車を留置し、その支払いを間接的に強制することができます。

この例で言う自動車工場が留置権者にあたり、留置権者は、自動車を留置している間中、善管注意義務があります。善管注意義務とは、注意を払って責任をもって人の物を管理していくといった意味合いになります。

留置権とは

留置権の要件

  1. 債権と物との牽連性

    これは、対象物に係る債権であれば、効力が制限されないという内容です。

  2. 債権が弁済期にあること

    履行前には効力が生じないことから、弁済期にある必要があります。

  3. 他人のものを占領している状態にあること

    他人の物を占有することで初めて「留置する=引き留める」という行為が可能となります。

  4. 占有が不法行為によって始まったのではないこと

    不法占拠者は、適法に占拠をしていないので、留置権は認められません。

語句の意味がわかりづらい1.と2.について解説します。

1.債権と物との牽連性

例)公園で子どもたちがサッカーをして遊んでいたとします。このとき、勢い余って向かいの家の庭にボールが飛んで行ってしまい、陶器の置物を壊してしまいました。この場合の「置物が割れたことによる損害賠償」が物から生じた債権に当たります。

2.債権が弁済期にあること

例)自動車修理工場に修理を依頼し、代金支払いと車引渡しの日にちが決まりました。この「代金支払い日」「引渡し日」を弁済期といいます。弁済期がきていない債権には効力がないので、留置権は発生しません。

留置権の要件

留置権の性質

1.登記ができない

これは不動産限定の話です。 留置権は、専有し続ける必要があるので、登記をする必要がありません。 登記をすることができないとも言えます。 登記ができなくとも、専有し続けることで、抵当権などにも対抗できますので、特に問題となることはありません。

2.付従性

担保物権と被担保物権の関係性のことを指しています。 例えば上記の自動車の修理の例ですと、修理代金が支払われれば、車を引き留めておくことはできなくなります。 これを難しく言い換えると、担保物権が成立するためには被担保物権が必要だからだと言えます。

3.随伴性

債権の譲渡が行われた場合、被担保物権に係る担保物権も一緒についていくという性質です。自動車の修理が他の修理工場で行われることになった場合、未払いの代金とともに修理済みの自動車の留置権も引き継がれます。

4.不可分性

債権の一部のみ弁済を受けても、引き留めている物すべてに対して留置権が及ぶという性質です。自動車の修理代金を半額支払ってもらったからといって、車の右半分だけ預かっておくということは不可能ですよね。ですので、全部の支払いがなされるまでは、対象物全部の留置が認められています。

留置権の性質

留置権の判例

判例1

平成29(受)675 建物明渡等請求事件
平成29年12月14日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所

判事事項:不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たるか

裁判要旨:不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たる

わかりやすく要約すると

まず商法521条とは、

“商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない”

という内容です。そしてこの事案を簡単に説明しますと、千葉運送社は、橘不動産から土地を借りています。しかし、橘不動産からの解除により、賃貸契約は終了します。

一方この契約終了前から、橘不動産は千葉運送社に対し、とっくに支払い期限のきた運送代の売掛金がありました。

千葉運送社は、この売掛金が未だ支払われていないことを理由に、土地の明け渡しを留保します。

当然に土地(不動産)も、留保する対象になるかと思いきや、今まで不動産に関しては、留置物として認めるかどうか争いがあったんですね。

ですので、今回不動産が留置物になるのかどうかが争点となり、結果として、不動産も留置権の目的物として認められる、という判決が出ました。

例に出した会社名は、実際の判決とは関連のないものですので、ご留意ください。

判例2

平成29(受)408 自動車引渡請求事件
平成29年12月7日 最高裁判所第一小法廷  判決 棄却 札幌高等裁判所

判示事項:自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ,売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合において,保証人が留保所有権を別除権として行使することの可否

裁判要旨:自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ,売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合において,その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは,保証人は,上記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができる。

わかりやすく要約すると

曽我さんが、自動車を購入しました。

曽我さんの保証人が、ディーラー対し、自動車の残金を払いました。その後、曽我さんの破産手続きが始まったときに、買った車がディーラーの所有物だという登録がされている場合でも、保証人は、車を売ることにより得たお金を優先的に回収することができます。

こちらも個人名は判決とは関連のないものとなりますので、ご留意ください。

判例3

昭和63(オ)1572 建物収去土地明渡
平成3年7月16日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所

判示事項: 留置権者が留置物の一部を債務者に引き渡した場合における被担保債権の範囲

裁判要旨:留置権者は,留置物の一部を債務者に引き渡した場合においても,特段の事情のない限り,債権の全部の弁済を受けるまで,留置物の残部につき留置権を行使することができる。

わかりやすく要約すると

津川工務店は、家の造成工事を請け負い、完成したところから順次引渡しを行いました。

工事代金の一部は支払われましたが、未だ全額支払われないことから、造成工事が済んだ土地の一部に津川工務店は、建物を建て、そこを占有しています。この後、占有している土地以外の土地は第三者に譲渡されました。

その第三者が、津川工務店に明け渡しを要求してきました。このとき、一部を引渡していて土地の全てについて留置していないこと・代金の一部が支払われていることから津川工務店は代金の残額が支払われていないことを理由に、一部の土地を占有し続けることができるのかが争点となりました。

判決では、上記事由があったとしても、工事代金全額が支払われるまで、津川不動産は占有し続ける権利があるという結果となりました。

こちらも個人名は判決とは関連のないものとなりますので、ご留意ください。

留置権の判例

留置権に関するよくある質問

善良なる管理者の注意と自己の財産におけると同一の注意との違いがわかりません。

「善良な管理者の注意義務」(善管注意義務:民法400条等)は、主に債務者の職業や社会的な地位などにおいて要求される注意のことをいいます。

「自己の財産に対するのと同一の注意(659条等)」や「自己のためにするのと同一の注意(827条)」は、上記の善管注意義務よりも、一段下の軽いレベルの注意義務と考えてください。

「善管注意義務」は、文字通り善良な管理者として注意を払うことが求められますが、後者の「自己の財産に対するのと同一の注意」は、自分の所有物と同じ程度に注意を払えば良いことになります。

注意を払う「程度の違い」となります。


主な【善良な管理者の注意義務】

  • (留置権者による留置物の保管等)
    第二百九十八条  留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
  • (特定物の引渡しの場合の注意義務)
    第四百条  債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者はその引渡しをするまで善良な管理者の注意をもってその物を保存しなければならない。
  • (受任者の注意義務)
    第六百四十四条  受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

「制限行為能力者が弁済の後、それを取り消した場合、さらに有効な弁済をするまで、その物を取り戻し得ない。」という問題文について、制限行為能力者がなした契約が取り消された場合は、両当事者は原状に戻す必要があるため、当然に弁済した物を返却する義務を負うと思うのですが、なぜその物を取り戻し得ないのですか?

例えば、未成年者であるAが自転車をBに引き渡したとして、この「弁済行為」をAの親が取り消した場合、Bは自転車の代わりになる物の弁済を受けるまでは手元にAから受け取った自転車を留めておくことが出来ると言っています。未成年者の行為を取り消したときは、第三者は保護されません。

ここでのポイントは2つあります。

  • ケース1:Aがした「弁済」を取り消す
  • ケース2:Aがした弁済の根拠となった「契約」を取り消す

弁済を取り消した場合は債権者はその代わりとなる弁済を受けるまでは留置権のような権利を行使できるとされています。しかし、ケース2の場合は、弁済の根拠となった契約が取り消された場合は、Bは自転車を返却しなければなりません。

ケース1の場合、Aはまだ債務を負っていて、弁済する義務が残っています。よって、債権者は「代わりになる弁済をしてくれ」と言うことができます。

ところがこの弁済の根拠となる契約が取り消されてしまうと、Aが負っていた債務それ自体が消えて無くなってしまいます。したがって、Bには原状回復の責任が発生し、自転車を返却しなければなりません。